はじめに:ソフトウェア資産管理(SAM)のポイント
自社でソフトウェア資産管理を始める際にありがちなのは「まず世の中にはどんなSAMツールがあるのか調べてみよう?」となることです。
煩雑で工数のかかる管理をツールが機械的に実施してくれるなど、多くのメリットはあります。
しかし、ソフトウェア資産管理ツールを導入したとしても全ての解決になるわけではありません。
欧米では「ソフトウェア資産管理を知る賢い人間は、それに手を出さない」などと揶揄られていることもしばしばです。
そのため、このコラムではソフトウェア資産管理ツールを導入検討する際に陥りがちな「5つのポイント」についてご紹介します。
ポイント1:とりあえずソフトウェア資産管理ツールを選んで、自社に導入しただけで満足してしまう
資産管理に限った話ではありませんが、何でも「道具」があるだけでは意味がありません。
その「道具」をどうやって使うか?を知らなければ本当の価値を発揮することが出来ません。
「道具」であるソフトウェア資産管理ツールは入力するための「データ」を受け取った後、一定のルールに基づいてデータの正規化を行い、入力されたデータの正確性や透明性を提示します。つまり、ツールが導き出す結果は、「入力データの精度」に依存するわけです。
そのため、もしも入力データに大きな不備があったとしたら、ツールを導入したとしても殆ど意味がありません。
正規化や最適化などのツール機能は、正確なデータがあってこそ活かせる機能です。
ソフトウェア資産管理ツールを過大評価して、頼りきりにならないように気をつけましょう。
ポイント2:実態把握よりも、必要なライセンスが何か?を優先して考えてしまう
ライセンスコンプライアンスは
- ソフトウェアの利用実態
- 必要なライセンス
この2つの整合確認です。
そのため、企業や組織にとっての正しい判断をするためには、必要なライセンスが何かだけでは無く「正確な利用実態の把握」を欠かすことは出来ません。どちらも押さえておく必要があるのです。
ポイント3:保有ライセンスの現状把握を疎かにしてしまう
近年、サブスクリプション型サービスの増加も後押し
ライセンス購入履歴をすぐに参照できるような環境が整いつつあります。
しかし、すべての製品がサブスクリプションのモデルに移行したわけではありません。
まだまだ買い切り型のライセンスを利用している企業も多くあります。
管理方法が異なる2つのモデルを正確に把握・管理することは、思ったほど簡単なことではありません。
その意味でも、現状把握を行うことはとても重要なのです。
ライセンス監査では、往々にして正確な情報を即座に答えることを求められます。
もしも管理が不完全だった場合は、過去の履歴を掘り下げて証拠を提示しなければいけません。
例えば、Windows NT 3.5のライセンスを1995年に購入し、過去20年以上にわたって真面目に保守料を払ってきた場合、あなたは最新のWindows Server 2019を実行する権利を有しています。
しかし、業界の常識では、ライセンス監査に派遣されてきた監査人は、地下の倉庫の書類の山に埋もれ、なかば腐りかけた箱の中に入っている古いライセンス証書を見つけ出してくださいなどという指示はしません。
万が一ライセンス不足が発覚した場合には、不足分のライセンス購入やペナルティなどの支払いが発生し、想定外のコストが発生してしまいます。
そのため、日頃からしっかりとした実態の把握を含めたライセンス管理を実施することが重要なのです。
ポイント4:同時に複数ベンダのソフトウェア管理をやろうと考えてしまう
MicrosoftやOracle、IBMなどを筆頭に、ライセンス体系はベンダー毎にすべて異なります。一度に多くのソフトウェアベンダーの情報をまとめようとすることは推奨できません。優先順位をつけて対応すべきです。
推奨する優先順位のつけ方の1つとして、ベンダー別の利用状況を調査し、最も多くのコストを支払っているベンダーから管理する考え方があります
ツールによる管理の効果を段階的に「実感」し、対象を徐々に広げていくことがソフトウェア資産管理を成功に近づけるのです
ポイント5:SAM導入の実施目的を簡単に変更してしまう
これまで述べて来たように、ソフトウェア資産管理はツールを導入しただけですべてが解決するような単純な問題ではありません。
しかし、当初掲げた目的を妨げる問題が発生した時に、ついついゴールを変えてしまうケースがあります。すると、そこまで積み重ねてきたタスクに無駄が生じてしまうことがあります。その歪みを吸収しようとしても、結果的に行き詰ってしまう可能性があるのです。最悪の場合、計画を白紙に戻さざる負えない状況になる事もあり得ます。
現状の課題や、ツールの導入によって達成したいゴールを前もって整理・合意し、中長期的なロードマップを設計してみましょう。
それを社内で共通認識とすることができれば、ソフトウェア資産管理を確実に実現することが出来るのです。
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