アサーション・アサーティブとは?自らの思いを真っ直ぐに伝えるスキル

 2021.08.25  AJS株式会社

ビジネスコミュニケーションでも注目されるアサーション。ビジネスにおいてアサーションスキルの高い人材は効果的なコミュニケーションが取れるため、仕事の生産性が高くなる傾向があります。そこで、社員のコミュニケーションスキル向上を目指す人事部門担当者に向けて、アサーションの意味とメリット、スキルの習得方法について詳しく解説していきます。

アサーション・アサーティブとは

近年、アサーションと呼ばれるコミュニケーションスキルの重要性が問われるようになりました。まずはアサーションの意味と、ビジネスシーンでのメリットについて紹介します。

アサーションの意味とは

アサーションとは、相手の考えを大切にしつつ、自分の主張はきちんと述べるコミュニケーションスキルです。決して相手を自分の意のままに操ったり「Yes」と言わせたりするための手法ではありません。相手の主張を全て飲み込んで、その場をやりすごす処世術でもありません。相手と同じ高さの目線にたち、その場にふさわしい言葉を選びながら、自分の意見や気持ちを正直かつストレートに表現する技術です。

アサーションの語源は、英語の“assertion”にあり、直訳すると「主張」「断言」といった強い意味合いを持ちます。しかし、コミュニケーションスキルとしての「アサーション」は語源となる“assertion”とは少し違うニュアンスを含みます。

コミュニケーションスキルとしてのアサーションは、もともとは1950年代のアメリカで、対人関係や自己表現が苦手な人に対する援助プログラムとして開発されました。その後、1970年代の公民権運動(黒人の基本的人権を要求する運動)を経て「誰にでも自分を主張する権利がある」という考えと結びつき、人間関係を促進するためのプログラムとして発展してきました。ちなみに、アサーションの代わりに「主張的な」を意味する「アサーティブ」(assertive)が使われることもあります。

アサーションのビジネス上のメリット

自分自身に合ったアサーションを習得すると、上司・同僚・部下、取引先、顧客など、さまざまな立場の人と円滑で有益なコミュニケーションが図れます。いわゆる「風通しのいい職場」になるので、互いを尊重しつつ、率直な意見を交わせるようになるでしょう。

たとえば、周りから許容量を超えた仕事を振られても「No」とは言えなかった人も、相手の立場に理解を示しつつ、険悪な雰囲気もつくらずに無理なものは「No」とはっきり伝え、代替案の提案までできるようになるでしょう。このコミュニケーションによって業務量の負担が分散され、職場に対する不満が軽減されます。また、自分の意見を通すことができるため、やりがいにもつながるでしょう。人間関係の軋轢がなくなれば、生産性の向上や業務の効率化を目指して協力関係を築くことができます。離職率が改善すれば、長期的な目線での人材育成も実現します。

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アサーションを理解するための3つのコミュニケーションスタイル

性格が異なるように、コミュニケーションのスタイルも一律ではありません。アサーションを理解するには、それぞれが自らのスタイルを把握する必要があります。コミュニケーションスタイルは以下の3つに分類されます。

アグレッシブ(攻撃的)なコミュニケーション

アグレッシブ(攻撃的)は、自分の主張を最優先させるコミュニケーションタイプです。とにかく自己主張が強く、自分の主張を通すためには悪意をともなった発言もいとわないでしょう。相手の考えや価値観を無視または軽視する傾向が強く、「要は言い負かせば勝ち」という精神的に幼いと言い換えることもできます。周囲と軋轢を生みやすく、強い言葉を発したことを後悔する側面も有しています。組織では総じて扱いに困りやすいコミュニケーションスタイルです。

ノン・アサーティブ(非主張的な)コミュニケーション

ノン・アサーティブ(非主張的な)は、アグレッシブ(攻撃的)とは対照的なコミュニケーションスタイルです。自分の考えを持っていても主張は控えめ、もしくは苦手としています。意見を聞かれてもはっきりとは言わず、あいまいな表現にとどめることが多いのも特徴です。優しく穏やかである反面、自己主張が苦手なため、ストレスをため込む傾向があります。また、他者の考えを優先するので、責任感が育たず、言い訳も多くなりがちです。積極性に欠けることから、組織の一員としてアグレッシブなコミュニケーションスタイルとは180度違った扱いにくさがあります。

アサーティブ(攻撃的でありつつも非主張的な)コミュニケーション

アサーティブなコミュニケーションは、相手の主張を自分の意見と同じように尊重できるバランスのとれたスタイルです。アグレッシブとノン・アサーティブの中間的な位置付けで、それぞれの長所を兼ね備えている点が特徴です。

アサーティブスタイルの人は、話し合いの席で自分の考えを率直に述べつつ、相手の気持ちにも共感しながら、お互いにとって適切な結論を導きだします。その場の雰囲気に合わせて、適切な言葉を選んだ表現もできるので、理想的なコミュニケーションの担い手と言えます。

アサーションを身につける方法

仕事を進めるうえで、アサーションは必要不可欠なコミュニケーションスキルです。アサーションを身につけるために以下の方法を取り入れてみましょう。個人の性格そのものを変えるのではなく、これまでとは違う「伝え方」「表現の仕方」を習得する点に注目してみてください。

「私」を主語にする

「あなたは○○です」という表現のように相手を主語にすると、言われたほうは自分が責められているような印象を持ってしまいがちです。主語を自分にして「私は○○と思う」「私は○○してほしい」という言い方に変えれば、相手を傷つけずに自分の考えを伝えることができます。

たとえば、事故防止のために毎週末に報告書の提出を課しているチームがあるとします。なんらかの事情で提出が滞っている部下に対して、上司が「あなたは今週の報告書を提出しましたか?」と言うと、部下は圧力を感じることでしょう。

一方、「いつ報告書を提出できるかを報告してくれると私が助かる」という表現であれば、お互いに嫌な気持ちにならずに「報告書を作成する」という業務をスムーズに遂行できます。特にアグレッシブ(攻撃的)なコミュニケーションスタイルの人にとっては、「私は○○です」「○○と思う」という表現方法を身につけることが、よりよい人間関係を築く第一歩です。

感情や気持ちを伝える表現を心がける

仕事上でも感情や気持ちを相手に伝える必要があります。ちょっとしたやりとりの際に、自分の気持ちをつけ加えることで、我慢しすぎない円滑な人間関係が築けます。

たとえば、「この案件の処理やっておいてくれる?」と仕事を先輩社員に依頼されたとします。本当は無理なのに「わかりました」と安易に引き受けてしまうと、ストレスを感じますし、チームの生産性も低下しかねません。「半分は他の方にやっていただけると助かります」「他の案件も抱えているので時間をいただきたいのですが、可能でしょうか?」と答えてみましょう。その場の雰囲気を考えた言葉と「助かります」「困る」といった気持ちを表現することで、先輩は後輩の置かれた状況を理解できます。半分を他の人に割り振ることで、案件全体がチーム内で処理されれば、生産性は低下しません。

特にノン・アサーティブ(非主張的な)コミュニケーションスタイルの人が、この手法を取り入れると、上司や先輩など目上の立場の人に自身の状況を理解してもらいやすくなるでしょう。チーム内のコミュニケーションがスムーズになり、人間関係によるストレスの軽減が期待できます。

否定ではなく代替案や肯定する言葉を使う

上司や同僚からの頼まれごとに対して「無理です」「できません」と否定の言葉だけで答えてしまうと、相手の主張をないがしろにしてしまうことになります。かといって安易に請け負ってしまうと業務全体が滞ってしまったり、ストレスを感じたりしてしまう可能性があります。相手の要求を飲めない状況に置かれている場合は、代替案を出す方法を身につけましょう。

たとえば、「明日の午前中までに資料をまとめておいてくれないか?」という上司の依頼に対し、「できません」「それは無理です」と部下が突っぱねてしまうと、上司には「否定された」「協調性がない」など負の感情が芽生えてしまいかねません。上司の重視している主張は「資料をまとめてほしい」という点にあるので、「明日午前は難しいのですが、午後3時でしたらなんとなります。いかがでしょうか」などと具体的な代替案を提示すれば、上司の主張を受け止めつつ自分の主張も通すことができます。

アサーションスキルを駆使すると、お互いが気持ちよく仕事ができるようになります。結果として個人のモチベーションが高まり、生産性の向上、ひいては企業の業績アップにもつながるでしょう。

まとめ

ビジネス環境が変化しても、仕事をするうえで人と人とのコミュニケーションは欠かせません。アサーションは、円滑なコミュニケーションを取るために有効なスキルです。相手を尊重しつつ自分の意見を率直に伝えるスキルをそれぞれが身につければ、業務の遂行がスムーズになり、企業としての成長も期待できます。アサーションを身に付ける取り組みを積極的に進めてみてはいかがでしょうか。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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