現時点での製品含有化学物質管理は、リサイクルや廃棄を
含まない
前回の記事で「JIS Z 7201:2017 製品含有化学物質管理―原則及び指針」を紹介しました。
その中にも書いてありますが、現時点での製品含有化学物質管理は、資源を取り出して
精製したりするところ(つまり原材料を作るところ)から、いわゆるユーザー(一般消費者もBtoBのユーザーも含む)までしか考えられていないのが普通です。
従って、リサイクルや廃棄に関しては含まないのが一般的です。
リサイクル材に関しては、原材料扱いされます。
しかしながら、欧州発のサーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方に端を発し、
EUにおいて、(EU) 2024/1781「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」が2024年7月に発効したことにより、リサイクルや廃棄までを考慮に入れる方向にシフトしています。
JIS Z 7201:2017も改定されていくことでしょう。
ただ、実際に含まれている化学物質について、リサイクルや廃棄までどのように管理するかと言うのはかなり複雑な問題です。
この点については、
chemSHERPAのHPの「製品含有化学物質の管理および 情報伝達・開示に関するガイダンス」に循環経済対応の製品含有化学物質管理 ディスカッションペーパー(Ed.3.1)がありますので、参考にしてください。
自社の製品とオペレーションについて
製品含有化学物質管理の基礎(第1回)で、
自社の製品のカテゴリーと概要を一度洗い出しておいていただいたほうがいいということを
書きました。
その理由は、カテゴリーが違うと規制が異なる場合もあるからです。
実のことを言うと、製品含有化学物質管理の第一歩は、自社の製品そのものと、
それがどのように作られるかというオペレーションの理解にあるとも言えます。
もちろん、法規制や顧客要求は守るべき事項になりますが、それを可能にするために必要な
ことは、自社の理解なのです。
もしかしたら、うちは商社だからとか、うちは○○社の製造請負だからとかいう方がいるかもしれません。
ですが、そのような会社であっても製品含有化学物質管理は必要です。
では、ここで皆さんに質問です。それはなぜでしょうか?*1)
製品含有化学物質化学物質管理の範囲
図1製品含有化学物質管理の範囲
図1には自社の製品含有化学物質管理の範囲を図示しました。
記事の中では、JIS Z7201と異なる用語を使っている場合がありますのでご容赦ください。
ここで調達先とあるのはJISの用語の定義では供給者です(でもわかりますよね)。
図1を見ると自社の製品含有化学物質管理ではありますが、一部、調達先や顧客のところまで範囲が広がっています。
理由としては、製品の受け渡しとともに、化学物質の情報伝達が行われるからです。
化学物質の情報伝達は、量産による製品の受け渡しより前に行われるのが通常の流れです。
しかしながら、範囲が広がっている理由は、化学物質の情報伝達だけではありません。
では、皆さんに2つ目の質問です。
それだけではない別の理由とは何でしょう?*2)
*1)、*2)の答え合わせは次回の記事で。
次回からは、前回ご紹介した参考文書に沿ってお届けします。
ぜひ前回記事もご覧ください。
前回記事:製品含有化学物質管理の基礎(第1回)
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個人事務所 OFFICE KS 佐竹 一基
ソニー株式会社で材料解析の後、環境全般、特に製品化学物質管理に従事。環境推進部統括部長。退社後(一社)産業環境管理協会に勤務。2018年独立し、同協会の技術顧問となるとともに環境関係のコンサルタントを行う。
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- 化学物質管理