うつ病で休職。メンタル不調の社員への対処法と正しい人事評価

 2022.03.23  AJS株式会社

働く人にとって、メンタル不調は特別なことではなく誰にでも起こり得ることです。しかし、うつ病で休職した従業員に対しては、どのような対処や人事評価を行うのが適切なのでしょうか。この記事では、メンタル不調時の対処法や正しい人事評価の方法を紹介します。

テレワークなどの働き方の変化で増えるメンタル不調

労働者のメンタル不調を未然に防ぐ取り組みは以前から重要な課題とされており、2015年12月からは50人以上の労働者がいる事業所に対し、労働者のストレス状況を調べるストレスチェックが義務化されました。

厚生労働省が2020年に公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事に強いストレスを感じている労働者の割合は54.2%と、2018年調査時から4%弱減少したものの、依然として高い水準で推移しています。また、昨今の新型コロナウイルスへの感染対策としてテレワークが定着しつつある中、働き方の変化によって抑うつや睡眠障害といったメンタル不調に陥る人も増えています。
テレワークでメンタル不調となる人の多い主な理由の1つは、上司が部下の働きぶりや様子を把握することが困難となるために、部下の変化に早い段階で気づけないことも一つの原因のようです。

こうした人は、体調不良を自分から申告することができず、いつの間にか仕事のパフォーマンスが下げてしまい、うつ病などの疾病や退職、最悪の場合には自殺につながってしまうケースすら少なくありません。コミュニケーションの減少に加え、運動不足や生活リズムの乱れといった身体面での変化まで重なると、睡眠の質の低下やホルモンバランスの乱れを招き、気持ちが不安定になりやすくなります。

メンタル不調の原因とは?

テレワークにおいては、コミュニケーション不足や仕事とプライベートの区別をつけにくいことなどがメンタル不調を引き起こす一因とされていますが、従業員がメンタル不調に陥る理由にはどのようなものがあるでしょうか。以下で詳しく解説します。

人事評価につながるため不調を言い出せない

メンタルヘルスの不調を上司や会社に知られることで「人事評価や出世に悪影響が出るのでは」と懸念し、具合が悪くても職場では気丈にふるまってしまう人も少なくありません。心身の不調を「本人の性格の弱さや、気の緩みのせい」と考え、メンタルヘルスの重要性を理解していない人も多くいます。
このような理由から周りへの発覚を恐れ、上司が声をかけても、本人が頑なに不調を認めないケースもあります。メンタル不調の初期段階としては「遅刻や欠勤が増える」「業績や仕事の能率が悪化する」「ミスが目立つ」「表情が乏しくなる」といった兆候が見られます。しかしこうした変化に上司がいち早く気づき、適切な声かけと対処を行っていれば症状の悪化を防ぐことができます。

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上司と部下の間で信頼関係が構築されていなければ、部下は素直に不調を声に出すことができません。限界まで我慢した結果、長期の療養をしなければならない状態にまで追い込まれてしまうのです。

人事評価がストレスになっている

人事評価の結果やそれを判断する上司への不満がストレスの原因となっているケースもあります。例えば、人手が少ない部署で長時間の残業を何年もこなしてきたにもかかわらず、会社や上司からはそれが当たり前のこととみなされてしまう、といったケースがあります。また、本人としては評価に納得がいかなくとも今回だけのことだと思って我慢していた結果、次回も低評価をつけられてしまった、というケースもあるでしょう。

こういったパターンが何度も繰り返され、頑張っても評価が上がらないことでストレスを溜め込み、やがてモチベーションの低下やうつ、適応障害といったメンタル不調を招いてしまう場合があるのです。これらのケースでは、部下の能力ではなく、上司の資質に問題があることも考えられます。部下が会社に不満を訴えても、会社側で上司の問題点に気づかなければ、メンタル不調の根本的な改善はできません。上司は部下に適切なフィードバックを行い、会社は上司に対する360度評価を実施するなど、人事評価の妥当性を判断する取り組みが求められるでしょう。

人間関係の悪化や長時間労働がメンタル不調を引き起こしている

人間関係の悪化や長時間労働は、メンタル不調を引き起こす原因の中でも最たるものです。上司や同僚との人間関係が悪いと職場の雰囲気も悪化し、ストレスを抱える従業員が多くなります。単に考え方の違いで起こる摩擦だけでなく、表面化されてないパワハラやモラハラで悩まされているケースもあるでしょう。一方、長時間労働で睡眠不足や過労状態が続くと、脳や体が十分な休息を取れないことで仕事の能率や思考力が低下し、抑うつ傾向や不安も高まることがわかっています。

予防が大事。メンタル不調を未然に防ぐための人事評価と対応策

それでは、メンタル不調を未然に防ぐために会社にはどのような対策が求められるでしょうか。ここからは、人事評価で気をつけるべきポイントを紹介します。

風通しのよい職場で気軽に相談できる環境を作る

メンタル不調の予防策の1つ目は「風通しのよい職場環境で気軽に相談できる環境を作ること」です。周囲が部下の異変に気づくことも大切ですが、不調のサインが現れる前に部下から上司へ自発的に相談しやすい関係性を築いておく必要があります。

メンタルの不調を抱えた従業員の周りでは、様子がおかしいことに気づいていながら誰も声をかけず、「本人がある日いきなり医師の診断書を持って休職を願い出てくる」というパターンは少なくありません。こうした現状を改善していくためには、部署だけでなく会社全体でメンタル不調の予防に取り組み、全従業員でメンタルヘルスへの理解を高めることが大切です。

独善的にならないよう部下の気持ちになって考える

メンタル不調の予防策の2つ目は、「独善的にならないよう部下の気持ちになって考える」ことです。メンタル不調を抱える従業員に対し、どうしていいかわからず放置してしまうのも問題ですが、上司が独善的な対応で解決しようとするのも避けたいところでしょう。

本来であれば本人が直接相談に来てくれるとベストですが、上司からも声をかけて産業医面談や医療機関の受診を促し、必要に応じて休職させるなどの対応を取らなければなりません。

会社や上司が適切な対処を行わず、さらなる状態の悪化を招いてしまった場合、会社の安全配慮義務違反として損害賠償を請求される場合もあります。特に精神論を訴えて面談で発破をかけたり、「この程度で」などと上司の価値観で判断したりする行為は絶対にNGです。

メンタルヘルスの正しい知識に基づき、部下の気持ちになって、かける言葉や取るべき対処を考えましょう。

フィードバックを大切にする

メンタル不調の予防策の3つ目は「従業員のフィードバックを大切に検討すること」です。人事評価に関する不満やストレスの大半は、人事評価に対する適切なフィードバックがなされないために生じます。上司の評価が部下の自己評価を下回っていた場合でも、フィードバックで評価基準や理由をきちんと説明し、今後の課題や目標が明確になれば、部下としても結果に納得しやすくなります。

また、フィードバックを行うのは上司の責任ですが、部下からもフィードバックをしてほしいと上司に働き掛けることで、人事評価問題の解決につながる機会になります。したがって会社としては、管理職と一般の従業員の双方にフィードバックの重要性を理解させることが必要です。

メンタルが不調な従業員な従業員の正しい人事評価とは

メンタル不調を理由に人事評価で低評価をつけたり、減給したりすることは、労働契約法で定められた公正査定義務に違反する恐れがあります。したがって体調不良といった正当な理由で欠勤している従業員や休職中の従業員は、別途社内規定を儲けるのが一般的です。
中には休職中の従業員に対して自動的に一定の評価をつける会社もあります。しかしこのケースでは、出勤していない従業員よりも、努力したにもかかわらず何らかの事情で成果につながらなかった従業員の方が低評価を受ける場合があります。働いている従業員のモチベーションを維持するためにも、休職者の人事評価や給与査定は休職前の実態を基準とし、不公平感が生じないよう配慮すべきでしょう。

まとめ

テレワークの普及によって働く環境が変わり、精神面のバランスを崩す人が増えています。それでも企業側で、従業員が悩みを相談しやすい環境を整備し、上司との信頼関係を築きやすくしておけば、状態の悪化を未然に防ぐことは可能です。

人事評価ではフィードバックを徹底し、休職者だけでなく働いている従業員にも配慮した公平な評価を心がけましょう。

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