テレワークの広がりは、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方や、昨今の感染症予防に寄与するなど大きなメリットをもたらしています。一方、従来通りの評価基準では、従業員の人事考課がしづらいといった課題も見えてきました。そこで本記事では、テレワーク環境下の人事考課について押さえておくべきポイントを紹介します。
テレワーク環境下における人事考課の課題
まず、テレワーク環境下の人事考課では、具体的にどのような課題が浮き彫りになっているのでしょうか。以下では、主な3つの課題について解説していきます。
勤務態度の評価がしづらい
テレワークの最大の特徴は、自宅やサテライトオフィスなど、従業員が働きやすい環境で業務を行えることです。そのため、従来のようにオフィスに出向いて働くことが少なくなり、場合によっては上司や同僚と顔を合わさず仕事することもあります。しかしこのような働き方が定着した結果、部下の勤務態度などを目で見て評価することは難しくなったのです。
仕事の成果報告やテレワークで活用するツール上から、業務の動きはある程度確認できるかもしれません。しかし、成果を生むに至った細かいプロセスや、日々の業務への姿勢といった部分を人事考課に反映することが厳しくなっています。これらの評価は人事考課に限らず、人材育成の方針を定めるうえでも重要であるため、テレワーク環境でも適切に人事考課できる体制の構築が急がれます。
評価方法・基準のばらつき
従来のような対面で業務を行う場合では、上司と部下との直接的なやり取りの中で、勤務態度について問題なく評価できました。しかし、テレワークでそのようなやり取りが格段に減ったことで、別途面談を設ける必要が出てきたり、少ない機会だけを頼って評価しなければならなかったりするケースが増えています。
こうした状況では、評価者によって評価するための材料や方法、基準点などにばらつきが生じてしまう可能性があります。また、テレワーク下ではそれらのばらつきを是正する機会も少ないため、評価方法や基準のばらつきが常態化する恐れもあります。
よって、テレワークに適した人事考課の体制を再構築するとともに、従来の評価方法や基準も業態に合わせて見直す必要があります。例えば、特に細分化している評価項目に「電話応対がきちんとできる」がある場合、テレワークでは電話応対だけでなくメールやWeb会議での態度も含め、評価基準として取り入れていく必要があるでしょう。
コミュニケーションの課題
テレワークにおける情報共有や業務内容のやり取りは、チャットや電話などのコミュニケーションツールが主体となります。ツールを通してのやり取りでは、これまでのように表情や態度から判断していくことが難しいため、人事考課を行うのは非常に難しくなってしまいます。しかし逆にいうと、テレワーク環境下でコミュニケーションの質向上に取り組むことは、人事考課のしやすさにもつながってくるでしょう。
テレワーク環境下における人事考課制度構築のポイント
働き方改革の推進や新型コロナウイルスによって広がりつつあるテレワークは、今後も人材不足を補う手段として、また働き方の多様化への対応策として、より需要が高まると見られています。そのため、テレワークを一時的なものではなく新たな働き方として捉え、それに適した人事考課制度を構築する必要性が高いでしょう。ここでは、制度構築におけるポイントについて解説します。
評価項目の明確化
テレワークにおいては、一目でわかりやすい仕事の成果や実績などだけが、どうしても評価の判断材料になってしまう傾向にあります。そのため、テレワークに合わせた評価項目を新たに設置したほうがよいでしょう。前述の例のように、電話対応だけ見ていたものをWeb会議の態度も含めて評価するなど、細分化している評価項目がテレワークをきちんと評価できるものかどうか見直してください。
具体例を挙げると、与えられた業務をどの程度のスパンで遂行できるか判断する「業務スピード」や、従業員同士がチャットツールなどでやり取りする際、滞りなくコミュニケーションを取れているかを判断する「レスポンス」など、定量評価できるものが新たな項目となり得ます。
目標管理制度(MBO)の導入
「目標管理制度(MBO)」とは、従業員一人ひとりが自ら目標と、それを達成する基準などを設定する組織マネージメント手法のことです。ピーター・ドラッガー氏が提唱したもので、目標を企業の経営目標と連動して考える仕組みを取ることにより、従業員のモチベーションや潜在的な能力を引き出せると考えられています。
この制度を導入すれば、上司と部下が目標を共通認識としているため、定期的にトラックし目標達成に向けた進捗を確認することが可能です。また、人事考課する段階でも、目標の達成度を1つの指標として取り入れられます。
人事評価プロセスの見直し
人事考課は上司や各部門の管理者、人事担当者など複数の人が関わり、記入した人事情報を基に意見交換や、場合によっては従業員の適材適所への配置転換までも行います。テレワークによって見直さなければならないのは、評価方法や基準だけではなく、これらの評価プロセスの効率化についても同様です。
テレワークで顔を合わせる機会が減っていく中、これまで同様にしっかりと人事考課を進めていくためには、例えばITシステムの導入によりデータを可視化したり、簡易的かつ定量的な業務プロセスとなるように構築し直したりなど、最適な状態で進められる体制づくりが不可欠です。
ただ、あまりにも大幅に一新すると、かえってプロセスが煩雑化し滞ってしまう可能性があります。これらを考えるうえで必要な視点として、「今あるデータや方法をどのように活かすか」ということも押さえておくべきでしょう。
まとめ
テレワーク環境の人事考課では、業態に即した評価方法や基準を改めて構築する必要があります。取り組むべきポイントとして、評価項目の見直しや目標制度の導入、プロセスを最適化するシステムの導入などが挙げられます。
人事評価システム「P-TH/P-TH+」は、これまで使用していたExcelの評価シートとWebとの連動により、人事考課のシステム化が可能なツールです。人事考課プロセスの最適化を検討されている方は、ぜひご検討ください。
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