介護離職とは?
現状・デメリット・防止のために企業ができる取り組み

 2024.07.18  AJS株式会社

近年、介護離職が大きな問題となっています。従業員が家族の介護を理由に離職せざるを得なくなることは、本人だけでなく企業にとっても避けたい事態です。この記事では、なぜ介護離職が起こるのか、介護離職を防ぐために企業として何をすべきかなどを解説します。

介護離職とは? 現状・デメリット・防止のために企業ができる取り組み

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なぜ介護離職が起こるのか

介護離職とは、従業員が親や配偶者などの介護と仕事の両立が困難になって退職することです。介護は場合によっては介護対象者が亡くなるまで続くため、適切なサポートを得られなければ精神的・肉体的に疲弊してしまいます。食事や排泄など、日常生活における動作にまで介助が必要な場合、介護はより負担の大きなものとなります。

親の介護が必要となる人の多くは40~50代の現役世代であり、心身ともに限界に達してやむなく退職を選ぶことは少なくありません。そのため、超高齢社会に突入して要介護者も増加の一途をたどる現代の日本において、介護離職は非常に大きな課題となっています。

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介護離職する人の割合と経済損失試算額

経済産業省が作成したガイドラインによると、仕事をしながら介護をしている人は増加傾向にあります。2030年には、仕事をしながら介護も担う「ビジネスケアラー」が約318万人にも達すると見込まれています。その中には、介護の悩みを抱えていることを職場に打ち明けられず、適切な働き方ができていない人も少なくありません。

介護と仕事の両立が困難な人が増えると、経済的な損失も大きくなります。経済産業省の同じガイドラインでは、経済損失は約9兆円に上るとの試算が示されています。また、厚生労働省が毎年発表している雇用動向調査によると、2022年に介護・看護を理由に離職した人は約7.3万人となっており、性別の内訳は女性が約4.7万人、男性は約2.6万人です。このように、介護の負担が女性に偏っている傾向が読み取れます。

人口の減少による働き手不足が深刻になっている今、企業は従業員の介護問題や介護離職に対しても無関心ではいられない状況です。リスクマネジメントの一環としても、介護離職の対策を取る必要があるでしょう。

参照元:経済産業省|仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン

参照元:政府統計の総合窓口|雇用動向調査 年計 結果表 年次 2022年

介護離職のデメリット・問題点

介護離職は社会全体の課題ですが、仕事と介護を両立させる従業員にとっても、そして企業にとっても直接的なデメリットがあります。

従業員にとってのデメリット・問題点

従業員にとってのデメリットとしては、まず精神面・肉体面、経済面での負担が増える傾向があることが挙げられます。

厚生労働省が2019(令和元)年度に実施した労働者調査において、介護離職をした後に「非常に負担が増した」と回答した人は、精神面で30.2%、肉体面で24.0%、経済面で34.1%にものぼっています。

状況に応じて、まずは生活福祉資金貸付制度や介護保険サービスといった経済的支援を活用することが重要です。その他、市役所などの相談窓口への相談、外部サービスの利用なども検討しましょう。
また、そもそも離職をせずに介護を続けられるような道がないか、勤務先に相談をしたり、何か利用できる制度がないかなどを確認したりしてみましょう。介護と仕事を両立できるように、政府が行っている取り組みなどもあるため、後述します。

参照元:厚生労働省|労働者調査 結果の概要

参照元:厚生労働省|「生活福祉資金の貸付けについて」の一部改正について

企業にとってのデメリット・問題点

介護離職をする人が多い年代は、職責が重い業務に従事したり、管理職として活躍したりしていることが少なくありません。これらの人材が介護によって離職すると、生産性の低下や業務遂行上の支障が生じます。代わりとなる人材を獲得しようとしても、採用活動に対するコストがかかるため、これらは企業にとって大きな負担です。そのため、厚生労働省をはじめとする行政は、介護離職を防ぐために従業員だけでなく企業に対しても支援・援助の取り組みを行っています。

参照元:厚生労働省|仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~

政府による介護離職を防ぐための取り組み

従業員が介護を担いながら仕事も続けるためには、介護保険制度の介護サービスに加えて、育児・介護休業法において定められている仕事と介護の両立支援に関する各種制度も活用できます。

具体的な両立支援制度としては、介護休業、介護休暇、短時間勤務等の措置、所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限があります。いずれも要介護状態(負傷、疾病または身体上・精神上の障害により2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態)の家族を介護する目的で利用できます。

介護休業に関しては次項で詳しく解説しますが、その他の制度についてそれぞれ簡単に解説します。

  • 介護休暇
    対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで取得できる休暇制度です。1日または時間単位で取得できるため、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせなど、柔軟に利用できます。無給か有給かは企業の規定によります。
  • 短時間勤務等の措置
    企業は、1日の所定労働時間を短縮する制度、フレックスタイム制度、時差出勤の制度、介護サービス費用の助成などの制度のうちひとつ以上を設けなければいけません。
  • 所定外労働の制限(残業免除)
    残業を免除する制度です。
  • 時間外労働の制限
    1か月あたり24時間、1年あたり150時間を超える時間外労働を制限する制度です。
  • 深夜業の制限
    深夜労働が免除される制度です。

参照元:厚生労働省|「介護休業」を活用し、仕事と介護を両立できる体制を整えましょう。

参照元:厚生労働省|そのときのために知っておこう介護休業制度

仕事と介護を両立できる体制を整える「介護休業制度」

介護休業制度は、要介護状態にある対象家族を介護することを目的とした休業制度です。対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

休業中は介護と並行しながら、地域包括支援センターへの相談・介護サービスの手配など、「介護を一人で抱え込まないようにする体制づくり」に充てることが可能です。また、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たしていれば、休業開始時賃金日額の3分の2に相当する介護休業給付金の支給対象にもなります。

介護離職を防ぐために企業ができる取り組み

企業には、介護と仕事を両立する従業員が安心して働き続けられるような環境を整えることが求められています。ここからは、企業が従業員の介護離職を防ぐための取り組みを紹介します。

現状の把握

まずは、従業員の介護状況を把握する必要があります。介護の有無や可能性、介護の実態、介護と仕事に対する不安、介護に直面した際の働き方の希望、制度の認知度などを、全社的なアンケートやヒアリングなどを通して把握します。悩んでいても打ち明けられない従業員がいる可能性もあるため、外部の窓口を活用するのも有効です。

利用できる制度の周知

2024年に育児・介護休業法が改正され、家族の介護が必要になった従業員に介護休業や介護休暇などの制度を説明し、利用するかどうかを確認することが全ての企業に義務づけられています。また、介護をしていない従業員に対しても、介護保険料の支払いが始まる40歳になる時点で制度に関する情報提供を行う必要があります。もっとも、介護はいつから始まるか分からないため、それ以下の年齢の従業員にも広く周知しておくことが重要です。

同時に、「誰もが何らかの事情で100%仕事にコミットできない時期がある」「困った時はお互いさま」といったメッセージを発信する取り組みも有効です。そうすることで、介護を抱える人だけでなく、誰もが働きやすい風土を醸成できます。

勤務制度や評価制度の見直し

勤務制度や評価制度の見直しも、介護離職の防止に関係します。前述の「短時間勤務等の措置」は、1日の所定労働時間を短縮する制度やフレックスタイム制度などのうちひとつを設ければ制度としては問題ありませんが、実際にはそれだけでは不十分でしょう。例えば1日の所定労働時間を短縮する制度では、みなし残業代の有無によっては大きく給与が減少するため、従業員が制度の利用を断念しなければならない恐れがあります。そのため、従業員が個々の状況とニーズにあわせて制度を活用できるよう、複数の制度から選べるようにすることが有効です。

また、介護をしながら仕事をすると一時的にパフォーマンスが低下してしまうため、本人の意向を尊重しながら、柔軟な目標設定・評価をすることも重要です。介護と仕事の両立が軌道に乗って来た後も、定期的なフォローを行い、企業としてできる支援を続けましょう。

企業としても、介護をする従業員が介護休業を合計5日以上取得するなどの一定条件を満たすことで両立支援等助成金などの支援を受けられます。

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十分なスキルや経験を備えた従業員の介護離職を防ぐには、企業が各従業員の状況を把握した上で、柔軟な働き方を提示することが重要です。そうすることで、介護の当事者だけでなく誰もが働きやすい職場環境が整備できます。

柔軟な働き方と同様に柔軟な目標設定や評価もまた環境整備の一つと言えるでしょう。評価業務が煩雑にならないために人事評価システムを見直すことも有効です。人事評価システムは「P-TH/P-TH+」がおすすめです。既存のExcelの評価シートをそのままシステム化でき、集計業務を自動化できるなど、人事評価業務にかかる作業時間の短縮が実現します。従業員情報の一元管理が可能となるため、介護の有無なども含めた現状把握にも役立てられます。

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まとめ

従業員が家族の介護を理由として離職してしまう介護離職は、本人だけでなく企業にとってもデメリットがあります。介護離職を防ぐには、公的な支援制度を利用しながら、企業が積極的にサポートする体制を構築する必要があります。人事評価システム「P-TH/P-TH+」を活用し、各従業員の状況を把握しながら、介護と仕事を両立させられる職場環境づくりに取り組みましょう。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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