昨今、1on1ミーティングを導入する企業は増えつつありますが、上司が部下へ一方的に意見を伝えるだけの場になっていることも少なくありません。上司側に対話の意思があっても、部下の意見を引き出すことができずに困っている場合もあるでしょう。本記事では、1on1で役立つ「面談シート」の作り方を解説します。この面談シートを活用すれば、ポイントを押さえた面談を行い、1on1の効果を向上することが可能です。
1on1ミーティングの効果を高める“面談シート”とは?
面談シートとは、1on1ミーティングを効果的に進めるための質問事項をまとめたフォーマットです。一般的には、事前に面談シートを部下に渡して回答・提出してもらい、上司はその回答を材料に対話を深める形で活用されます。
面談シートを使うことで、お互いに話すことや気になるポイントを事前に整理してから1on1に臨めるので、認識のズレを防ぎ、より建設的な対話をしやすくなります。さらに、面談シートを全社的に共有することで、上司によって1on1の内容や質が極端に変わることを防ぐことができます。ただし、面談シートの共有に際しては、個人情報保護の観点から適切な管理が必要です。
1on1用面談シートに含めるべき4つの質問項目
そもそも1on1の主な目的は、部下の成長を促し、組織へのコミットメントを高めることです。この目的に沿って、面談シートには以下のような質問項目を含めておきましょう。
1. メンバー自身の成長につながる質問
1on1では、部下が抱える目標や課題を明確にし、継続的な成長を促すことが求められます。以下のような質問を面談シートに含めることで、部下の目標管理や成長をサポートすることができます。
【質問例】
- 現在の仕事で最もやりがいを感じるのはどういうときですか?
- 今後どのような経験を積みたい、またはどのようなスキルを伸ばしたいと考えていますか?
- 目標を達成するうえで、自分にどのような課題があると感じていますか?
2. 仕事に対する率直な意見を引き出す質問
1on1で上司は、部下が普段話しづらい不満や悩みも引き出す必要があります。本音で意見を述べてもらうことで、上司の立場からは見えにくいチームの問題に気づいたり、部下が抱える悩みを共有して信頼関係を築いたりできます。
【質問例】
- 仕事で一番ストレスを感じるのはどのような時ですか?
- 現在の業務で改善が必要だと感じる点はありますか?
- チームの雰囲気や働き方について、何か変えたいと思う点はありますか?
3. 今後のキャリアに関する質問
部下のキャリアビジョンを明確にし、将来の目標やビジョンを共有することで、部下の中長期的な成長を促すことができます。
【質問例】
- 今後どのような仕事にチャレンジしてみたいですか?
- 将来的なキャリアビジョンは何かありますか?
- どのようなスキルを磨いていきたいと思っていますか?
4. モチベーションに関する質問
部下のモチベーションを管理し、モチベーションを下げている要因を把握・解消することで、部下のパフォーマンスを最大限に引き出せます。
【質問例】
- 仕事で最もやりがいを感じるのはどのような時ですか?
- 最近、仕事に対するモチベーションが上がったり下がったりする要因は何かありますか?
- どのようなサポートがあると、さらに意欲的に取り組めると思いますか?
1on1用面談シートのフォーマット例
面談シートの質問事項が多すぎたり、内容が抽象的であったりすると、部下の事前記入の負担が増え、面談自体の内容も散漫になりがちです。そのため、質問内容は具体的かつ端的に絞り込むことが求められます。質問項目や面談の進め方は随時見直し、自社に適したやり方を模索していきましょう。まずは叩き台として、以下のフォーマット例をご参考にしてください。
【フォーマット例】
- 業務上困っていること
質問例:「最近、業務で困っていることはありますか?」
部下が業務で直面している課題や悩みを把握するための質問です。上司は部下の悩みに対して、具体的なアドバイスやサポートを提供することが求められます。 - チームがもっとよくなるためのアイデア・気づき
質問例:「ここを改善したらチームがもっと良くなるというアイデアはありますか?」
チームの問題点や改善のためのアイデアを知るための質問です。上司は部下の意見を前向きに受け止め、積極的にチームマネジメントへ反映することが求められます。 - キャリア・将来について考えていること
質問例:「将来のキャリアについて具体的なビジョンはありますか?」
部下のキャリアプランや成長意欲を理解し、支援するための質問です。上司は部下の希望や目標に応じたスキルアップの機会やキャリア支援を検討しましょう。 - 目標
質問例:「仕事における、現在の目標は何ですか?」
部下の目標や取り組むべきことを明確にし、上司と部下で認識を共有するための質問です。上司は部下の主体性を尊重しつつ、目標の内容や難易度、期限などの設定を擦り合わせるようにします。 - 前回の1on1から実践したこと
質問例:「前回の1on1以降で特に成長を感じた場面や課題を感じた場面はありましたか?」
前回の1on1で話した目標や課題がどうなったか確認するための質問です。うまくいっていない場合には、分析して、改善策を検討する必要があります。 - 直近の体調や個人的なトピック
質問例:「最近、体調やプライベートなど、変わったことはありましたか?」
メンタルヘルスも含めた部下の健康状態やプライベートの様子を確認するための質問です。必要に応じて、上司は業務量の調整などの配慮を行い、働きやすい環境を整えます。 - 上司へのお願いや相談事項
質問例:「私に対して相談したいことや改善してほしいことはありますか?」
上司に対する要望を把握し、それに応えて信頼関係を築くための質問です。上司は部下の意見を尊重し、実現可能な要望は受け入れるなど、適切に対応しましょう。 - 次の1on1までに取り組むこと
これは質問項目ではなく、今回の1on1で話した内容を踏まえて、次回までの行動計画などを記入する箇所です。これによって1o1を具体的な成長や行動変容につなげやすくなります。
面談シートを用いた1on1を成功へ導くポイント
1on1を成功させるためには、シートづくりやその運用において、以下のポイントを意識することが重要です。
オープンクエスチョンを用いる
面談シートの質問項目は、イエス・ノーで答えられるものではなく、自由に意見を述べやすいオープンクエスチョンにすることが大切です。オープンな質問は対話を広げるきっかけとなり、部下の考えや感じていることを深く理解する手助けになります。また、アイスブレイクとして趣味や休日の過ごし方を尋ねるなど、気軽に話せる質問を織り交ぜるのも効果的です。ただし、プライベートに踏み込みすぎる質問や過度な深掘りは避け、会話のきっかけ程度に留めるように注意しましょう。
アドバイスやフィードバックを用意しておく
1on1をスムーズに進めるために、部下の課題解決や成長につながる具体的なアドバイスや自身の経験談などを事前に考えておきましょう。また、1on1で上司からのフィードバックを受けたい部下も多いので、普段の業務に関して気づいたことなども事前にまとめておきましょう。
質問攻めや否定的な態度は控える
面談シートの内容について執拗に質問攻めしたり、否定的な態度を取ったりすると、部下の心理的安全性を損ない、率直な意見を引き出しにくくします。1on1では、部下が安心して話せる雰囲気をつくることが大切です。批判よりも共感、議論よりも対話を心がけることで、部下は本音を話しやすくなるでしょう。
面談シートを保管し活用する
1on1が終わっても、面談シートは破棄せず、しっかり組織内で保管しましょう。面談シートは、部下とのやりとりや成長の軌跡を振り返る重要な記録です。例えば、面談シートがあれば、上司やマネージャーが変わった場合でも、部下のマネジメントの引き継ぎを円滑に行えます。人事評価の参考資料としても有用です。
1on1を踏まえた人事評価には「P-TH / P-TH+」の導入も検討を
1on1ミーティングを通じて部下との対話を重ねれば、期末の人事評価にも納得感が生まれます。また、1on1を踏まえた人事評価業務を効率的に行うには、ITツールの導入が有効です。
例えば、「P-TH / P-TH+」は、あらゆる業種や組織で利用可能な人事システムです。「P-TH / P-TH+」は、既存の評価制度や評価シートをそのままシステム化できるので、簡単に運用を始められます。人材データのベースとしても活用可能です。人事評価をシステム化することによって、人事評価にかかる作業時間を大幅に短縮し、業務効率化を実現できます。
▼人事評価システム P-TH/P-TH+
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まとめ
1on1ミーティングの効果を高めるためには、面談シートの活用が有効です。面談シートの質問および事前回答をもとに面談を行うことで、限られた時間でも実りある対話が実現します。さらに、面談シートはそのまま議事録や人事評価の参考資料としても活用できます。面談シートの管理活用も含めて人事評価作業を作業するには、「P-TH / P-TH+」の導入をおすすめします。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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- 人事部門向け