製品含有化学物質管理の基礎(第8回)

 2026/01/05 13:00:00  AJS株式会社

製品含有化学物質管理の基礎(第8回)

今回は、第7回の続きで、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版の5.5 運用の5.5.3 設計・開発における製品含有化学物質管理からになります。

5.5.3 設計・開発における製品含有化学物質管理

この部分は、会社として実際に製品を作る際の最初のプロセスで、今後の各プロセスの管理に影響を与えるので、全文を引用します。

組織は、設計・開発段階に置いて、製品化学物質管理基準を満たす製品を実現できるように、自らの製品及び業態に応じて、購買、製造及び引き渡しの各段階における製品含有化学物質に関わる管理基準を明確にし、文書化した情報として利用可能な状態にし、維持すること。

となっています。

つまり設計開発段階において、全てが決まってしまうので管理基準を決めて
(もちろん文書化や維持を含めて)それに則ってやれと言っているわけです。
この下に注記事項が山のように書かれています。

一文一文読んでいけば確かにその通りなのですが、これを本気でやるのだろうかと思ってしまいます。
例えば、設計・開発段階とは生産開始前までに行われる関連部署で行われる業務を含むとか
書かれていると、全部は無理なのでは?という気分になってしまいます。
書かれていることは間違いではありません。QMSと同様な書き方になっているはずです。
ですが、このブロックには、生産までに行う全ての項目が網羅的に書かれているために、
逆に分かりにくくなっている部分があると筆者は思います。
特に問題なのは、設計・開発の実担当者が何をしなければならないかが、よくわからないことです。設計・開発の実担当者は、この項目に書かれている莫大なことを実施するわけではありません。

設計・開発の実担当者は何をするのか
実際の設計・開発者は何をするのかと言えば、以下のようなことがあると思います。
もちろんこれだけではないとは思いますが、絶対に必要そうなものは、
  • 新たに設計したり・開発したりするものが、5.5.2で決定された自社の製品含有化学物質管理基準を満たすものであるのか確認する。
  • この時、供給先(調達先)に示す仕様書や図面に自社の管理基準を満たすように指示を明示する。

調達先が初めての取引先のような場合には、調達部門との協力がより必要になると思います。この辺りは、会社によって異なるかもしれません。
もちろん、周辺のことを考えればいくらでも出てきますし、
設計・開発者がどこまでのプロセスを受け持っているのかも会社によって異なると思います。
ですが、上の2項目は絶対に設計・開発者がやらなければならないものです。

次に書かれているのは、5.5.4 外部から提供される製品の管理です。

A∞Fit-CHEMS製品資料(A4両面)
A∞Fit-CHEMS製品資料

5.5.4 外部から提供される製品の管理

ここで言う外部から提供される製品は、何も通常に購買している原材料や部品だけを指すのではありません。
細分化項目にも書かれていますが、外部委託先も対象になります。
例えば、材料を供給して金属の打ち抜き加工を行っている場合や、メッキを外部に委託して
いる場合、更にはOEMで製品を製造してもらっている場合なども含まれます。

5.5.4.1 製品含有化学物質情報の入手及び確認

ここでは、自社の管理基準に基づいて、実際に購買している原材料や部品に関する製品含有
化学物質情報のデータを入手することが書かれています。
それはもちろん大事なのですが、より大事なのはそれを量産より前に入手し、
自社がこれから製造する製品に対して、製品含有化学物質について大丈夫かチェックをする
ことです。製品含有化学物質情報が管理の仕組みを作った初期の段階では、往々にして、
全ての原材料・部品に対して集まらないことが起こりえます。
ですが、それを何らかの形で担保しなければ製品製造を行えない状態になります。
外部委託先に対しては、材料供給を自社からするかどうかによってもやり方が変わってくる
ことにも注意しておきましょう。

5.5.4.2 供給者における製品含有化学物質の管理状況の確認

ここは、供給者において、どのような製品含有化学物質管理が行われているのか、
管理状況を確認するようにということが書かれています。
特に新たな供給先を選定する際は重要になります。まともに管理できていない供給者であれば購買候補から外すことを考えなければならないかもしれません。
もしくは、自ら手をかけて教育することになります。
また、ずっと取引のあるメーカーに対しても、管理の状況を必要に応じて再確認することが
重要です。

5.5.4.3 受入れ時における製品含有化学物質管理

こちらは、受入れ時における品質確認と同様、発注番号と現品との照合など確認方法を
規定しておくことが必要です。更には、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版では、
ここの項目に副資材を管理対象とすることが言及されています。
製品の中に含まれる副資材は管理対象にするべきです。
それには、例えば、グリスや接着剤のほかテープや緩衝材、更にはマーカーペンやシールなどの文房具も製品の内部に含まれてしまう場合は管理が必要です。

5.5.4.4 外部委託先における製品含有化学物質の管理状況の確認

外部委託先の管理は、ここでは外部委託先の製品含有化学物質の管理状態を確認することに
なっている体で文章が書かれています。
注記にも外部委託先における管理の仕組みで自ら管理されるべきとあるのですが、
世の中なかなかそんなに自ら管理できる会社ばかりであるとは限りません。
小さな家内工業のようなところにお願いする場合もあるかもしれません。
その際、自らの管理の仕組みを作ってくれと言っても、知識も経験もない状態では何もできません。このような場合は、委託側が何らかの形でサポートしない限りリスクは下がらないことになります。どう対応するのかは、自社で考えるべきことになります。

次回は、5.5.5 製造及び保管における製品含有化学物質管理からになります。

個人事務所 OFFICE KS 佐竹 一基<< コラム執筆 >>
個人事務所 OFFICE KS 佐竹 一基
ソニー株式会社で材料解析の後、環境全般、特に製品化学物質管理に従事。環境推進部統括部長。退社後(一社)産業環境管理協会に勤務。2018年独立し、同協会の技術顧問となるとともに環境関係のコンサルタントを行う。
A∞Fit-CHEMS製品資料

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