テレワークの人事評価について考える。重要性と押さえるべきポイントを解説

 2022.01.12  AJS株式会社

テレワークは新しい時代に即した働き方として大きな注目を集めていますが、まだまだ課題も山積みです。とくに大きな課題となっているのが人事評価制度の在り方でしょう。そこで本記事はテレワーク環境における人事評価制度の重要性やポイントについて解説します。

テレワークと従来の働き方との違い

まずはテレワークの概念や従来のワークスタイルとの相違点について見ていきましょう。テレワークとは、「遠い」や「遠隔」と訳される「tele」と、「仕事」や「作業」を意味する「work」をかけ合わせた造語であり、オフィスから離れた場所で働くワークスタイルを指します。テレワークにはいくつかの種類があり、「在宅勤務」や「モバイルワーク」、あるいは「サテライトオフィス勤務」など、働く場所によって分類されます。

テレワークと従来の働き方との決定的な違いは、ICT(情報通信技術)を駆使して遠隔地で業務に取り組める点です。近年の情報機器や通信インフラの驚異的な進歩・発展によって、時間や場所を選ばない労働環境の構築が可能になりました。IT環境さえ整備されていれば自宅やカフェ、あるいはコワーキングスペースなどで、多様かつ柔軟な働き方を実現できるのが、テレワークの大きな特徴でしょう。

もう1つ、テレワークと従来の働き方の大きな違いとして、オフィスコストが挙げられます。オフィスへの出社が不要になることで、デスクやチェアといったオフィス家具、ペンや用紙などの事務用品、エアコンや照明といった光熱費など、さまざまなオフィスコストの大幅な削減が可能です。労働環境を構築するために大きなオフィスビルを用意する必要もありません。従業員の観点から見れば、通勤が不要になるという点も従来のワークスタイルとの大きな違いでしょう。

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テレワークの導入にあたり人事評価について考える重要性

近年、テレワークを導入する企業が増加傾向にある理由は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きいと考えられます。コンサルティングファームであるパーソル総合研究所の調査によると、2020年3月時点のテレワーク実施率は13.2%だったのに対し、緊急事態宣言発令後の4月には27.9%と約2.1倍にまで上昇しています。

こうして、多くの企業が感染症対策の一環としてテレワークを取り入れたものの、そこにはさまざまな課題や問題が立ち塞がりました。例えば、オフィス外で業務に取り組むことによるセキュリティリスクや、遠隔勤務による業務連携の遅滞などが挙げられます。そして、とくに重要な課題となっているのが「人事評価制度」です。ここからは、テレワーク環境で生じる人事評価制度の課題について見ていきましょう。

管理方法の変化への対応

記事冒頭で述べたように、テレワークと従来の働き方との大きな違いは、ICTを駆使して遠隔地で業務に取り組む点です。労働環境働が大きく変われば、従業員の管理方法も変化します。

例えば、テレワーク環境ではオフィスのように従業員と直接的なやり取りができません。業務効率の低下を招くこと自体も大きな問題ですが、それ以上の課題は「従業員の勤務態度や労働状況が見えなくなること」です。

テレワーク環境では、従業員の業績貢献度が測りにくくなるため、公正かつ公平な人事評価が非常に困難です。従業員の貢献度は単純な目に見える数字だけでは測れません。例えば、アイデアを生み出したり、メンバーをサポートしたり、高いコミュニケーションスキルによってチームの輪を保ったりと、間接的な業績貢献度も存在します。しかし、そういった従業員の労働状況や業績への貢献度は見えにくいため、つい成果主義に偏ってしまうことが多いでしょう。

成果主義は実績に報いることができるため、従業員のモチベーション向上が期待される一方で、場合によっては目先の成果にとらわれて中長期的な視点が疎かになるというというリスクもあります。また、社内では業績貢献度を数値化しやすい部門ばかりではないため、公平な人事評価が難しいという点も成果主義のデメリットと言えるでしょう。
適切な人事評価制度の整備は、従業員のモチベーションアップと企業へのエンゲージメントの向上に欠かせません。テレワーク環境の業務効率や労働生産性を最大化するためには、人事評価制度の確立も必須と言えるでしょう。

手続きの円滑化

チャットツールやWeb会議サービスの普及によって、遠隔地でも手軽に業務上のコミュニケーションが取れる時代になりました。しかし、人事評価に必要な書類の提出や承認といった一定の手続きが必要な業務の場合、テレワーク環境では滞りや遅れが発生することもあるでしょう。日本では、まだまだ紙文化が根強く残っています。雇用契約や勤怠、給与といった、従業員の生活に直結するような申請・承認・決裁が必要なワークフローのデジタル化はなかなか進んでいないのが現状です。

申請から決裁へと至るプロセスには「申請書の作成」→「申請書を提出」→「上長の承認」→「管理部門へ提出」という複数のステップがあります。労務管理や人事評価についての書類チェックや決裁が遅滞することで、人事評価をスムーズに運用できない恐れもあります。

さらに、テレワーク環境ではメールやチャットツールでのやり取りが主体になるため、文面から意図を正しく汲み取れず、各種手続きや業務に支障をきたす可能性があります。文章主体のコミュニケーションでは意思疎通に齟齬が生じ、ミスを誘発する原因となり得るでしょう。テレワーク環境における公平な人事評価制度を整備するためには、いかに申請・承認・決裁のワークフローを円滑化できるかがポイントとなります。

適切な評価の実施

テレワークと従来の働き方では労働環境が大きく違うため、これまでと同様の人事評価制度では不都合が生じる可能性があります。そのため、テレワークを主たる勤務形態とするのならば、従来のワークスタイルとは異なる就業規則や勤務規程を整備しなくてはなりません。労働環境の抜本的な見直しを実施し、その上でテレワーク環境に最適化された人事評価制度を導入する必要があるでしょう。

例えば、テレワークでは上司と部下が直接関わる機会が激減し、勤怠管理が困難になるため、目に見える成果にとらわれがちになるというのは先述した通りです。そのため、「MBO(目標管理制度)」を取り入れたり、「KPI(重要業績評価指標)」を重視したりと、従来とは異なる視点での人事評価が必要になります。また、生産部門や営業部門などは成果を数値化しやすい職種ですが、総務部門やシステム管理部門などは成果を定量化しづらいため、部門ごとに異なる評価基準を設けるといった施策も重要でしょう。

テレワークで押さえるべき人事評価のポイント

ここからは、テレワーク環境において押さえるべき人事評価のポイントについて解説していきます。

コミュニケーションの機会創出

テレワーク環境を整備する上で重要となるのが、コミュニケーション機会の創出です。先述したように、テレワーク環境ではメールやチャットツールでのやり取りが主体になるため、相手の意図を汲み取れず、業務に悪影響を及ぼす可能性があります。それが原因でマイナス査定につながるようでは、正しい評価基準とは言いにくいでしょう。だからこそ、オンライン上での定期的な会議や進捗報告を実施して、コミュニケーション機会を積極的に創出していくことが必要です。

適切な評価方法の採用

テレワークと従来のワークスタイルは労働環境も大きく違うため、これまでとは異なる評価体制の整備が求められます。従来の人事評価方法をそのまま踏襲した場合、正しく機能しない可能性が高いでしょう。例えば、企業の理念や価値観に基づく行動規範の実践度合いを評価する「バリュー評価」や、数値や記号を使わない「ノーレイティング」といった評価制度を取り入れるのも有効な施策です。

目標設定の再考

テレワーク環境における人事評価制度を整備するためには、従来とは異なる目標設定の基準が必要です。ビジネスに求められるのは結果ですが、ゴールへと至る中間指標となる「KPI(重要業績評価指標)」の設定も重要な役割を担っています。

どのような物事も過程を経ずして結果は出ません。適切な評価を下すためには「KGI(重要目標達成指標)」だけを見るのではなく、わかりやすさや明確さを意識したKPIを設定することが必要でしょう。その際は管理者が独断で決定するのではなく、チーム全体でコミュニケーションを取りながら策定しましょう。

プロセスの見直し

テレワーク環境では勤怠管理の難しさやコミュニケーションの問題などから、人事評価のプロセスに支障が出る可能性があります。そのため、評価プロセスそのものの見直しも検討すること大切です。

例えば、成果主義に偏っている企業であれば努力主義やプロセス評価を取り入れ、中長期的な評価プロセスを構築する必要があるでしょう。反対に、年功序列や職務主義に偏っている企業であれば、目標設定の達成度合いを評価する「MBO(目標管理制度)」を導入し、実力主義を取り入れて評価基準のバランスを保つことが重要です。

評価者の教育

評価制度の設計は、人事業務のなかでも難易度の高い仕事の1つです。人事評価は直属の管理職による意向に大きく左右されるため、評価者の教育が重要な鍵となります。テレワーク環境と従来の労働環境の違いを明確に理解し、公平かつ公正な評価を下せるスキルがなければ、人事評価制度は正しく機能しません。したがって、権限の大きな役職であるほど、テレワーク環境に関する理解と評価制度への深い知見が求められます。

ITシステムの活用

テレワーク環境の人事評価制度を整備するためには、勤怠管理システムやワークフローシステム、あるいは人事評価システムといったITソリューションの活用が欠かせません。勤務体制そのものがデジタル化しているため、管理体制や評価体制も同様にデジタルシフトが求められます。そして、従来の古い価値観に基づく評価体制から脱却し、デジタル技術を活用して新たな人事評価制度を構築する必要があるでしょう。

まとめ

どれだけテクノロジーが進化・発展してもビジネスの土台にあるのは人間であり、事業活動の中心は人的資源である従業員です。そして、従業員の労働生産性を最大化するためには、適切な人事評価制度の確立が不可欠と言えるでしょう。テレワークは従業員の労働状況や業績貢献度が見えづらく、人事評価も困難を極めます。テレワーク環境の人事評価を最適化したいならば、人事評価システム「P-TH/P-TH+」がお役に立てるかもしれません。既存のエクセル評価シートをそのままに評価業務の効率化を図れるため、時勢に合わせた対応に時間を取ることが可能になるでしょう。

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