
『厳しく指導したらハラスメントになるかも』『部下に嫌われたくない』、そんな不安から必要以上に部下へ気を遣う管理職が増えています。
近年、このような“過度な配慮”によって、適切な指導や業務配分が行われなくなる「ホワイトハラスメント」が、職場の新たな課題として注目されるようになりました。
一見すると“優しさ”にも思えるホワイトハラスメントですが、本人の成長機会を奪ったり、周囲との不公平感を生んだりすることで、かえって職場環境を悪化させるケースも少なくありません。
実際に、マイナビの調査では、「ホワイトハラスメント」経験者のうち、1年以内に転職したいと思う割合は71.4%にのぼることが報告されています。
そこで、こちらの記事では、ホワイトハラスメントとは何かをはじめ、具体例や原因、企業ができる対処法についてわかりやすく解説します。
また、AI時代だからこそホワイトハラスメントが増えている背景についてもご紹介します。
ホワイトハラスメント(ホワハラ)とは

ホワイトハラスメント(ホワハラ)とは、上司や先輩が部下に対して『負担をかけないように』『嫌な思いをさせないように』と過剰に配慮することで、結果的に部下の成長機会やキャリア形成の場を奪ってしまう行為を指します。
強い叱責や圧力がない“ホワイト企業”であっても、『適切な指導をしてもらえないこと自体がつらい』と感じる人が増えたことで、ホワイトハラスメントと呼ばれるようになったとされています。
▼ ホワイトハラスメントの例
・「難しい仕事だから」と、責任ある業務を一切任せてもらえない
・仕事が終わっていないにもかかわらず、「残業しなくて大丈夫だよ」と仕事をさせてもらえない
・「自分がやっておくから」と、先輩や上司が先回りして業務を抱え込んでしまう
・ミスを恐れるあまり、チャレンジできる機会を与えてもらえない
・トラブル回避を優先し、部下への指導やフィードバックを避ける
ホワイトハラスメントは、従来のハラスメントのように暴言や威圧的な態度を伴うわけではありません。
むしろ、“優しさ”や“配慮”として行われるケースが多い点が、ホワイトハラスメントの特徴です。
ホワイトハラスメントが注目される背景
ホワイトハラスメントが注目されるようになった背景には、ハラスメント問題に対する社会全体の意識の高まりがあります。
大きな転機となったのは、2020年に施行された改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」です。
企業にはパワーハラスメント防止措置が義務化され、職場内にも『ハラスメントを起こさないこと』への意識が急速に高まり、“事なかれ主義”のマネジメントが広がるようになりました。
本来、適切なフィードバックや業務経験は、人材育成に欠かせない要素です。
しかし、『ハラスメントと受け取られないこと』を優先するあまり、部下への関わり方が極端に消極的になってしまうケースも増えています。
ハラスメント防止への意識の高まりが、結果として“過剰に優しいマネジメント”を生み出し、ホワイトハラスメントという新たな問題につながったということです。
AI時代の「ホワイトハラスメント問題」
近年では、「AIの普及」もホワイトハラスメントが生まれる背景の一つとして考えられています。
これまで若手社員が担っていた議事録作成や情報収集・下調べ、資料のたたき台作成やデータ整理、Excelの整形作業といった業務は、AIによって自動化が進みつつあります。
とくに大企業では、AIを活用した業務効率化も浸透していることで、“若手社員に任せる仕事”そのものが減少しているケースも少なくありません。
AI時代は“無理に人に仕事を振らなくても業務が回る”環境になりつつあるため、『任せないこと』が配慮として成立しやすくなっている点も特徴です。
AIの普及によって、本来なら経験を通して学べたはずの業務機会が減少することで、若手社員の成長機会や実践経験が不足し、結果としてホワイトハラスメントにつながる可能性もあるでしょう。
ホワイトハラスメントによる悪影響

ホワイトハラスメントは、一見すると“優しいマネジメント”に見える一方で、部下や組織にさまざまな悪影響を及ぼすリスクがあります。
部下の成長や挑戦意欲が阻害される
『負担をかけてはいけない』『失敗をさせてはいけない』という過剰な配慮から、本来であれば経験を通して学べる業務機会を十分に与えてもらえない状態が続くと、部下は実践経験を積めません。
成長機会が減少し、『どうせ任せてもらえない』という意識から、挑戦意欲や主体性が低下するケースがあります。
活躍の機会が減り、適正な評価が難しくなる
責任ある仕事を任せてもらえなければ、成果を出す機会も減少してしまいます。本人に能力があっても実績として評価されにくくなり、適切な人事評価や昇進判断が難しくなる可能性があります。
成長実感を得られず、人材流出につながる
近年は、「働きやすさ」だけでなく「成長できる環境」を重視して就職・転職する人も増えています。
そのため、『成長できない』『経験を積めない』と感じた社員が転職を選び、優秀な人材の流出につながることもあるでしょう。
上司の育成力・指導力も育ちにくくなる
ホワイトハラスメントは、部下だけでなく、上司にも影響を与えます。
『ハラスメントと思われたくない』という意識から必要な指導までも避けてしまうことで、上司自身も人材育成の経験を積めず、結果として“人を育てられない組織”になってしまう恐れがあります。
ホワイトハラスメントの対処法
ホワイトハラスメントを防ぐためには、上司と部下が日頃から密にコミュニケーションを取ることが大切です。
ホワイトハラスメントは、“配慮しているつもり”の上司と、“成長機会を奪われている”と感じる部下との認識のズレによって起こるケースが少なくありません。
そのため、上司側は、
・業務上必要な教育や指導を適切に行う
・負担をかけないことだけを優先しすぎない
・部下の成長機会を意識して「なぜこの業務を任せるのか」を伝えたうえで仕事を任せる
ことが重要です。
そして、部下の方も、『もっと挑戦したい』『仕事を任せてほしい』『フィードバックがほしい』といった自分の意思をはっきり伝えることが大切です。
上司の一方的な配慮や、部下側の誤解を防ぐためにも、「上司が何を考えているのか」「部下が何を望んでいるのか」を、対話を通じて確認し合う必要があります。
お互いの考えを共有しながら適切な距離感で関わることで、ホワイトハラスメントの対処につながるでしょう。
ホワイトハラスメントの防止に。
評価システム「P-TH/P-TH+」の1on1機能
ホワイトハラスメントを防止するためには、上司と部下が定期的にコミュニケーションを取り、お互いの考えや期待を共有できる環境づくりが不可欠です。
しかし実際の現場では、
「忙しくて部下と話す時間が取れない」
「何を話せばよいかわからない」
「指導やフィードバックが後回しになっている」
といった理由から、十分な対話ができていないケースも少なくありません。
そこで役立つのが、慣れ親しんだExcelの評価シートをそのままシステム化できる人事評価システム「P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)」の『1on1機能』です。
P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)では、1on1ミーティング前に上司・部下間で議題を共有できるため、話すべき内容を整理しながら、より有意義な1on1ミーティングを実施できます。
1on1ミーティングの記録が残せるのはもちろん、1on1ミーティングの満足度を測ることもできるため、結果をもとに1on1ミーティングの質を改善することができます。
ホワイトハラスメント防止のためにも、1on1ミーティングや適切なフィードバックを継続できるP-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)は効果的といえるでしょう。
まとめ
ホワイトハラスメントとは、ハラスメントと受け取られることを過度に恐れたり、部下への配慮が行き過ぎたりすることで、結果的に部下の成長機会や挑戦の場を奪ってしまうことです。
また、近年は、パワハラ防止への意識の高まりに加え、AIによる業務効率化の普及によって、“人に任せなくても仕事が回る環境”が増えつつあります。
その結果、「部下に仕事を任せないこと」が配慮として成立しやすくなり、ホワイトハラスメントにつながるケースも出てきています。
もちろん、働きやすい職場づくりやハラスメント防止は重要です。
しかし、「厳しくしないこと」と「育成しないこと」は同じではありません。
上司と部下がしっかりとコミュニケーションを取りながらお互いの考えや期待を共有し、適切な距離感で関わることで、ホワイトハラスメントを防ぐことができるでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
- カテゴリ:
- 人事部門向け
- キーワード:
- ハラスメント



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