映画や小説の世界が実現に!新しい体験を提供する仮想空間メタバースとは?

 2023.07.14  AJS株式会社

はじめに

Facebookが社名をmetaにしたことで注目を集めている「メタバース」ですが、テレビや仕事の現場でも耳にすることが増えていると思います。メタバースの語源は「超越」を意味する「Meta」と「世界」を意味する「Universe」で、1992年に発表されたニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」の世界から名づけられました。メタバースは新しい概念とされがちですが、その先がけともいわれる3次元仮想空間「Second Life」は2003年にリリースされ、日本でも2006年ごろにブームとなりました。仮想空間におけるユーザー同士のコミュニケーションや売買取引は、すでに2000年代でもみられていました。

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メタバースとは?

メタバースとは、インターネット上に作られた3DCG(仮想)空間です。実はまだはっきりとした定義は存在しておらず、次世代SNSや、次世代のインターネットと呼ばれることもあります。メタバースでは、アバターと呼ばれる自分の分身、ゲームで言うところの自分のキャラクターを介してその世界に入り、それを自分で操作しながら空間内を自由に行動することができます。他の多くの人たちが同じ仮想空間に存在することになりますが、従来のゲームとは異なり、アバターの行動自体に制約がなく、基本的には現実世界と同様に自由に動くことができます。

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メタバースの最も特徴的なところは、非日常的な体験ができるという点です。 裸眼でパソコンやスマートフォンのブラウザからアクセスすることもできますが、VR(仮想現実)やAR(各超現実)などを介してメタバース上にあたかも自分がそこにいるような感覚を体験できます。

メタバースを活用するという視点では、メタバースには制約がなく、自ら様々な空間を自由に作ることができるので、音楽ライブなどの2DアプリやWebでは再現が難しい没入感を、ユーザーに提供することができます。 音楽ライブに限らず、メタバースはその自由度の高さから、様々な用途の空間やいろいろな価値や体験をユーザーへ提供することができます。

注目されている背景

2021年頃からニュースを賑わせてきたメタバースですが、なぜここまで注目されるようになったのでしょうか。この背景にはいくつかの要素が関連しています。

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1. VR機器の普及

VR市場はエンターテイメント分野と教育・訓練分野でそれぞれ拡大しています。それに伴いVR機器も広く普及するようになってきました。2019年は4863万台だったVR機器の出荷台数は、2020年に6200万台以上まで増加しています。

2. オンラインコミュニケーションの進化

4GやSNS等の情報通信技術の発展によるオンラインコミュニケーションの進化もメタバースを後押ししています。ネット通信の音質や画質は昔よりも格段に向上し遅延は低減しています。テキストのやり取りはもちろん、ネットを介したボイスチャットやビデオコミュニケーションがスムーズになり、広く普及するようになりました。また近年若者を中心に爆発的に利用が拡大しているオンラインゲームの普及で、ゲーム内で場所を問わずリアルタイムにコミュニケーションをすることを楽しむ人たちが増えています。そこで、より快適なオンラインコミュニケーションツールとしてメタバースが注目されています。

3. NFTのような関連技術の実用化

NFTや仮想通貨などの技術の実用化も、人々の注目をメタバースに向けさせる要因となっています。NFTとは簡単に言うと、デジタル上のデータに本物である証明書を付けて売買できるようにする技術のことで、デジタルデータへ価値を与えられるようになりました。メタバース内でも価値のあるデジタルデータを作成したり、仮想通貨で売買したりできるようになっています。

4. 新型コロナウイルスの感染防止対策

メタバースが注目を浴びる要因は、私たちの日常に大きな影響をもたらしている新型コロナウイルスの影響もあります。感染防止対策の一環としてオンラインでのコミュニケーションの拡大が一気に加速しました。より現実に近く、臨場感のあるオンライン環境でコミュニケーションを取りたいという人々のニーズにメタバースが応えるのではないかと期待されています。

5. Facebookの社名変更と本格参入

2021年10月にアメリカのFacebook社が社名をMetaへ変更し、メタバース事業に本格参入したことも背景にあります。この出来事をきっかけに他企業もメタバース事業へ続々と参入を表明しています。メタバース市場規模は2020年に5.5兆円だったのが、2028年には100兆円近くまで拡大すると言う予測も出ています。

事例:何ができるのか?

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ゲーム分野

メタバースは現時点では主にゲーム分野で活用されています。 代表的なところでは、『フォートナイト』、『マインクラフト』、『あつまれ どうぶつの森』、『The Sandbox』などが有名です。

例えばフォートナイトの「パーティーロイヤル」と呼ばれるモードでは、バトル要素が排除され、ユーザーはミニゲームで遊んだりフレンドとの交流を楽しんだりできます。ミュージシャンの米津玄師さんや星野源さんがここでバーチャルライブをおこなったことが話題になりました。

任天堂の人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」も広義ではメタバースといえます。ゲームの中の世界に多人数で集まり、自由に遊ぶことができる点が特徴的ですが、キャラクター(アバター)の着せ替えを楽しむこともでき、世界的ファッションブランドAnna Sui(アナスイ)がアバター用の服を提供したことも話題となりました。

こうしたゲーム作品を通し、現実世界と仮想世界が近づいた感覚をリアルに体験している人も増えています。

さらに、VR(仮想現実)や、AR(拡張現実)といった視覚技術を組み合わせることで、限りなく現実に近い感覚でゲームをプレイすることが可能になります。

VRは、「Virtual Reality」の略称で、リモコン操作により、自分の動きがそのままゲーム内のアバターに反映されます。

例えば、現実世界で手を挙げると、メタバース空間内のアバターも同じように手を挙げる動作をします。

VRゲームでは、アニメ化作品をもとにした「初音ミクVR(プレイステーション5)」が有名で、好きなキャラクターと一緒に歌って踊れるなど、初音ミクのファンにとって、夢のような体験をすることができます。

また、ARは「Augmented Reality」の略称で、現実世界にバーチャル映像を重ねることができます。

例えば、現実世界で自分の部屋にアニメやゲームのキャラクターをバーチャルで映し出し、あたかも自分の部屋にキャラクターが存在しているような体験ができます。

ARゲームでは、大人気スマホアプリ「ポケモンGO」が有名です。スマホカメラを通して現実世界を見てみると、スマホ画面にはポケモンが存在し、捕まえたり、ポケモン同士を戦わせることができるゲームです。

子供から大人、海外でも流行している無料アプリなので是非一度試してみると、ARがどんな技術なのかイメージしやすいでしょう。

バーチャルショップ

バーチャルショップとは、オンラインの仮想空間内に作られた店舗です。リアルの店舗と同様に、物品やサービスの購入ができるメタバースの世界では、小売り販売や、マーケティングなど、これまでにない新しい形で商品販売を実現できます。「バーチャルマーケット2021」は、2021年12月に行われ、有名アパレルブランド「BEAMS」がバーチャル空間上に店舗を出店、実際に社員がアバターを動かし、身振り手振りで表現をしながら接客を行い、メタバースショップ限定のアパレルやアバターファッションが販売されました。来店したユーザーはアバターで自由に店舗を動き回ることはもちろん、アバターの店舗スタッフの接客を受けたり商品や商品情報を調べたりすることも可能となり、大きな話題となりました。また「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」では、バーチャル空間内に本物そっくりの渋谷の街を作りました。

ショッピングやアート、音楽、教育など様々なカルチャーが集まる渋谷の街と、最先端技術をかけあわせ、新たなエンターテインメント施策を行っています。

バーチャルオフィス

メタバースのビジネスにおける利用で注目されているものが、仮想空間のオフィスにアバターで出社し、同僚とコミュニケーションや業務を行えるバーチャルオフィスです。カメラ機能と音声を使用した「Zoom」などのオンライン会議ツールとは異なり、バーチャルオフィス内では、自分の分身(アバター)が仮想空間内で仕事をします。

バーチャルオフィス内では、アバター同士の距離が近い人にだけ声が届くような仕様になっていたり、バーチャルオフィス内に会議室を作れば、限られたメンバーで会話することも可能です。

さらにVRヘッドセットを利用すれば、現実世界同様、目の前にPCを置きボードに図を書くなど、意思疎通が図りやすいなどのメリットもあります。

2021年にFacebook(現・Meta)が公開した「HHorizon Workrooms」は、現実世界と仮想世界をよりシームレスに繋ぐことを意識したバーチャルオフィスです。「Horizon Workrooms(ベータ版)」では、独自の空間オーディオテクノロジーにより、話しかけられている方向や距離が分かるようになっています。バーチャルでありながら自然な会話を実現しているため、実際に同じ空間にいるかのように感じられます。

バーチャルイベント

バーチャルイベントとは、オンラインの仮想空間内で行うイベントです。メタバースにおけるバーチャルイベントは、従来のオンラインイベントよりも圧倒的な臨場感でイベントを実施できます。アバターで仮想空間内のイベント会場に入場し、椅子に座って登壇者の話を聞いたり、右を向いてその方向にある物や人を確認したりすることも可能です。オンライン上でまるでその場にいるかのような体験ができるため、対面イベントとオンラインイベントのメリットを併せ持ったイベントを提供できます。

実際に、2020年には大人気ゲーム「フォートナイト」上で、米国の歌手「トラヴィス・スコット」のバーチャルライブが開催されました。アーティストの3Dモデルが、ゲーム内に登場しパフォーマンスライブが行われましたが、バーチャルライブ視聴、グッズ販売を含み合計約21億円の売上を記録したと言われています。少しずつコロナ渦前の生活が戻りつつありますが、まだまだ制限の多いリアルライブイベントに比べると、バーチャルライブの需要は高まると考えられます。

これからのメタバース 

このようにメタバースを使うことで、オンラインでのコミュニケーションを、これまで以上にリアルのコミュニケーションに近づけることが可能です。また、今後はリアルでは難しい体験の提供も可能になると期待されています。メタバースの特徴を活かすことで、エンターテインメントの演出や表現の幅が広がり、従来ではあり得ない環境や体験を提供できるかもしれません。研究分野なら、メタバース内で仮説を視覚化して議論するといった使い方も考えられます。

メタバースは情報量が多いため、従来のオンラインコミュニケーションの課題解決にも効果的です。従来のコミュニケーションツールよりも、他者との共通した経験・体験を促し、コミュニケーションや関係づくりにおける距離の影響を少なくする効果を期待できるからです。

1. 新たな経済圏の創造

現実世界とは異なる新たな空間が生まれるため、多くのビジネスチャンスを秘めています。仮想空間内に街をつくって広告を出したり、NFTアートや、仮想空間内の不動産を売買しながら資産運用をすることも可能になります。

2. 新しいビジネスの実現

リアルオフィスや店舗をバーチャル空間に移行することで、様々なコストカットが期待できます。例えば、リアルオフィスや店舗に出勤するための交通費は全額カットすることができますし、リアルオフィスや店舗を縮小することで、家賃や光熱費の削減が期待できます。これらを新たなビジネスチャンスととらえ、多くの企業がメタバースに注目しています。

3. 手軽にイベントへ参加できる

実際のコンサート会場や、ライブイベントに行かなくても手軽に参加できるバーチャルイベントは、現在のコロナ渦において最大のメリットと言えるでしょう。感染リスクを気にせずコミュニケーションが取れるので、大人数が同時に同じ会場にいても、安心してイベントを楽しめます。また、VRゴーグルを利用すれば、遠方にいる友人とアバター同士が空間を共有し、物理的な距離を感じることなく、あたかも一緒にイベントに参加しているような感覚が生まれます。

現在メタバースを十分に楽しむためには、まずはじめに高スペックPCや、高価なVRゴーグルを用意しなければなりません。また、ゲーム内で土地や武器、アバター用のファッションアイテムを買うために、お金がかかります。日本語対応していないゲームもあるため、その点では気軽に踏み込めない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今後さらに利用シーンやユーザーが拡大することで、スマートフォンを介して裸眼で利用できるようになる可能性もあります。メタバースは、更に注目を浴びるテーマであることは間違いないと言えるでしょう。

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