製造業×CPS CPSが製造業にもたらすものは?

 2024.02.15  AJS株式会社

はじめに

製造業×CPS CPSが製造業にもたらすものは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)が産業界におけるキーワードの一つとなり、
IoT(インターネットオブシングス)についての理解もある程度広まってきました。

そこで、CPS(サイバーフィジカルシステム)という言葉を聞いたことはありますか。
IoTの上位概念ともいえるこの言葉ですが、IoT程浸透しておらず理解も広まっていないように見受けられます。

このコラムではCPSとは何か、CPSが注目されている理由、製造業における役割、導入事例についてもご紹介していきます。

CPSとは

「CPS」とは、「Cyber-Physical System(サイバーフィジカルシステム)」の頭文字を並べた略称で、現実世界(フィジカル)で収集した様々なデータや情報を仮想空間(サイバー)で
融合させ、大規模データ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、現実世界(フィジカル)へフィードバックすることで最適化を図る仕組みです。

また、現実世界のデータや情報の一部を意図的に変更し仮想空間でシミュレーションを
実行することで、問題の原因を調査し、最適な解決策を考案することができます。
このように、CPS は日々直面する現実世界の問題を解決する上での有益な答えを
提供してくれます。

CPSとは

なぜCPSが注目されているのか

CPSの特徴の1つは、データを定量的かつ短時間に分析し、
フィードバックを提供できることです。

これまでのシミュレーションは一般的に人間が作成したシナリオに基づいており、
常に現実に近い環境で再現されるとは限りませんでした。
しかし、デジタル技術の進歩により、大量のデータをリアルタイムに収集し、
仮想空間で処理することが可能になりました。

人の想定や仮定のない空間で現実世界のシミュレーションが実行できるようになったことで、CPSへの注目が一気に加速したと言えるでしょう。

なぜCPSが注目されているのか

また、CPSは、社会システムの効率化や知的生産性の向上、新しい産業の創出などの観点から、あらゆる産業で注目されています。

製造業におけるCPSの役割とは

  1. 生産ラインの最適化
    データに基づいて生産ラインを継続的に最適化することは、CPS の効果的な使用方法です。 仮想空間でデータを収集・分析することで「未来予測」が可能になります。
    過去の製品処理履歴と現在のライン状況をリアルタイムに比較し、
    最適な稼働率と生産量を予測します。
    ご存知のように、今日の製造現場では多品種少量生産や特急品が求められることが
    よくあります。常に生産計画を更新し、最適な状態を維持することは、
    人間による知識と経験だけでは大変な労力を要します。
    これをCPS上で短時間にて行えるため、生産ラインを常に最適化できます。

  2. 工場を仮想空間へ
    CPSは現実世界と仮想空間を統合するだけでなく、
    現実世界の工場を仮想空間に作成することにより、簡単なモデリングとシミュレーションを可能にします。これは、コストや難しさから、現実世界では困難または不可能です。
    CPSを使用すると、試作品を仮想空間内で作成できます。
    これにより、高価な原材料、労力、および時間をかけずに試作品の作成を可能とします。また、資本を投資するための事業計画をより精緻に立てることも容易になります。

  3. 自動生産の高度化
    データを定量的に分析しフィードバックまで行えるCPSを活用することで、
    これまで経験や勘に頼って一部の人間だけしかできなかったことも、数値化の上分析することが可能です。さらにCPSは職人技などの無形資産からのデータを分析できます。
    この方法を使用して、人間には不可能なタスクを実行できる産業用ロボットを作成し、
    作業を代行させることが可能です。
    製造業におけるCPSの役割とは
    製品の品質や設備の故障などのトラブルを事前に予測することで、
    保守点検の工数を削減できます。

    CPSとの連携により、より高い生産性と品質を実現することができるでしょう。

製造業におけるCPSの導入事例

パナソニックでは、CPSで設備投資の意思決定時間を1/10に短縮!
パナソニックのCPSの取り組みには、次のようなものがあります。

  • 生産シミュレーターの活用
  • AGV(無人搬送車)の導入
  • 生産ラインの見直し

パナソニックの事業は家電製品から産業機器まで多岐にわたりますが、
CPSで最も成果を上げたのは設備投資です。

製造業では、設備投資が不十分であると機会損失につながります。
パナソニックの電池事業の設備投資にCPSを導入することで、
計画期間を従来の1/10に抑えることができました。

電池の生産ラインとなると、かなり設備が大きくなります。
設備投資サイクルにおける企画段階の時間短縮は、次の工程に繋がる大きな成果と言えます。

最後に

現実世界と仮想空間をつなげるCPSについてご説明しました。
CPSは、IoTやAIなど、業界でよく語られるさまざまな概念と密接に関連しています。
CPSの導入は、製造業にも大きな効果をもたらすでしょう。

特に工場では、「人の仕事」と「機械の仕事」の役割分担をさらに進める必要があります。
工場の稼働に関するデータを収集、蓄積、解析することで、問題点を洗い出し、その結果を
現実世界にフィードバックすることで、全体最適へ向かうアプローチが可能となるのです。

工場での作業であっても、「機械の仕事」はCPSに任せ、
人は人間ならではの頭脳や技術的工夫、臨機応変な対応に集中できるようになるでしょう。

最後に
生産計画や工場管理では、現実空間だけでなく仮想空間も考慮し、
CPSを活用できないか考えてみてください。


RECENT POST「製造現場」の最新記事


製造現場

今の環境を活用しながら製造現場をIoTに発展させる「レトロフィットIoT」

製造現場

産業用ロボット

製造業×CPS CPSが製造業にもたらすものは?