人事評価における定性目標とは?定量目標との使い分け、目標の立て方や具体例を解説

 2026.06.03  AJS株式会社

定性目標

本来、人事評価では、『売上〇〇万円』『案件数△△件』のように、数値で明確に表せる定量目標だけで評価できれば、評価する側・される側の双方にとって分かりやすく、公平性も担保しやすいと言えます。

しかし、実際の職場では、従業員の価値や組織への貢献は必ずしも“数値だけ”で測れるものではありません。

たとえば、チームへの働きかけや主体的な行動、部門間の連携促進、顧客との信頼関係の構築など、企業にとって重要でありながらも数値化が難しい領域が数多く存在します。

こうした“数値では表しきれない価値”を適切に評価するために用いられるのが、「定性目標」です。

とはいえ、「定性目標はどう立てればよいのか分からない」「評価の基準が曖昧になりやすいのではないか」と悩む方も少なくありません。

とくに、部下の半期・年間目標を設定する立場にある管理職にとっては、定性目標の考え方や設計方法を理解していないと、適切なアドバイスや目標合意が難しくなる場面もあるでしょう。

そこで、こちらの記事では、人事評価における定性目標の基本的な考え方から、定量目標との使い分け、実務で活用できる目標の立て方、すぐに活用できる書き方の具体例まで解説します。

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 定性目標とは 

定性目標 画像2

定性目標とは、数値や数量で明確に表せない目標のことを指します。

具体的には、従業員の行動や能力、仕事への姿勢、組織への関わり方、顧客との信頼関係といった『数値化が難しい領域』に関する評価指標のことです。

定量目標が実績や成果を評価する目標であるのに対し、定性目標は“成果に至るまでの行動やプロセス、従業員の行動がもたらした価値を評価する目標”として位置づけられます。

定性目標の達成に向けて従業員一人ひとりが努力することで、従業員自身が目指す理想像に近づくだけでなく、企業が求める人材像の育成にもつながる点が大きな特徴です。

また、定性目標は単独で用いるのではなく、売上などの定量目標と組み合わせて設定されることも多く、行動の質と成果の両面をバランスよく評価する際に活用されます。

 定性目標のメリット 

・会社が求める人物像を明確にできる
定性目標は、会社が必要とするスキルや能力、人物像、行動の質を言語化して設定します。
そのため、数字だけでは明確にできない『会社が求める従業員の理想像』を具体的な目標として従業員に共有できるようになります。

・成果の裏側にある課題を発見できる
成果だけを見る評価では見えにくい課題も、プロセスに注目する定性目標を設定していれば把握しやすくなります。
成功/未達成の背景にある従業員の行動や判断を振り返ることで、次の成果につながる改善点を発見しやすくなります。

・数字にならない貢献を適切に評価できる
仕事への姿勢や責任感、協調性、主体性といった数値化が難しい貢献を評価できる点も、定性目標の大きなメリットです。
こうした評価が可能になることで、人事評価への従業員の納得感が高まり、上司と部下の信頼関係の構築やモチベーションの維持にもつながります。

 定量目標との違いについて 

人事評価における目標は、大きく「定量目標」と「定性目標」の二つに分けられます。

定量目標とは、『売上高の増加』『生産量の向上』『市場シェアの拡大』など、具体的な数値を用いて設定する目標を指します。

数値として達成度を明確に測定できるため、評価の客観性が高く、進捗管理もしやすいという特徴があります。

一方、定性目標は、数値化が難しい個人の能力や行動の質、仕事への姿勢、組織への関わり方などを評価するための目標です。

数値として測定することは難しいものの、組織の成長や成果の土台を支える重要な要素となります。

つまり、定量目標は『成果を測る』指標、定性目標は『成果に至るまでの行動やプロセスの質を評価する』指標と整理できます。 

 定性目標と定量目標の使い分け 

適切な目標設定・目標管理を行うためには、定量目標と定性目標をバランスよく設定することが重要です。

どちらか一方に偏るのではなく、業務の性質や目標達成までの期間に応じて両者を使い分けることで、実態に即した評価が可能となります。

たとえば、営業職や生産部門などは、売上高や契約件数、生産量といった成果を“数値として把握しやすい”ため、定量目標による評価が最適です。

一方で、バックオフィス部門などは、チームワークの向上、組織マネジメントへの貢献といった“数値化が難しい業務”を担うことが多く、定性目標による評価が適しています。

他にも、具体的な成果が求められる短期目標では「定量目標」、人材育成や業務の仕組み化といった中長期的な目標では「定性目標」が有効です。

 
 
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 定性目標の立て方 

定性目標 画像3

定性目標は、単に抽象的な能力や理想像を掲げるものではなく、『期待する行動』や『役割』を具体化することで初めて評価に活用できる目標になります。

とくに、管理職が部下と半期・年間目標をすり合わせる場面では、定性目標の立て方を理解しておくことが欠かせません。

こちらでは、評価の納得性と実効性を高めるために押さえておきたい、定性目標の立て方のポイントを解説します。

 「会社が求める人物像」を明確にする 

定性目標とは、単なる努力目標ではなく、企業として期待する役割や行動を具体化したものです。

定性目標を適切に設定するためにも、「会社が求める行動や能力」を明確にすることからはじめましょう。

以下のような観点から整理していくと効果的です。
・どのような行動を期待しているのか
・どのような能力を伸ばしてほしいのか
・組織の中でどのような役割を担ってほしいのか

企業として期待する役割や行動が曖昧なままでは、評価基準も曖昧になり、本人にとっても取り組む方向性が分かりにくくなってしまいます。

たとえば、『主体性を発揮する』という抽象的な表現ではなく、『自ら課題を発見し改善提案を行う』といったように、期待する姿を具体的に言語化することで評価可能な目標として機能します。

 抽象的な目標ではなく「行動」に分解する 

定性目標を設定する際によく見られるのが、主体性を高める/マネジメント力を向上させるなど、“抽象的な能力名で目標を設定するケース”です。

しかし、このような書き方では評価基準が曖昧になり、評価する側・される側の双方にとって達成度の判断が難しく、結果として、人事評価の納得感が下がる要因にもなりかねません。

そのためにも、

・その能力が発揮されている状態とはどのような行動か
・どのような変化を期待しているのか

具体的な行動レベルまで定性目標を分解することが重要です。

たとえば、『担当業務における課題を自ら整理し、改善案を提案し、実行まで主体的に進める』といった“目指す状態”を行動として示すことで、評価の観点を共有しやすくなります。

 「達成基準・評価基準」を決めておく 

定性目標は“数値化が難しい目標”であるとはいえ、達成したかどうかを判断できなければ人事評価には活用できません。

そのため、定性目標を設定する際は、あらかじめ「達成基準・評価基準を決めておく」ことが重要です。

・どの状態になれば達成とするのか
・どの行動が確認できれば達成とするのか
・どの程度できれば評価対象になるのか

といった基準を事前に整理しておくことで、評価者と被評価者の間で評価の認識のズレを防ぎ、評価の納得性と再現性を高めることができます。

例)週次ミーティングにおいて、進捗・課題・対応状況が整理された状態で共有されていること

といったように、“実際に確認できる変化”を達成基準として設定することで、定性目標であっても評価の公平性を確保しやすくなり、被評価者にとっても目標達成のイメージが具体的になります。

 定性目標に「補助的な数値」を入れてもよい 

定性目標は、必ずしも完全に非数値である必要はありません。

むしろ、期間や回数といった「補助的な数値を取り入れる」ことで、評価の客観性を高めることができます。

たとえば、

・月1回の個別面談を実施する
・半年以内に業務マニュアルを整備する
・四半期内に運用改善を定着させる

といったように、行動の頻度や期限を明示することで、目標の進捗を確認しやすくなり、評価者と被評価者の双方にとって達成基準が共有しやすくなります。

 定量目標とのバランスを考慮する  

定量目標は成果を客観的に測る指標として機能し、定性目標は成果に至るまでの行動や成長の方向性を示す役割を担います。

役割の異なる2つの目標をバランスよく組み合わせることで、より実効性の高い目標管理が可能になります。

たとえば営業職の場合ですと、

『売上〇〇万円の達成』(定量目標)
   +
『顧客課題を深く把握した提案型営業を実践する』(定性目標)

と設定することで、成果と行動の両面から評価が可能になります。

定量目標で成果を測り、定性目標で行動や成長の方向性を示すという役割分担を意識することで、従業員の納得感を高めながら、組織として求める人材育成にもつながります。

 

 (職種別)定性目標の具体的な書き方 

 

定性目標を実際に設定する際、抽象的な表現になってしまうと評価基準が曖昧になり、目標管理として機能しなくなる可能性もあります。

そのため、次の5つの要素に沿って整理すると、具体的で評価しやすい定性目標として設定しやすくなります。

定性目標の基本の型(5つの要素)

要素

内容

何のために(目的)

なぜその目標に取り組むのか

誰に対して(対象)

誰の状態を変えるのか(部下・チーム・部署など)

どんな行動を(具体行動)

どのような取り組みを行うのか

どのレベルで(到達状態)

どのような状態になれば達成といえるのか

何を証拠にするか(確認方法)

何をもって達成を判断するのか

ここからは、定性目標の基本の型をもとに、職種別の定性目標の具体的な書き方を紹介します。

 営業職の場合 

営業職では、売上や受注件数といった定量目標に加えて、「提案の質」「関係構築力」「顧客理解力」などのプロセス面を定性目標として設定することが重要です。

これにより、短期的な成果だけでなく、中長期的な営業力の強化にもつながります。

定性目標

具体的な書き方・例文

顧客課題の把握力の向上

顧客の課題理解を深めるため、主要顧客に対して事前ヒアリング項目を整理したうえで月1回以上の定期フォローを実施し、把握した課題を提案内容に反映できる状態を目指す。

提案型営業の実践

顧客への提案品質を高めるため、商談前に顧客情報(業界動向・課題・過去取引履歴)を整理し、課題に応じた提案資料を作成して商談時に活用する取り組みを継続する。

既存顧客との信頼関係構築

既存顧客との信頼関係を強化するため、重点顧客に対して定期的なフォロー連絡を行い、ニーズの変化や追加課題を把握し、継続的な提案活動につなげる体制を整える。

 事務職の場合 

事務職は、売上のような定量目標を設定しにくい職種のため、業務の正確性や効率化・標準化、社内支援の質といったプロセス面を中心に定性目標を設定することが大切です。

そして、日常業務の改善やチームへの貢献が主な評価対象になります。

定性目標

具体的な書き方・例文

業務効率の向上

担当業務の効率化を図るため、日常業務の作業手順を整理し、非効率な工程を見直したうえで改善案を作成し、業務フローの見直しにつなげる。

業務の標準化/属人化の防止

業務の属人化を防止するため、担当業務の作業手順を整理し、第三者が理解できる業務マニュアルとして整備し、チーム内で共有できる状態を目指す。

社内サポート品質の向上

社内各部署からの問い合わせ対応の品質向上を目的として、問い合わせ内容を整理し、対応手順を標準化するとともに、再発防止につながる改善提案を行う。

 人事職の場合 

人事職も、事務職と同様、定量指標だけでは成果を評価しにくい職種です。

そのため、制度運用の安定性、採用活動の質、社員対応の適切さなど、組織全体への貢献度を定性目標として整理することになります。

定性目標

具体的な書き方・例文

採用活動の質の向上

採用活動の精度向上を目的として、応募者対応の流れを整理し、面接評価の観点を統一することで、候補者の適性を適切に判断できる体制を整備する。

人事制度の円滑な運用

人事制度の安定運用を目的として、制度運用上の課題や問い合わせ内容を整理し、関係部署と共有するとともに、改善点を取りまとめて運用の見直しにつなげる。

社員対応品質の向上

社員からの相談対応の質を高めるため、相談内容の傾向を整理し、対応手順を標準化するとともに、必要に応じて関係部署と連携できる体制を整備する。

 SE(システムエンジニア)の場合 

技術職は成果物の納期や不具合件数といった定量指標だけでなく、要件理解の正確さや設計品質、レビューへの貢献度、技術共有といったプロセス面の評価も重要になります。

そのため、定量目標と定性目標を組み合わせて設定することが効果的です。

定性目標

具体的な書き方・例文

要件理解力の向上

要件定義の精度向上を目的として、顧客ヒアリング内容を整理し、不明点や前提条件を明確化したうえで設計に反映できる状態を目指す。また、仕様認識のずれによる手戻り件数を前年度比20%削減する。

開発品質の向上

開発品質の安定化を目的として、担当工程における確認ポイントを整理し、レビュー観点を明確化するとともに、ミスの未然防止につながるチェック手順を整備し、担当案件における不具合発生件数を月3件以内に抑える。

技術知識のチーム共有

チーム全体の技術力向上を目的として、担当業務で得た技術知見や対応事例を整理し、共有資料として展開するとともに、月1回以上の定期的な情報共有の機会を設ける。

 

定性目標の評価と対話の質を高める
人事評価システム「P-TH/P-TH+」 

定性目標は、人事評価の納得性を高めるためにも欠かせません。

その一方で、評価シートの回収や集計、一覧表の作成といった運用作業に時間がかかり、本来注力すべき面談やフィードバックの時間が十分に確保できないという課題も少なくありません。

評価業務を適切に機能させるためには、こうした管理作業を効率化し、評価者が対話に時間を使える環境を整えることが重要です。

そこで有効なのが、慣れ親しんだExcelの評価シートをそのままシステム化できる人事評価システム「P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)」。

P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)を導入しても、これまで使用してきた評価シートや評価フローを変更する必要はないため、システム化に伴う制度の再構築や、従業員への教育、問い合わせ対応といった手間が最小限で済み、導入後の運用だけでなく導入時の負担をも大きく軽減することができます。

また、『1on1機能』も標準搭載されているため、進捗確認や課題共有、1on1ミーティングやフィードバックの記録を通じて、定性目標の達成に向けた継続的な支援を行うことができます。

定性目標をより公正に評価し、評価制度を“形だけで終わらせない”ためにも、評価業務の効率化と対話の質を両立できるP-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)は効果的といえるでしょう。

 まとめ 

人事評価における定性目標は、売上や件数といった数値だけでは測れない行動やプロセス、組織への貢献を評価するために重要な役割を果たします。

抽象的な表現ではなく、期待する行動や達成基準を具体化し、定量目標とバランスよく組み合わせて設定することが、評価の納得性と実効性を高めるポイントです。

本記事で紹介した定性目標の立て方や書き方の具体例を参考に、自社の評価制度や職種に合わせた定性目標の設定にお役立てください。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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