はじめに
2022年3月、世界のロボット産業の研究や国際協力を促進する国際ロボット連盟が「日本は世界最大のロボット生産国である」という報告をしました。その報告によると、世界の産業ロボット供給量のうち、約45%が日本で製造されていまして、2020年には約13万6000台が輸出、そのほとんどが国内で製造されています。日本はまさに世界を牽引するロボット産業国です。国際ロボット連盟の事務総長であるスザンヌ・ビラー博士は「日本は高度にロボット化された国。日常生活におけるロボットの使用で、世界的なパイオニア的存在だ」と述べています。そのような産業ロボットとはどのようなものなのか?について述べていきたいと思います。
産業用ロボットとは?
産業用ロボットとは、主に製造や食品の工場などといった産業の自動化や効率化で用いられるロボットのことを指します。「マニピュレータ」と呼ばれる、可動軸(関節)とアームを備えたロボット本体と、「制御ボックス」、プログラムなどの操作・調整に使われる「ティーチングペンダント」の、3つで1セットが産業用ロボットの基本構成となっています。産業用ロボットの特徴は汎用性が高く、1台でさまざまな工程に対応できることです。そのため、他品種のものを量産する製造現場に向いています。
産業用ロボットの種類
産業用ロボットは、それぞれの構造によって得意な動きや特徴があるため、目的や用途にあわせたロボットを選ぶことが大切です。
ここでは、ロボットの構造による分類を紹介します。
垂直多関節ロボット
汎用性が高く、様々な用途で使用されているロボットです。現在、最も使用されているロボットです。
7つの軸をもつといわれる人間の腕の動きに近く、自由度が高いため複雑な動作が可能です。
用途別の専用機種もあるため、バリエーションも豊富です。
一方で、動きの制御が複雑になる面もあります。
スカラロボット(水平多関節ロボット)
日本で開発されたロボットです。スカラ(SCARA)は、Selective Compliance Assembly Robot Armの略です。平面で位置決め可能な2つの回転軸とアーム、上下方向は直線軸、ハンドの向きを調整する回転軸で構成されたものが一般的です。
真上からの作業が主で、組立が得意なロボットです。
パラレルリンクロボット
アーム質量当たりの剛性が高いため、軽くて剛性のあるアームです。
高速動作が得意で、主にピッキングの用途で使用されます。
直交ロボット(単軸ロボット)
単軸のロボットを複数組み合わせることによって必要な動作を実現したロボットです。
シンプルな構造で、安価なことが特徴です。
円筒座標ロボット
上下および前後の動作は直線軸で、全体を旋回する回転軸が一つあるロボットです。
スギノマシンの「スイングアーム式コラムロボット」はこの分類に含まれます。
極座標ロボット
アームを上下左右に回転させる回転軸をもち、アームが伸縮するロボットです。
世界初の産業用ロボットである米国ユニメーション社(世界初の産業用ロボット製造会社)「ユニメート」はこれに含まれます。
スギノマシンでも、同様のロボットを1969年に開発しており、エア駆動ロボット「サブマン」として発表していました。
協働ロボット
構造による分類とは別に、近年では「協働ロボット」と呼ばれる産業用ロボットが登場しています。
一般的な産業用ロボットは、安全柵やセーフティ機器が必要ですが、協働ロボットは、人や物に触れると停止するなど、安全性が高く、人と同じ空間で作業が可能なロボットです。
人と協業でき、柔軟な作業が可能な一方で、出力の制限などから重量物の運搬や剛性の求められる加工などの作業は苦手な面があります。
産業用ロボットが活用されている業界や工程
産業用ロボットは、主に工場での搬送・加工・組立・洗浄・バリ取り作業など、人間に代わって様々な作業の自動化を行うロボットのことを指します。産業ロボットともいわれます。
人手不足や、危険作業からの解放などで、作業の自動化ニーズは近年ますます高まっています。
産業用ロボットは、加工、組立、溶接、搬送、検査などあらゆる作業の自動化に活用されており、自動車産業をはじめ、電気・電子デバイス産業、半導体産業、食品産業、農業など、多種多様な業界で導入されています。一口に産業用ロボットといっても、その種類は様々です。
急成長する産業用ロボット市場と今後について
2035年には10兆円市場に成長するといわれているロボット産業。ロボットには自立歩行する人型ロボットから人間の変わりに作業を行う産業用ロボット、家庭用のお掃除ロボットまでさまざまなものがあります。その中でもっとも多く利用されているのが、製造現場向けの産業用ロボットです。
日本でいち早く大体的に産業用ロボットを導入した業界は自動車業界だと言われています。日本は国内という、世界から見ると非常に狭い市場に対し実に14社もの自動車メーカーが存在しています。そして各メーカーの生産台数のほとんどは世界各国に輸出される程の大きな市場にまで成長しました。産業用ロボットは日本の発展と、日本車ブランドとしての地位確立に多大な貢献をしたと言っても過言ではありません。
このロボット市場の急成長の予測は世界でも同様のことが言えます。その理由として、欧州や日本などの人口減少や少子化問題による労働人口の減少が問題となっている国や地域での人手不足の解消や省人化があげられます。また、中国や東南アジアなどの新興国においては、人件費の高騰や、製品・部品などの品質の向上を目的とした産業の自動化が課題となっているからです。アジアはこれまで最大の産業用ロボット市場でしたが、これからも産業用ロボット市場を牽引していく役割を果たすことでしょう。
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