今の環境を活用しながら製造現場をIoTに発展させる「レトロフィットIoT」

 2023.10.16  AJS株式会社

はじめに

デジタル技術を大胆に取り込んで業務を改革し、効率化や新事業の創造などにつなげる経営戦略「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の波が製造業にも及び、製造現場におけるDXの本格導入も急速に加速していますが、多くの現場で老朽化した製造機械の台数が足枷となっています。古すぎてデジタルによる管理や制御が簡単でない一方で、製品自体の作りには問題なく、20年以上活躍している製品も多いです。こうした機器にデジタル管理を導入する手法が「レトロフィットIoT」です。

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レトロフィットIoTとは

レトロフィットIoTとは旧型の機械の良い機能を残しつつ最新の制御技術を搭載することで、大幅な精度の向上や機能の追加など最新型の機械に生まれ変わらせることです。ユーザーは古くても使い慣れたマシンで作業したいと要望があります。 使い慣れた機械は、ユーザーの品質と生産性を支える重要な資産であり、新しい機械には代えられない価値があります。

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レトロフィットIoTのメリット

  • 中古機をベースに再構築しているため、新品よりも機械精度が安定しています。

  • 汎用数値制御(NC)工作機械化など加工精度と生産速度を向上できます。

  • 制御部を機械制御から電子制御に変更することで、段取り時間を大幅に短縮できます。

  • FPGA応用技術を用いて電子部品の数を大幅に削減することで、将来の
    「電子部品の生産停止問題を回避」し、「メンテナンス性の向上」を実現できます。

  • 手動操作からコントローラーとタッチパネルに変更し、操作性が向上しました。

  • 熟練作業者でなくても扱いやすい機械にできます。

  • 本体などの使用可能なパーツを有効活用することで、
    新品を購入するよりも低コストで最新機種の性能を手に入れることができます。

  • エネルギー消費効率の良い部品に交換することで消費電力の低減に繋がります。

等、多くのメリットがあります。

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レトロフィットIoTとオーバーホールの違い

工作機械は経年劣化により精度が低下し、新品購入時の精度表の許容値からのずれがあります。 オーバーホールとはそのような状態で新しい機械を分解・点検・修理し、性能を回復させる行為です。

オーバーホールのメリットは新品を購入するより安く、納期も早いことです。例えば、新品への買い替えに多大なコストがかかる海外製の機械や大型機械のほか、メーカーのサービスがすでに完了している場合に有効です。

一方、レトロフィットとは数値制御(NC)設備を持たない機械をNC設備に改造し、古いNC設備を最新の設備に置き換えることです。機械の生産性を高めたい場合に便利なツールです。

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レトロフィットIoTの事例

  • NC交換で使い勝手良く

株式会社OKITAはプレス金型部品、機械部品の加工を行っています。マシニングセンター(MC)や数値制御(NC)旋盤などの工作機械を駆使した高精度加工技術が評価されています。大手金型部品メーカーのネストガイドの70%を納入しており、厚い信頼を得ています。

ネストガイドを構成する素材は、厚さと長さが異なります。また、加工中の設定変更が多いため加工プログラムの自由度が高く、操作性の高い汎用NCフライス盤を主力機種として活用してきた。しかし、発売から30年以上が経過した現在、社長の置田憲治は「壊れる前に手当てが必要だ」と考えていました。

代替機としてOKK製NCフライス盤「らくらくミル」を購入しましたが、NC専用機なので三菱電機メカトロニクスエンジニアリング(以下、MMEG)に問い合わせました。

MMEGはOKKと協力して仕様分析を実施し、標準のNC装置を機械に取り付けることができることを発見しました。

そのため、制御装置を三菱電機のNC装置に交換しました。広く使われている汎用NCフライス盤に匹敵する使いやすい加工機となっています。これを機にNCフライス盤1台のリプレースが完了し、現在追加検討中です。 「レトロフィットは、機械を処分することなく効果的に使用できます」と高く評価しています。

  • 支持荷重60トンの大型旋盤取得 日本のモノづくりに生かす

日高機械エンジニアリング(HIMEC、石川県志賀町)は、グループの日高機械(石川県志賀町)から木材脱水装置や害獣処理装置、不燃ボードなどの開発品事業の一部を承継し業務を開始した。同町内に開発・製造拠点となる「富来工場」を新設する。製品事業の展開と並行して、工作機械のレトロフィットにも取り組んでいます。

代表取締役社長日高明宏は日高機械の専務取締役を兼任し、日高グループ田辺鉄工所(金沢市)、田鶴浜マシンウッド(石川県七尾市)など日高グループとの連携を強化し、日高機械が主力事業とする工作機械のレトロフィットの受発注で協力する。HIMECは相互に製造を委託するだけでなく、新規顧客への提案や改造ベース機の自社ラインによる仕入・販売も担当する。

8月には日高グループが取り扱った中古機では過去最大となるドイツのフロリープ社製旋盤を取得した。支持力は60トン、ベッドスイングは2500mm、中心間距離は12000mm、機械全体の重量は120トンと、現在では製作できない大型機です。レトロフィット済みで現在でも高精度な加工が可能だが、顧客の要望に応じた新たな改造を検討している。

日高社長は「今後どうなるかわからないが、この大型旋盤を日本に送り、ものづくりに有効活用したい」と話している。

最後に

レトロフィットIoTには、費用や設備の選定などの課題もあります。しかし、トラブルや故障の早期発見や解決、メンテナンスの効率化、業務の効率化など、多くのメリットがあります。また、IoT技術の進化により、高度な運用管理や快適性の向上が期待されます。

レトロフィットIoTは、老朽化や省エネルギー化に加え、運用管理の改善も目的とする技術であり、今後ますます注目を集めることが予想されます。IoT技術を導入することでモノの価値を高めると同時に、運用管理の改善にも取り組むことができるため、検討してみることをおすすめします。

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