人事領域におけるリテンションとは?
意味やメリット、具体的なリテンション施策をご紹介

 2025.12.02  AJS株式会社

人事領域におけるリテンションとは?意味やメリット、具体的なリテンション施策をご紹介

近年、採用市場の競争激化や人材の流動化により、企業には“人材を採用すること”以上に、“人材が定着し活躍し続けること”への戦略的な取り組みが求められています。

そんな中、今注目されているのが、「リテンション」という考え方。

リテンションとは、優秀な人材の離職を防ぎながら、働きがいと成果を高め続けるための一連の取り組みを指します。

人材の定着率向上という従来の枠組みを超え、従業員のキャリア支援や職場環境の整備など、幅広い施策を含んでおり、人的資本経営の重要な要素でもあります。

そこで、こちらの記事では、リテンションの目的やメリットに加えて、具体的なリテンション施策まで分かりやすく解説します。

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リテンションとは?意味と目的について

リテンションとは?意味と目的について

「リテンション(Retention)」とは、直訳すると「保持」「維持」という意味を持つ言葉です。

人事用語としてのリテンションは、優秀な人材の流出を防ぎ、長期的に自社で活躍してもらうための取り組み全般を指します。

そして、リテンションの目的は、優秀な人材や自社において重要な人材の離職を防ぎ、安心して働き続けられる環境を整え、人材の定着を図ること。

採用難が続く現代においては、『いかに採用するか』よりも『いかに定着・活躍してもらうか』が重要性を増しており、リテンションはその中核となる概念です。

そして、リテンション施策は、大きく「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2つに分けられます。

金銭的報酬には、給与・手当・賞与の他、住宅手当といった福利厚生などが該当し、企業への安心感や納得感の形成につながります。

一方、非金銭的報酬には、柔軟な働き方の構築や、従業員の成長を支える研修制度、キャリアパスの提示といった要素が含まれます。

リテンション施策は、複数の施策を総合的に組み合わせることで実現されるものであり、企業が人材の持続可能性を高める上で欠かせない取り組みと言えるでしょう。

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リテンション施策を行うメリット

リテンション施策を行うメリット

では、企業がリテンション施策に取り組むことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、リテンション施策を行うメリットについて見ていきます。

採用コストの削減

企業が人材を採用するときには、求人広告掲載費や人材紹介会社への手数料だけでなく、選考プロセスに費やす人事担当者の工数や、入社後のオンボーディング・育成といった『見えないコスト』も多く発生します。

とくに、企業の中核となる優秀な人材や、即戦力となる人材の採用には、高額な費用がかかることも少なくありません。

しかし、リテンション施策により従業員の離職率が下がり、定着率が上がると、欠員補充のための採用活動に追われる必要がなくなり、結果として採用コストを削減できます。

ノウハウの蓄積・流出防止

従業員が退職すると、これまで社内で培ってきたスキルや、蓄積されたノウハウが外部へと流出してしまいます。

中でも、リーダーや役職候補といった人材の流出は、企業にとっても大きな痛手です。
競合他社や同業種への転職の場合、企業独自の営業手法や改善ノウハウがそのまま他社で活かされてしまうというケースも発生するでしょう。

こういったリスクを避けるためにも、リテンション施策への取り組みは重要です。

従業員が長期的に定着・活躍することで、日々の業務で得られた経験やスキル、社内で培われた知見などが蓄積されていきます。

また、従業員の中だけに留まらず、会社の資産としても蓄積されるため、組織全体の競争力強化にも結びつきます。

従業員のモチベーション向上

リテンション施策は、従業員が「この会社で働き続けたい」と思える理由作りにつながり、仕事へのモチベーション向上を促します。

給与や手当などの金銭的報酬だけでなく、働きやすさや成長の機会といった非金銭的報酬により、企業への満足度が高まることで、仕事への前向きな姿勢や自律的な行動も生まれやすくなります。

従業員一人ひとりのモチベーション向上は、個人の主体性や自発性を引き出し、結果として組織全体の生産性向上や職場の活性化にも波及します。

具体的な3つのリテンション施策

リテンション施策には、前述した通り「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2つに分類されます。

給与や賞与といった「金銭的報酬」の充実は一定の効果がありますが、短期的になりやすく、優秀な人材ほど他社が提示する“より高い報酬”へ流出してしまう可能性が高まります。

また、企業としても“常に給与水準を上げ続ける”ことは、長期的に見ると、コストや制度設計の面で限界が生じやすいという課題があります。

そこで、近年は、『働きがい・自己成長・キャリア形成』といった、非金銭的な価値も重視する企業が増えています。

従業員も、“やりがい”や“自己成長”を求める傾向が強まっており、「非金銭的報酬」が離職防止や人材定着に大きな役割を果たすようになっています。

そこで、こちらでは、複数ある「非金銭的報酬」の中から、実務で取り入れやすく、効果の高い3つのリテンション施策についてご紹介します。

スキルアップ・キャリア形成支援

一つ目のリテンション施策は、資格取得支援や研修制度など、社員の能力・スキル開発のための学習機会を提供することです。

成長の実感やキャリアの展望が持てない状況では、金銭的報酬が十分でも離職につながりやすく、逆に『この会社なら将来を見据えたキャリア形成ができる』という安心感は、長期的な人材の定着に効果的です。

さらに、学びによって得たスキルを発揮できる場を用意することも欠かせません。
社内公募制度や社内FA制度などにより、新しい知識や能力を活かせるポジションへの挑戦機会を提供することで、従業員は『努力がキャリアに反映される』という実感を得られます。

また、企業側は、多様なキャリアパスを用意・明示して、従業員が『将来なりたい自分の姿』を描けるようにすることも重要。

1on1ミーティングやメンター制度を活用し、定期的にキャリア面談を行いながら、スキルアップ目標設定や課題の棚卸しをサポートしましょう。

自分の強みや課題を客観的に把握できることで、将来に対する不安が軽減され、モチベーション向上につながります。

ワークライフバランスの実現

ワークライフバランスの実現は、非金銭的報酬の中でもとくに従業員満足度や定着率に直結するリテンション施策です。

働く人の価値観が“給与の高さ”だけでなく“自分らしい働き方・生活の質”へと広がっている昨今、時間や場所にとらわれず、柔軟に働ける職場環境は大きな魅力となります。

具体的には、テレワーク制度、フレックスタイム制度、時短勤務、在宅と出社を組み合わせたハイブリッド勤務などが挙げられます。

こうした制度を構築することにより、育児や介護など、多様なライフイベントに対応しながらも、キャリアを断念せず働けるようになるでしょう。

また、制度を整えるだけでなく、「有給休暇を取得しやすい雰囲気」「長時間労働の是正」といった側面へのアプローチも忘れてはいけません。

形式や制度としてだけではなく、現場で使われる仕組みとして根付いて初めて、リテンション施策の効果が発揮されます。

社内コミュニケーションの活性化・円滑化

リテンションを高める上で欠かせないのが、社内コミュニケーションの活性化・円滑化です。

どれだけ制度や環境が整っていても、職場での人間関係に不安が残ってしまうと、人材の定着には結びつきません。

社内コミュニケーションツールの導入で気軽にコミュニケーションを取れる場を設けたり、上司と部下の定期的な1on1ミーティングの実施や従業員アンケートで現場の声を拾いあげたりなど。

円滑なコミュニケーションが取れる環境を整備することで、社員同士の結びつきが強まり、組織への帰属意識・定着も高まるでしょう。

効果的なリテンション施策の実施なら。
人事評価システム「P-TH/P-TH+」

リテンション施策を成功させるには、制度を作るだけでなく、それを継続的に運用し、従業員一人ひとりの成長や納得感につなげることが不可欠です。

しかし現場では、評価制度が形骸化していたり、面談やフィードバックが丁寧に行われず、キャリア支援が十分に機能していないケースも少なくありません。

このような課題を解消し、企業と従業員の双方が納得できる形でリテンションを実現するための施策として有効なのが、人事評価システムです。

とくに「P-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)」は、集計業務やシート管理が容易になるだけでなく、使い慣れたExcelの評価シートをそのままシステム化できるため、導入後の定着が早く、導入にあたってのストレスを最小限に抑えることが可能です。

それにより、丁寧なフィードバック面談を行うための時間を十分に確保できるようになり、従業員一人ひとりの成長や納得感にもつなげることが出来るでしょう。

また、2025年4月より標準装備された『1on1機能』には、1on1ミーティングの記録を残せるテンプレートや、実施時間や満足度を分析できる機能を搭載しています。

1on1ミーティングの継続は、従業員の不満や課題の早期発見・早期解決にもつながるため、離職防止にも効果的です。

また、従業員の納得感やモチベーションが高まることで、人材定着にもつながるでしょう。

まとめ

リテンションは、人材の離職防止という限定的な施策に留まらず、従業員一人ひとりが企業で成長を実感できる状態をつくる“戦略的な人材マネジメント”です。

採用難が続く今、外部から優秀な人材を獲得するだけでなく、在籍している従業員の価値を最大限に引き出し、長期的な関係性を築くことこそが企業競争力につながります。

従業員の要望に見合う、実施可能な施策から取り組むことで、持続的なリテンションの強化を図っていきましょう。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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