人材育成を成功させる方法や技術とは?

 2021.02.09  AJS株式会社

新たな人材育成方法の導入を検討している場合、どのような手法や特徴があるのか知りたいという人も多いでしょう。本記事では、人材育成方法の導入を検討している人材担当者に向けて、その概要やメリット・デメリットについて詳しく解説しています。

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人材育成を構成する2つの方法

人材育成を大きく分けると、「狭義の人材育成方法」と「広義の人材育成方法」に分けられます。狭義の人材育成方法とは、OJTやOff-JT、SDといった、社員の育成制度のことです。一方、広義の人材育成方法とは、人事評価制度や目標管理制度、メンター制度など、組織の制度設計を指します。よりよい人材育成をするには、どちらか一方だけを取り入れるのではなく、これら2つを掛け合わせて実行することが大切です。

狭義の人材育成方法とは

ここからは、狭義の人材育成方法について具体的に解説します。

OJT

OJTとは「On The Job Training」の略称で、新人や未経験者に対し、先輩や上司が実務を通して知識やノウハウを教える手法のことです。

OJTには、指導に当たる社員の指導力向上や、研修開催の手間や時間を省けるといったメリットがあります。また、教わる側にとってもメリットが多く、実践的に学ぶ過程で必要な知識やノウハウを効率よく身に付けられます。さらに、理解度に応じて教えるスピードを調整できたり、指導者との信頼関係も構築しやすいため、職場での円滑な人間関係を形成したりするのにも役立つのです。一通りの業務を経験しながら学ぶため、研修後は即戦力としての活躍も期待できるでしょう。

Off-JT

Off-JTとは、「Off The Job Training」の略称で、業務から離れ、座学やグループワークといった研修時間を設けて行う社員教育のことです。例えば、新入社員研修や、中間管理職を対象にしたリーダーシップ研修、特定の業務に携わる人を対象にしたエキスパート向けの研修などが該当します。

研修などを通して体系的に学べるため、知識の整理がしやすく、現場で働く上で必要となる知識の土台作りに適しています。また、職能や目的別に研修することで、通常業務で必要とされる知識よりもさらに深い知識の習得も可能です。OJTでは教育の質が指導者の力量に依存してしまいがちですが、Off-JTではそのような心配がなく、受講者全員が同じレベルの指導を受けられます。

SD

SDとは「Self Development」の略称で、日本語で自己啓発と呼びます。企業から課題を与えられるのではなく、社員の意思に応じてeラーニングや通信教育などに取り組み、スキルアップを目指す手法です。例えば、社内外のセミナーに参加したり、業務に関する資格を取得したりと、その内容はさまざまです。近頃は、SD費用を補助する制度を設けている会社も多く見られます。

SDのメリットは、選択肢が豊富なだけでなく、社員の好きな時間に取り組める点や、強化範囲を自ら設定できる点など、自由度が高いところにあります。補助対象となるSDのラインナップを豊富に揃えておけば、研修開催の必要性や費用も減るため、人材担当者の負担軽減にもつながるでしょう。

eラーニング

eラーニングとは、パソコンやモバイル機器などを用いてインターネットを利用して学習する手法のことです。どこかに集まって研修を受ける必要がないため、時間や場所の制約を受けずに学習できる点がメリットと言えます。対面の研修では講師によって質にばらつきが生じる可能性もありますが、同じ学習教材を使うeラーニングならば、全員、受ける教育レベルは同じです。イニシャルコストがかかるものの、研修を開催するために発生していた会場費や、受講者の交通費・宿泊費なども削減できるため、長期的に見てコスト削減にもつながるでしょう。

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広義の人材育成方法とは

ここからは、広義の人材育成方法について具体的に解説します。

人事評価制度

人事評価制度とは、社員の能力や営業成績、企業への貢献度といったさまざまな項目から個人を評価し、社員への処遇を決めるという手法です。社員の頑張りや成果によって給与や待遇の改善が見込めるので、社員のモチベーションや生産性向上が見込めます。また、各人の評価を明確にすることで不足しているスキルなどを把握でき、今後の人材育成へ役立つ指標にもなります。

しかし、人事制度がうまく機能しなければ、企業への不信感から、社員のモチベーションが低下したり、評価に納得できない社員から訴訟を起こされたりする可能性もあるため、基準の徹底や明確化が重要です。

目標管理制度

目標管理制度とは、各社員が目標を設定し、企業の経営目標や部署ごとの目標と結び付けながら、業績向上を目指していく手法のことです。目標設定によって取り組むべき業務が明確になるので、日々の業務効率をアップさせてくれると期待できます。さらに、自身で設定した目標に対して評価されるため、評価プロセスに透明性が生まれます。

しかし目標管理制度には、高評価を得るために目標を低く設定したり、目標から外れる業務は積極的にやらなくなったりし得る点は、デメリットです。また、目標設定に慣れていない社員にとっては、かえってモチベーションの低下につながる恐れがあります。そうした理由から、適宜フィードバックを交えながら目標達成まで導く必要があるでしょう。

メンター制度

メンター制度とは、新入社員や若手社員に対して、年齢や社歴の近い先輩社員が業務やメンタル面に関する悩みを聞いてサポートする制度です。サポートにあたる側を「メンター」、サポートを受ける側を「メンティ」と呼びます。客観的に助言ができるように、別の部署に所属する先輩社員などが、一般的にはメンターとなります。

メンター制度を活用することで、メンターは自発的に仕事に取り組むようになり、管理職になった時にも指導経験を活かせるようになるでしょう。また、メンティにとっても気軽に相談できる社員がいることで安心感につながり、離職率も減ると考えられています。

しかし、メンターの業務負担が増える点や、メンターとメンティの相性が悪い場合は、信頼関係の構築に時間がかかる点は、デメリットと言えます。

ジョブローテーション制度

ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的として、部署や担当業務を変えてさまざまな経験を積ませる戦略的な異動のことです。企業にとっては、社員の適性を見つけやすくなったり、部署間の関係性をより良くできたりする点がメリットです。一方、社員側も自身の視野が広がったり、成長を実感したりすることでモチベーションの維持につながります。

一方で、デメリットは次のような事項です。ジョブローテンションを組むには、その教育に大きな時間と工数がかかるうえ、年次や経験を考慮した配置を組むのは容易な作業ではありません。また、社員側にとってもスペシャリストになりにくかったり、望まない異動の場合はモチベーションが下がったりする可能性もあります。

オンボーディング

オンボーディングとは、新しく入った社員に対して、業務の進め方や知識、企業のルールなどを教え、早く慣れるようにサポートする取り組みです。新入社員研修のような短期的な取り組みではなく、継続的にサポートをしていきます。オンボーディングのメリットは、社員の即戦力化や離職の防止へつながる点です。離職率が下がれば、新たに人を採用するコストも削減できるはずです。また、社員にとっても周囲との交流が増え、会社での居心地も良くなるほか、モチベーションの向上まで期待できます。

オンボーディングは、新入社員と指導者だけではなく、同じ部署や関連部署の社員なども巻き込んで行われます。もしも非協力的な社員がいれば、取り組みへの悪影響が懸念されます。施策の意図を理解してもらえるように、全社員に周知することが重要です。

人材育成を成功させるポイント

ここからは、人材育成を成功させるためのポイントをご紹介します。

目標に基づいた人材育成手法の採用

人材育成には目標設定が不可欠です。業務遂行能力の高い人材に育てたいのか、部下への指導力が高い人材に育てたいのか、といった目指すべき人材像によって、適切な人材育成手法が異なるからです。目標を定めずに人材育成をしても、効果的なスキルアップが狙えないばかりか、社員が混乱して十分な実力が発揮できなくなるなど、本末転倒な結果になりかねないので注意しましょう。

社員のモチベーション維持

人材育成を成功させるには、社員のモチベーションを高めることが重要です。社員のモチベーションが低ければ、どんなに素晴らしい制度が整っていても、その効果はあまり期待できないでしょう。社員のモチベーションを上げるには、人材育成を受けるメリットを適切に伝えるほか、日々の業務へ感謝を表すなど、承認欲求を満たす働きかけも忘れないでください。

人材育成の仕組み形成

人材育成は個人の努力だけで達成できるものでなく、適切な仕組みがなければ効果は上がりません。やみくもに人材育成に取り組むのではなく、資格取得補助制度を設けたり、スキルアップ研修を企画したりと支援制度を充実させ、社員が積極的に参加したいと思える環境を作ることも大切です。

まとめ

人材育成は「狭義の人材育成方法」と「広義の人材育成方法」があり、よりよい人材育成を行うにはどちらか一方だけではなく、両方取り入れることが重要です。企業によって適切な人材育成の手法は異なるため、それぞれの特徴やメリットを比較した上で、適切なものを選択しましょう。

また、人材育成を成功させるには、目標に基づいた人材育成手法を採用したり、社員のモチベーションを維持する工夫をしたり、充実した仕組み作りを意識することが大切です。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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