
新しく入社した社員が早く職場に馴染み、戦力として活躍できるようにするために欠かせないのが「オンボーディング」。
近年は中途採用も増え、人材の流動性が高まる中、入社後の定着率向上や早期離職の防止、企業文化への理解や業務の早期キャッチアップを目的に、多くの企業がオンボーディングを強化しています。
しかし、「オンボーディングは具体的に何をするのか」「従来の研修とはどういう違いがある?」「成功している企業の事例を見てみたい」など、疑問を持つ担当者も少なくありません。
そこで、こちらの記事では、オンボーディングの目的や成果につなげるポイント、オンボーディングを導入した企業の成功事例など、わかりやすく解説します。
これから自社にオンボーディングを導入しようと検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
オンボーディングとは

オンボーディングとは、新入社員を組織の一員として定着させ、即戦力人材へと育成するための一連の施策・プロセスを指します。
初期研修とは異なり、入社後の数週間から数ヶ月にわたり、計画的かつ継続的に新入社員の適応を多面的にサポートするのが特徴です。
具体的には、企業文化や価値観の理解、チームとの関係構築、実務で活躍するためのスキル習得、メンタル面のフォローなどを行います。
また、オンボーディングは、人事担当者だけでなく、同僚や上司、配属部署のチームメンバーなど、組織全体が一体となってサポートすることで、新入社員の早期戦力化や定着率向上につながります。
オンボーディングとOJTとの違い
オンボーディングと同じく、人材育成のプロセスとして例に挙げられる「OJT」とでは、どういった違いがあるのでしょうか。
OJT(On-the-Job Training)は、『実践的な能力を習得させる』ために、日々の実務を通じて、上司・先輩やOJTトレーナーが部下に必要な知識やスキルを教える教育手法です。
一方、オンボーディングは、『新入社員が組織にスムーズに適応できる』よう、業務スキルの習得に限らず、企業文化やルールの理解なども含めて総合的にサポートするプロセスを指します。
OJTとオンボーディングでは、施策を実施する目的において大きく異なります。
オンボーディングの目的
オンボーディングを実施する目的は、新入社員や中途入社社員の早期離職を防ぎ、組織への定着率を高めることです。
転職市場が活発化し、企業と従業員の関係がより流動的になった現代では、入社後のフォローを強化する重要性が高まっています。
とくに、
- 入社前の期待と実際の業務とのギャップ
- チームに馴染めない/職場の人間関係への不安
- 企業文化への適応がうまくいかない
といった要因が、早期離職の大きな原因になっていると言われています。
こうした背景から、企業は入社後の数週間~数か月にわたって新入社員を総合的に支援するオンボーディングに注目し、施策を強化するようになりました。
オンボーディングを適切に行うことで、『社員が組織に馴染めない』という課題を解決し、仕事に対する意欲も高まり、結果として『早期戦力化・生産性向上』にもつながります。
オンボーディングを実施する際のポイント

オンボーディングを効果的に実施するには、単にプログラムを用意するだけでは不十分です。
こちらでは、オンボーディングを成功へと導くために、企業が押さえておくべき重要なポイントについて解説します。
新入社員と人事担当者で、事前に密なコミュニケーションを取る
オンボーディングを成功させるためには、入社前の段階で新入社員と人事担当者が十分にコミュニケーションを取ることが欠かせません。
入社後に必要なスキルや業務内容、職場の雰囲気、求められる役割などを事前に共有することで、現場と新入社員の双方が抱く期待値のズレを最小限にできます。
期待値とのギャップが大きいと、早期離職のリスクも高まるため、入社前から新入社員とのコミュニケーションを重ねて、信頼関係を築くことが大切です。
新入社員のサポート体制を整備する
新入社員の不安を取り除き、組織に馴染みやすくするためには、相談しやすい環境づくりと、必要な情報にすぐにアクセスできる体制を整備しておくことが重要です。
たとえば、メンター制度を導入して、業務以外のことも含めて日常的にフォローしたり、1on1ミーティングを定期的に実施して、悩みや疑問を気軽に相談できる仕組みを整えると良いでしょう。
連続的な対話や積極的な声掛けは、安心感の醸成につながり、新入社員の早期離職を防ぎます。
また、業務マニュアルや社内ルール、よくある質問などを新入社員向けにまとめておくことで、「聞きたいけれど誰に聞けば良いかわからない」という状況を回避する保険になります。
他にも、部署横断でのランチ会や社長との雑談会を設けることで、新入社員は企業の価値観やコミュニケーションスタイルを間近に体感でき、組織文化の理解がより早くなります。
解決するための選択肢を複数用意することで、入社後の不安を減らし、必要な情報のキャッチアップ・スムーズなオンボーディングにもつながります。
新入社員のゴールを細かに設定する(スモールステップ法)
オンボーディングを実施する上では、大きな目標を細分化し、小さな成功体験を積み重ねていく「スモールステップ法」が効果的です。
入社間もない新入社員にとって、いきなり高いレベルの目標や成果を求められることは、大きなストレスとなる恐れがあります。
そのため、まずは『初週で把握しておくべき社内ルールや業務フロー』『入社1か月以内にキャッチアップしておきたい担当領域』『3か月以内に任せたい具体的な業務範囲』など、実務ベースで段階的にゴールを設定するのが良いでしょう。
小さな目標を一つずつクリアしていくことで、日々の達成感が生まれ、新入社員自身のモチベーション維持につながるのも大きなメリットです。
また、進捗を細かく確認できるため、人事担当者や上司、配属部署のチームメンバーも適切なタイミングでフォローしやすくなります。
【企業3社】オンボーディング成功事例

オンボーディングは、企業ごとに目的や課題が異なるため、最適な取り組み方も多様です。
実際に成果を上げている企業は、自社の状況に合わせて工夫しながら、多面的なサポート体制を構築しているという共通点があります。
ここからは、オンボーディングを導入した3社の成功事例を紹介し、どのような工夫が施されているのかを見ていきます。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、「チームワークを発揮するために必要な要素を理解し、やるべきことに前向きに取り組むことで、期待通りにチームに貢献できる」ことをコンセプトに、新卒入社メンバー向けとキャリア入社メンバー向けそれぞれに特化したオンボーディングを展開しています。
新卒入社メンバー向けのオンボーディングでは、最初の3週間で「個人の自立」と「チームワーク」の2つを軸に社会人としての土台を構築し、その後1年かけて、配属部門別研修と人事によるフォローアップを実施。
毎朝、同期や人事とコミュニケーションをとる『ザツダン』や、入社1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月のタイミングで新入社員のコンディションをヒアリングする『オンボーディングサーベイ』などに取り組んでいます。
一方、キャリア入社メンバー向けのオンボーディングでは『即戦力化』を強く求めず、6か月かけて企業文化や社内コミュニケーションへの適応をサポート。
同社長の青野慶久氏と少人数でカジュアルに交流できる『青野さんとのザツダン』や、個別に用意される『チームオンボーディングプラン』等の取り組みが特徴的です。
GMOペパボ株式会社
GMOペパボ株式会社のオンボーディング施策「ペパボカクテル」は、中途入社エンジニアの受け入れが事業部任せで会社全体の文化や横断的なつながりが育ちにくいという課題、個人の目標設計がうまくいかないという課題を背景に誕生しました。
新入社員は『どの組織に属しているのか』『誰に相談すれば良いのか』が分かりづらく、孤立や質問のしづらさが発生。これに対し、GMOペパボ株式会社は、入社後3か月間を対象に「会社・事業部・エンジニア組織」の三つの帰属意識を構築するプログラムを整備し、Slackに専用チャンネル「#pepabo-cocktail」を設け、質問・相談・歓迎をオープンに行える環境づくりを進めました。
また、入社1〜3か月の目標や意気込みを記入する「やっていきシート」で自己理解を促し、「ランチワゴン」など部署横断のランチ交流で関係構築を支援。さらに社内勉強会「ペパボテックフライデー」を通じて企業の技術文化への早期キャッチアップを支えるなど、多面的に後押しする仕組みを整えています。
参考:GMOペパボ株式会社『GMOペパボが実践するオンボーディング|3つの組織課題とその解決策を聞いてみた』
LAPRAS株式会社
LAPRAS株式会社のオンボーディングは、2020年のフルリモート移行を契機に大きな課題が顕在化しました。
オンライン中心のやり取りでは文章が素っ気なく伝わり、新入社員が『責められているのでは』『反応の正解が分からない』と不安を抱えるなど、心理的安全性が低下。
さらに雑談が自然に生まれないことで既存社員との距離が縮まらず、『誰に聞けばいいか分からない』『簡単なことでも聞きづらい』という状況が発生しました。
また、急拡大する組織の中で、社内特有の専門用語や文化が共有されず、認識のズレも課題に。
これらの課題に対し、LAPRAS株式会社は、オンラインランチやラジオ体操など“仕事以外の雑談機会”を意図的に増やして関係構築を促進。加えて、メンター・トレーナーの明確化や、メンバー紹介ドキュメントの整備、1on1での役割説明などにより『誰に・何を聞けばよいか』を可視化し、入社直後の不安を軽減するオンボーディング施策を整えました。
参考:LAPRAS株式会社『LAPRASの失敗を公開します。リモートオンボーディングの困難と改善について』
効果的なオンボーディングの実施に人事評価システム「P-TH/P-TH+」を
オンボーディングを効果的に実施する上で、新入社員の状態を継続的に把握し、必要なタイミングで適切にフォローする仕組みは欠かせません。
そこでおすすめしたいのが、使い慣れた評価シートやフローをそのままシステム化できる、人事評価システム「P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)」の『1on1機能』です。
P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)に標準装備されている1on1機能では、面談の記録や議題の設定・事前共有、次回までのアクション整理(宿題事項)をすべてシステム上で一元管理することが可能です。
これにより、『何を話したか』『どんな課題があるか』『次にどのようなフォローが必要か』などを、記録としてシステム上にきちんと残すことが出来ます。
また、1on1ミーティングの満足度や時間等の分析レポート機能により、面談内容として要望の高い議題の傾向やその変化、そして1on1ミーティングの満足度から、対応する上司へ研修を促すなどのサポートに役立てることも可能です。
定期的な1on1ミーティングを通じて、新入社員の不安やつまずきを早期に発見・解決し、離職防止につなげることができる点が大きな強みです。
『面談が形式的になりがち』『情報共有が煩雑で育成が属人的になる』といった悩みを解決し、オンボーディングの質を底上げするためにも、P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)の活用はとても効果的といえるでしょう。
まとめ
オンボーディングは、新入社員が組織にスムーズに馴染み、早期に活躍できるようサポートする重要な施策・プロセスです。
企業文化や独自ルールへの理解、職場での人間関係構築、業務スキルの習得までを、入社前後から継続的に支援することで、早期離職の防止や人材の定着率向上につなげることができます。
効果的なオンボーディングを行う上では、十分なコミュニケーションやサポート体制の整備、段階的な目標設定など、一貫した取り組みが重要です。
自社の状況に合ったオンボーディング施策を整え、新入社員がより良いスタートを切れる環境づくりを目指しましょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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