製品含有化学物質管理の基礎(第7回)
2025/12/08 11:10:13 AJS株式会社
2025/12/08 11:10:13 AJS株式会社

今回から、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版の5.5 運用、つまり最も実際の担当者が管理を実施する際に参考にする部分についての説明になります。
この5.5 運用は、さらに細分化された項目分かれており、
となっています。
これらのプロセスを見るとほとんど品質管理における運用と同じだということがわかります。
以下詳細項目に入りますが、筆者が重要と思われる部分のみの解説になります。
この部分は、このような取り組みに関するPDCAを行いなさいという一般事項が書いてあるだけです。
この項目は更に
5.5.2.1 顧客とのコミュニケーション
5.5.2.2 製品含有化学物質管理基準の明確化
に分かれるのですが、どちらも重要です。
色々と項目が書かれていますが、実際には顧客からの製品含有化学物質の情報伝達に起因する項目が多いはずです。
この顧客要求を満たすためには、
実際には何を要求しているのか正しく理解しなければなりません。
必要に応じて質問しなければならないこともあるでしょうし、この後に述べる製品含有化学物質管理基準に対して反映しなければならない可能性も高いはずです。
更には、顧客が根拠にしている法規制情報などは、本来自分たちも理解しておいたほうが良いものです。
と言うのも、顧客の解釈が正しくないことがあったり、更にはサプライチェーンの途中で必要な情報が抜け落ち、理不尽な要求になってしまっている場合もあるからです。
またこの項目の注記に「情報の伝達には共通化された手段の利用が推奨される」とあります。
ですが、情報伝達自体は、授受する二社間で合意すればそれで済んでしまうことです。
共通化された手段が有効なのは、サプライチェーン全体を考えた場合の時です。
自動車業界のIMDSや電気電子業界中心のchemSHERPAなどは、
そのような考えに基づいて作られています。
現実には、共通化された手段をなるべく用いたほうが、効率化されますし、それを自社の管理基準に反映している顧客も多いと思いますので、可能な限りそうすることをお勧めします。
また、情報の授受は基本自社と取引先の2社間の事項なので、その間での合意は必要です。
この項目の中身は、組織で製品含有化学物質管理基準を定めて文書化し、
維持しなさいということが書かれているだけです。
しかも、その中身についてa),b),c)の3項目が書かれているだけですが、注記が1)から8)まで
延々と書かれています。
a),b),c)の実際の中身は、おおよそ法規制要求、利害関係者のニーズなど、
組織が必要とみなすものと書かれています。
ですが、実際の担当者の方は、項目や注記を見てもどうやって製品含有化学物質管理基準を
定めていいかわからない場合も多いと思います。
基準を作る際に絶対に外せないのが、自社に関わる法規制です。
とはいっても、食品や医療・化粧品などを除けば、製品含有化学物質に関する規制は
日本においてはそれほど多くありません。
海外において多い、製品含有化学物質規制を、実際に守らなければならない人は、その国にいる製造者や輸入者になるわけですが、実際に製品を作るにあたっては、それらを守らなければ実質輸出できないことになるため、自社における管理基準に含める必要があります。
また、直接海外に輸出するものを製造していなくても、顧客から海外の規制を守るための要求が川中企業に向かって行われるため、川中より上流企業では、顧客要求が実際に管理基準を
決める大きな要素になります。
従って、
が自社における管理基準においては欠かせないものになります。
また、業界標準(IMDSやchemSHERPAなど)による情報伝達を満たさないと商売にならない会社は、それを含めることも必要でしょう。
2.の顧客の要求事項は、各社から違う要求が来て自社の製品含有化学物質管理基準に全部入れていたら大変なんだ!ということはよくあることです。その際は、ABC分析などを活用しましょう。
次回は5.5 運用の続き、5.5.3 設計・開発における製品含有化学物質管理からになります。
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個人事務所 OFFICE KS 佐竹 一基
ソニー株式会社で材料解析の後、環境全般、特に製品化学物質管理に従事。環境推進部統括部長。退社後(一社)産業環境管理協会に勤務。2018年独立し、同協会の技術顧問となるとともに環境関係のコンサルタントを行う。
