プレゼンティーイズムとは?
原因や測定方法・対策も解説

 2024.08.06  AJS株式会社

企業において労働生産性向上を目指す施策は多岐にわたりますが、その中でも重要なのが従業員の心身の健康に関する施策です。特に、従業員が欠勤こそしていないものの十分なパフォーマンスを発揮できない状態を指す「プレゼンティーイズム」が注目されています。この記事では、プレゼンティーイズムとは何かについて紹介した上で、発生の原因や測定方法、さらに企業として取り組むべき対策を解説します。

プレゼンティーイズムとは? 原因や測定方法・対策も解説

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プレゼンティーイズムとは

プレゼンティーイズムとは、従業員が出勤こそしているものの、健康問題やストレスなどの要因で十分なパフォーマンスを発揮できない状況を指します。日本語で疾病就業と訳されます。この概念は、世界保健機関(WHO)によって提唱されました。

生産性の低下をもたらすプレゼンティーイズムは、企業にとって大きな課題です。ですが、その存在は気づきにくく、影響度を数値化することも難しいため、従来は見過ごされがちでした。近年では健康経営に取り組む企業が増えてきたこともあり、その存在と対策の重要度が広く認識されつつあります。

アブセンティーイズムとの違い

プレゼンティーイズムと似た言葉にアブセンティーイズムがあります。アブセンティーイズムとは、心身の不調により従業員が欠勤や早退をしてしまうことです。言い換えると、アブセンティーイズムが「そもそも働けない状態」であるのに対し、プレゼンティーイズムは「働いているけれど十分なパフォーマンスを発揮できない状態」を意味します。

プレゼンティーイズムと比較すると、アブセンティーイズムは欠勤状況や休職者数などから影響度を可視化・数値化しやすい状況です。ですが、どちらも従業員の心身の健康に関わる問題であり、生産性に大きく影響するのは変わりません。また、プレゼンティーイズムを放置すると症状が悪化し、最終的にはアブセンティーイズムに移行するリスクもあるため、企業はどちらの問題に対しても適切な対応をする必要があります。

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プレゼンティーイズムの原因

従業員が心身の不調を抱えながらも出勤しなければならない状況は、次のような理由で起こることが多いです。

労働条件・職場環境

第一の原因は、労働条件や職場環境です。職場の労働環境が劣悪である場合、従業員の健康に悪影響を及ぼすことがあります。長時間労働を強いられていたり、十分な休暇を取れていなかったりする場合、従業員が心身の不調をきたす例は多く報告されています。

また、照明が暗かったり室温管理が不適切であったり、不衛生であったりする物理的な環境も要因として考えられます。デスクや椅子の高さなどが従業員の体格に適合していない場合、不自然な姿勢を長時間にわたって強いられることになり、腰痛などになってしまうこともあるでしょう。

人間関係


人間関係の問題も大きな要因です。職場でのストレスはメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。例えば、上司や同僚との関係が悪い場合や、チーム内のコミュニケーションがうまくいっていない場合、従業員にストレスがかかります。また、心身の不調があってもそれを報告しにくい環境や、仕事を代わってくれる人がいない状況も心身の不調の原因となります。

個人的要因

従業員の個人的な要因も見逃せません。従業員が心身の不調を感じていても、さまざまな理由で休むことをためらう場合があります。例えば、すでに何度も休んでいて罪悪感を感じたり、収入や評価への悪影響を心配して休めないことがあります。また、将来への不安や家庭の問題、収入の問題、食生活の偏りや運動不足なども、心身の不調を抱えながら働き続ける要因となります。

プレゼンティーイズムの測定方法

経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課が2016年(平成28年)に公表した「企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)」では、プレゼンティーイズムの評価手法として以下の5つが挙げられています。

WHO-HPQ

WHO-HPQは、WHOが開発した従業員の生産性を評価する指標です。絶対評価と相対評価の2つの側面からプレゼンティーイズムの度合いを測定します。

東大1項目版

東大1項目版は、東京大学が開発したシンプルな測定方法です。万全な状態を100%とした場合、過去4週間の自身のパフォーマンスはどれくらいか、というたったひとつの質問によってプレゼンティーイズムの度合いを評価するものです。簡易的ではありますが、迅速に職場全体の状況を把握したい場合に適しています。

WLQ

WLQは、タフツ大学が開発した調査票です。健康問題が仕事に与える影響を評価するもので、25の質問によって4つの尺度に分けて影響度を調べられます。

WFun

WFunは、産業医科大学が開発した調査票です。健康問題による労働機能障害の程度を測定できます。7つの質問で構成されており、合計得点によって影響度を評価します。

QQmethod

QQmethodは、健康問題による労働パフォーマンスの低下を評価する方法です。まずは健康問題の有無を確認し、その後4つの質問を通してプレゼンティーイズムの影響度を調査します。

参照元:企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)(p.26-27)

プレゼンティーイズムを防止するための対策

先述のように、プレゼンティーイズムはさまざまな理由で起こるため、それを防ぐためにはいろいろな対策が必要です。ここでは、企業ができる具体的な防止策についてご紹介します。

従業員の状態を把握する

企業がまず取り組むべき対策は、従業員の状態を正確に把握することです。それによって、そもそも自社におけるプレゼンティーイズムの状態がどれほど深刻なのかを認識し、対策の必要性も把握できます。方法としては、健康診断時の測定や、メンタルヘルスの状態を把握するためのストレスチェックなどが役立ちます。

従業員がしっかりと成果やパフォーマンスを出せているかを日頃からチェックすることも重要です。また、従業員の労働時間や残業時間の正確な管理を通して、過重労働になっていないか確認することも欠かせません。

職場の環境を整備する

従業員が安心して働ける環境を整えることも重要な対策です。労働条件や職場の物理的環境を改善することで、従業員の健康や安全を守ることができます。例えば、職場の温度や照明、衛生状態などを適切に管理し、快適な作業環境を提供する取り組みです。また、ハラスメント対策の強化や、ワークライフバランスの推進などを通して従業員が気兼ねなく休暇を取れる環境の整備も重要です。

相談の機会を設ける

従業員が悩みや不安を気軽に相談できる環境を作ることも必要です。管理監督者や人事部、産業医などへすぐに相談できる体制を整えることで、従業員の心理的安全性を大きく向上できます。社内だけでなく社外にも相談窓口を設け、定期的な面談の実施も検討しましょう。また、上司は積極的に部下とコミュニケーションを取り、日頃から信頼関係を築くように努めることが重要です。

従業員の健康リテラシーを高める

従業員自身がプレゼンティーイズムのデメリットやそのリスクを理解し、健康リテラシーを高めることも有効です。ヘルスケアに関する研修やセミナーを定期的に行い、従業員が健康の重要性やその管理について考える機会を積極的に設けましょう。健康リテラシーを高めることで、自身や同僚・部下の健康を適切に気遣えるようになります。

まとめ

プレゼンティーイズムは、従業員が心身の健康問題によって十分なパフォーマンスを発揮できないまま働いている状態を指します。それを防ぐためには、まず従業員が無理な働き方をしていないか、成果やパフォーマンスが落ちていないか、といった状況の把握に努めることが重要です。従業員の状態を正確に把握するには、丁寧な人事評価も重要です。業務に追われ、人事評価面談などに時間をかけられない場合は、人事評価システム「P-TH/P-TH+」の活用がおススメです。今までのExcelの評価シートをそのままシステム化できるので、今までのやり方をほとんど変えることなく評価業務の効率化が可能です。効率化できた時間を面談に充てることは、プレゼンティーイズムの早期発見にも、役に立つでしょう。

参照:人事評価システムP-TH/P-TH+

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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