仕事をしながら介護も行わなければならないビジネスケアラーを雇用する企業には、当該従業員がこの二つを両立できるよう支援することが、法的にも社会的にも求められています。本記事では、ビジネスケアラーが抱える課題や、育児・介護休業法がビジネスケアラー支援に関して規定している内容、企業が行う支援の取り組みなどについて解説します。おすすめの人事評価システム「P-TH(ピース)/P-TH+(ピースプラス)」も紹介します。
「ビジネスケアラー」とは?
「ビジネスケアラー」とは、仕事をしながら、同時に日常生活のサポートが必要な家族の介護も行っている人を指す言葉で、「ワーキングケアラー」とも呼ばれます。ビジネスケアラーは多くの場合、周囲に介護を任せられる人が存在せず、仕事と介護との両立を求められる、厳しい状況に直面しています。
経済産業省が2024年3月に公表した「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」によれば、今後も超高齢社会の状態が続く日本では、年を追うごとにビジネスケアラーの数が増えると予想しています。2020年には262万人でしたが、2025年には307万人、2030年には約318万人に達すると試算されています。
参照元:経済産業省|仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン
※P7~8をご参照ください。
ビジネスケアラーの課題
ビジネスケアラーはどんなに仕事で疲れていても、時間がなくても、毎日、家族の介護にあたらなければなりません。仕事と介護との両立を求められる期間が長くなればなるほど、疲労が溜まり、仕事を今まで通り行うことも難しくなって、場合によってはメンタルヘルスの問題を発症することもあります。
そのため、離職を決断する人が出てしまうことがありますが、本人にとってはもちろん、企業にとっても離職は大きな損失です。この状況を避けるために、企業はビジネスケアラーをめぐる深刻な課題に対して、真剣に取り組むことが求められます。
「育児・介護休業法」によるビジネスケアラーへの取り組み
「育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」第23条第3項では、事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が就業しながら介護を容易にできる措置を講じなければならない、と規定しています。具体的には、
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度
- 介護費用の助成
のいずれかを講じることによって、「要介護状態にある対象家族を介護する労働者」(ビジネスケアラー)の環境を改善することを求められています。これら4つの措置はただ運用すればよいのではなく、就業規則などで規定して、制度化された状態にしなければなりません。
仕事と介護の両立は身体的にも精神的にもビジネスケアラーに大きな負担となりますが、これらの制度(措置)を従業員が活用できるようになれば、負担は少しでも軽減されるはずです。
参照元:厚生労働省|短時間勤務等の措置について
参考URL:Ⅸ-7 対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置
(第23条第3項)
企業による仕事と介護の両立を支援する取り組み
育児・介護休業法によって、国が推進しているビジネスケアラーへの支援のほかにも、企業が取り組めることがあります。
従業員にあわせた柔軟な勤務形態を導入する
例えば、下記のように、従業員が介護と両立しやすい勤務形態を導入することができます。
在宅勤務の導入
事業所に出勤することなく、自宅にいながら就業できる在宅勤務が認められていれば、ビジネスケアラーは就業の合間を見て、必要なタイミングで家族の介護を行うことができます。
在宅勤務と上述した短時間勤務制度あるいはフレックスタイム制度を組み合わせて運用できれば、ビジネスケアラーにとってはかなり柔軟な働き方が実現します。
ただし、例えばリモート会議中に、突発的な介護対応が必要になるようなこともあり、上司・同僚などからの理解は欠かせません。この点については全社的な取り組みが求められます。
また、そもそも業務中に席を外してもよいのか、その場合の給与や成果の判断をどうするのか、などは企業と従業員でしっかりと相談し、決めておく必要があります。
所定外労働の制限(残業免除)
所定外労働の制限(残業免除)に関しては、育児・介護休業法によって、ビジネスケアラーに対して実施することが求められている措置です。家族などが、介護が必要な状態になったときから、介護が終了するときまで、1か月以上1年以内を単位として、何回でも取得することが認められます。短時間勤務制度やフレックスタイム制度とともに実施することにより、ビジネスケアラーの仕事と介護の両立とを強く支援できます。
ビジネスケアラーが利用できる制度や支援を周知
上述のような勤務形態の導入の他、介護休暇、介護保険サービスなど、ビジネスケアラーが使える国の制度や支援を周知することも、企業のできる支援の1つです。
社内に支援制度があるにも関わらず、それを知らずにビジネスケアラーが追い詰められている場合もあり得ます。適切に制度の周知などを行いながら、利用を促すことで、介護と仕事の両立を支えることができます。
相談しやすい環境づくり
ビジネスケアラーは相談ができずに一人で追い詰めていることも想定できますので、相談してもらい、企業側から支援制度などを伝えることができるのが理想です。そのために、そもそも相談しやすい環境づくりをしておくことも重要です。普段からの声かけはもちろん、個別面談の機会を定期的に設けるなどして、従業員が介護の件に限らず、働き方について相談をしやすいような環境を作っておくことが大切です。
状況に応じた目標設定と評価
また、評価もビジネスケアラーという状況に合わせたものにしていけるとよいでしょう。
2024年3月に経済産業省ヘルスケア産業課が公表した「経済産業省における介護分野の取組について」では、企業における(就業と介護との)両立支援を充実させるためには、企業が進める「健康経営」の評価項目に、ビジネスケアラーへの対応に関する項目を追加して、取り組みと目標とを可視化し、(資本および労働)市場から評価される仕組みを作ることが重要であると指摘しています。
さらに、ビジネスケアラーの実態やニーズを企業が整理するとともに、介護と仕事とを両立させるための支援において、どのような施策が必要なのかなどについて取りまとめた企業向けのガイドラインを経済産業省などが整理する必要があるとも述べています。
企業が整理したビジネスケアラーの実態やニーズは、ビジネスケアラーに対する企業側からの評価に正しく適用されることが望まれます。一般従業員とは前提条件の異なるビジネスケアラーには、それぞれの状況に応じた評価軸が必要です。
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まとめ
仕事と介護とを両立させているビジネスケアラーに対して、さまざまな支援策を講じ、積極的にサポートするよう企業には求められています。ビジネスケアラーの課題に対する取り組みは可視化して、企業が評価される仕組み作りが必要であるとともに、一般従業員とは条件の異なるビジネスケアラーに対する評価を企業が正しく行うことも重要です。適切な人事評価を行いたいと考えているのであれば、AJS株式会社が提供する「P-TH(ピース)/P-TH+(ピースプラス)」の導入をおすすめします。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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