事業環境の変化が激しい現代社会において、企業の持続的な成長には『人』の存在がますます重要になっています。
また、ChatGPTなどの生成AIの登場により、これまで人事部門が担当していた定型業務は効率化が進み、これまで以上に創造性のある取り組みが求められます。
つまり、従来の“守りの人事”から、経営戦略の達成に向けた“攻めの人事”、『戦略人事』という考え方がより重要となってきたということです。
そこで、こちらの記事では、戦略人事の目的や重要性、人事部門が戦略人事を実現させるための具体的な取り組みや手順について、くわしく解説していきます。
採用や労務管理といった従来の人事業務の枠を超えて、『ヒトの価値を最大化する』ために人事部門に求められていることを確認していきましょう。
戦略人事とは?
戦略人事とは、経営戦略と人事戦略を連動させて、企業の競争優位性を高める取り組みのこと。
単なる採用業務や労務管理にとどまらず、企業の目指す方向に合わせて『どんな人材をどのように採用し、どうやって活かすか』を考え、経営戦略の実現に直接的に貢献することを目的としています。
たとえば、3年以内に新規事業を立ち上げるという計画があったとき、挑戦志向の人材を採用し、スピーディーに育成・適所に配置するといった施策が戦略人事になります。
戦略人事と人事戦略の違い
人事戦略とは、企業の目標達成に向けて、採用や人材の育成・配置といった人事業務にまつわる方針や施策を中長期的に計画することを指します。
つまり、人事戦略では、“人事業務で何をやるか・どう改善していくか”という視点で、人材マネジメントを行い、組織の生産性を高めていきます。
一方、戦略人事は、“人事業務をどう組織の中で活かすか”という経営的な視点を持って、人事戦略を策定し、経営戦略を実現させるために働きかけていきます。
なぜ、“戦略人事”が重要なのか?
旧来の企業組織において、人事部門の役割は採用業務や勤怠管理が中心でした。
しかし今の社会では、事業環境の目まぐるしい変化や、少子高齢化による人材不足、個人の仕事やキャリアに対する価値観の多様化も相まって、人材を“経営資源”とする考え方が広まっています。
そして、経営戦略の実現のために、企業側は、変化に柔軟に対応できる人材の獲得と、長く活躍してもらえる環境・組織づくりが欠かせません。
戦略人事は、人と組織の両面から企業の競争優位性を高めていくものであり、経営と現場をつなぐ取り組みとして、企業の未来を左右する重要な役割を担っています。
戦略人事を進めるための4つのステップ
ここからは、人事部門が戦略人事を実現させるためのステップについて解説します。
以下の4つの手順に沿って、経営戦略の達成に向けた“攻めの人事”を行っていきましょう。
経営戦略を理解し、課題を整理する
戦略人事を実現させるための第一歩は、「自社の経営理念や中長期の経営計画などを正しく理解する」ことからはじまります。
経営戦略の実現に直接的に貢献するためにも、企業の方向性を把握し、現状の課題を整理することが大切です。
戦略人事を実行する目的は、経営戦略の実現、企業の競争優位性の確保にあります。
そして、人事部門は、経営的な視点を持って人事戦略を策定・実行する必要があります。
定期的に経営層とすり合わせる場を設ける、現場の社員からヒアリングする等、まずは “経営と人事の接点”をもつことから進めていきましょう。
求める人物像を明確化する
経営戦略を理解し、現場の課題を把握・整理できたら、次に取り組むべきは「企業が求める人物像を具体的に定義する」ことです。
現在企業に属している社員のスキルや強みなどを洗い出しながら、経営戦略の課題を改善・解決できる人材の特徴を、スキルや経歴まで細分化して落とし込みます。
たとえば、経営戦略の課題として“DX推進の人材不足”が上がったとき、『業務改善のためのITツールやSaaSの活用に抵抗がない』『現場の課題を言語化してシステムや仕組みに落とし込める』『部門をまたぐ改善活動を推進できるファシリテーターとしての調整力がある』人材が求められます。
重要なのは、自社に必要な人材の行動特性やスキルを言語化すること。
自社の求める人物像は、戦略人事の実現に不可欠な、採用・育成・評価・配置といった人材マネジメント全体の施策の軸となります。
人事戦略を策定する
経営戦略を理解し、企業に必要な人材像が明確になったら、次に人事部門がやるべきことは「人事戦略の策定」です。
中長期的な視点で、採用計画や育成プログラム、キャリアパス設計などの具体的な施策を立案することが大切です。
また、組織構造の見直しや人事評価制度の改定など、ヒトの価値を最大化させるための仕組みづくりも関わってくるため、経営戦略上の課題の優先順位を意識して策定します。
戦略人事の目的である経営戦略の実現に向けて、人と組織をどう動かしていくかを検討しましょう。
施策を効果検証し、仕組み化する
人事戦略を策定したら、実際に施策の実行に移ります。
ここで重要なのは、施策が本当に効果があるかを検証し、改善を繰り返し、仕組み化していくこと。
やりっぱなしにするのではなく、採用人数や採用後の定着率といった定量的側面と、社員の納得感や現場の空気感といった定性的側面の両方から施策を振り返り、検証しましょう。
また、効果のあった施策はルール化し、“再現性のある仕組み”として組織全体に定着させることが戦略人事では必要です。
特に、人事評価制度や育成計画などは、誰でも実行できる仕組みとして整えていきましょう。
人事戦略の仕組み化を進める際には、評価システムや育成管理ツールを活用するのも有効です。
たとえば、「P-TH/P-TH+」のような人事評価システムを使えば、社員情報や評価データ、1on1ミーティングのフィードバックなどを一元管理でき、人事施策のPDCAが自然と回る仕組みが整います。
戦略人事を実現するために人事部門に求められること
では、戦略人事を実現するために「人事部門」に求められていることは一体何なのか。
従来の、採用業務や勤怠管理といったオペレーション中心の役割を超えて、経営と社員の間に立ち、人材の力を最大化する仕組みをデザインすることが、人事部門に求められます。
経営戦略と人材施策を結びつける
戦略人事を実現するために、人事部門には「自社の経営戦略を理解し、具体的な人材施策へと結びつけること」が求められます。
企業がどの方向を目指しているのかを正しく理解した上で、「どのような人材が必要なのか」「既存の人材をどう成長させるのか」「どんな組織にしていくか」を設計することが欠かせません。
経営戦略と人材施策を結びつけて組み立てることにより、単なる管理部門ではなく、経営のパートナーとしての役割を果たし、企業の成長を支える推進力となるでしょう。
採用から人材育成をつなぐ仕組みづくり
戦略人事には、「経営戦略の実現に必要な人材を採用し、その人材が組織文化に適応する仕組み」が不可欠です。
同時に、既存社員を含め「採用した人材を育て、戦力化を進めていく」ことで、企業全体の持続的な成長につながります。
企業を取り巻く環境は常に変化し、経営戦略を実現するうえで求められる人材やスキルは時代とともに移り変わります。
その中で、企業に適した人材の分析を行い、社員一人ひとりが学び直し(リスキリング)やスキルアップできる環境を整えることは、競争優位性の強化とモチベーション向上に直結します。
人材の採用から育成までを一貫して設計することで、社員が持つ力を最大限に引き出し、長期的に成長しつづけられるよう支援することも、人事部門に求められる大きな役割といえるでしょう。
戦略人事の実現にも、人事評価システム「P-TH/P-TH+」
人事戦略を単発の取り組みで終わらせず、継続的に回る仕組みに変えていくには、人事評価制度の整備と運用が欠かせません。
特に、経営戦略と連動した人材マネジメントを実現するには、目標設定や評価、フィードバックを一貫して行える体制づくりが求められます。
そこでおすすめするのが、あらゆる企業に適用可能な人事評価システムの「P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)」。
「P-TH/P-TH+」では、システム導入時に既存のExcelの評価シートをそのままシステム化することができるので、システムにあわせてワークフローや評価制度を変更する必要はありません。
評価の進捗確認もリアルタイムで可能になり、手間のかかる集計作業も大幅に圧縮できます。
また、2025年4月より、1on1 機能も新たにリリースされました。
1on1ミーティングの感想や満足度、実施時間等の記録はシステム上に蓄積され、分析レポート機能により、1on1ミーティングの質を上げ、より効果的に実施することが可能になります。
評価制度をシステム化して効率化を図りたいものの、今までの評価シートやフローを変えたくないという企業や、1on1を効果的に行いたい企業を、「P-TH/P-TH+」はサポートします。
人事施策のPDCAを回し、社員の行動と経営目標をつなげていく。
経営戦略を実現するための土台として、「P-TH/P-TH+」は有力な選択肢となるでしょう。
まとめ
戦略人事は、経営戦略と人事戦略を連動させ、競争優位性を高めていく取り組みのこと。
事業環境の変化が激しい今の時代、人事部門には、組織の成長に貢献する役割が求められます。
採用・育成・評価・配置といった人材マネジメントを経営課題に基づいて設計・実行し、仕組みとして定着させることで、人と組織の価値を最大化させることができるでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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