時代と共に変化する教員の人事評価。変化する教育の現場とは

 2022.05.11  AJS株式会社

教職員の勤務成績や態度、パフォーマンスによる評定を人事評価に反映させることは長い間取り組まれてきませんでしたが、「業績評価」と「能力評価」による人事評価制度の導入が自治体によって義務付けられることとなりました。本記事では、変化する教職員の人事評価制度の内容などについて解説します。

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教職員の人事評価と給与

教職員の人事評価制度は長い間、勤務成績による評定の結果を給与と人事に反映させていないという課題がありました。

2000年に東京都教育委員会が「教職員の資質能力の向上及び学校組織の活性化を図ること」を目的に、管理職だけでなく一般教職員に対しても勤務成績や個人の能力に応じた人事考課が導入されました。

新たに導入された人事評価制度では、教職員一人ひとりの能力や勤務態度、業績、パフォーマンスを適正に評価する基盤を整え、人事や給与に反映させることを重要視しています。

以前の人事評価制度では、教職員の努力や成果を評価基準にしていなかったことから、モチベーションの低下や不満の蓄積、ストレスの増加などの問題が発生していました。そういった評価に対する問題を解決するために、教職員の評価を適切に行える制度の導入が進められたのです。

教員人事評価システム導入の流れ

教職員の業務成績や勤務に対する意欲、努力を正当評価することを目的に、2000年12月に総理大臣の私的諮問機関である教育改革国民会議において「教育を変える17の提案」の第11項目として「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」ことが提案されました。そして、2003~5年にかけて文部科学省が、全都道府県の教育委員会に対して従来の体制が抱えている課題を解決できる「教職員評価システム」についての調査依頼を行いました。

その後、2016年4月1日に「業績評価」と「能力評価」を軸とする人事評価制度の導入がすべての自治体に義務付けられました。教職員評価システムは全都道府県・指定都市の67教育委員会で導入されています。

この結果、明確な評価基準と適正な処遇が教職員の成長を促すことも期待できるため、評価に基づく体系的な人材教育が促進されました。

新しい教員人事評価の内容

「業績評価」と「能力評価」の2つの評価を軸に導入が進められた新しい人事評価システムは、個人の能力を重視して評価を行います。

能力評価は職務上に発揮された能力(指導力や行動)を評価する制度で、業務に取り組む姿勢や意欲といった業績とは関わらない定性的な項目を評価します。

業績評価は職務を遂行するために挙げた業績を基に評価する制度で、教職者自身が業務目標を設定するのが特徴です。目標は現状の課題に対して、何を、いつまでに、どの程度まで、どのような状態にするのか等、具体的な行動内容や達成する目標を所定の様式に記載して管理します。

これらによって教職員はより適切な評価がされるようになり、その評価が給与や昇進といった処遇にも反映されることとなりました。

評価の参考になる情報

評価対象には教育内容、個人の知識、学術的理解、学習への姿勢や信念などが評価される「特性」、教室内での活動、児童生徒や保護者とのコミュニケーション、地域住民との活動といった「実践」、児童生徒のテスト結果、卒業率、学習到達度、授業態度などの「成果」が挙げられます。

これらを授業観察、児童生徒の外部テスト結果、学校や学級内での児童生徒の学習成果、教育者の指導内容に対するアンケート結果などを参考に評価を行います。評価項目は各自治体によって公開されており、役職ごとに内容を確認できます。

公平性を保つための苦情相談について

評価制度の公平性を維持し、評価基準や根拠の透明性確保、制度そのものへの信頼性を高めるために苦情相談・苦情処理の仕組みが整備されました。その結果、「評価が正当ではない」と教職員が感じたときも、職員の所属する部局などの相談員へ早急に相談できます。

評価者・教職者の間で行われる評価に対して納得がいかない場合に、①苦情相談、②苦情処理の2段階に分けて申し出ることが可能です。制度を利用することで、評価に対する正当性を高め、従来よりも納得できる評価が受けられるようになるでしょう。

また、そうした申し出ができる権利の存在は制度の透明性を高めることになるため、制度そのものに対する信頼度も高くなるというメリットがあります。

優秀教員の表彰

質の高い指導力や優秀な実績がある教職員を表彰する制度として「優秀教員表彰制度」があります。

こうした取り組みは2007年の「文部科学大臣優秀教員表彰」から始まりました。その際に各都道府県・政令指定都市の教育委員会に被表彰者の推薦を依頼したことで、全国的に優秀教員の表彰が行われることにつながりました。

「学習指導、生徒指導、進路指導、体育・保険・給食、特別活動指導、部活動指導、特別支援教育」などの実践分野において特に顕著な成果を上げた者が選考対象として選ばれます。また、地域連携やユネスコ活動・国際交流、学校運営改善といった活動において優れた成果を上げた者も選考対象者となります。

教職員のための業務改善とメンタルヘルスケア

教職員の業務は多岐に渡り、多忙を極めます。そのため、業務改善はしばし課題として挙げられます。改善案としてガイドラインの制定やメンタルヘルスケアを取り組む組織も増え、教職員の負担軽減に努めているのです。

ここでは、教職員が優れたパフォーマンスを発揮して正当な人事評価が得られることを目的として行われる、業務改善やメンタルヘルスケアについて解説します。

業務改善のガイドラインの制定

教職員の業務は多忙で、児童生徒への学習指導のみならず、授業準備や書類作成、保護者への対応、部活動指導など多岐に渡ります。

教職員が自身の業務に追われ、生徒一人ひとりに対して時間を割くことが困難となり、しっかりとした生徒指導ができないことも問題視されています。教職員個々の能力を最大限に発揮させるためには、勤務環境を整え、根本的な業務改善を行うことが必要です。

業務改善の促進には教育委員会の支援が必要であることから、文部科学省は取り組みに対するガイドラインを制定し、各教育委員会に対して通知を行いました。

業務改善の基本的な改善ポイントとして、①校長のリーダーシップによる組織マネージメント、②教職員と事務職員等の役割分担による学校の組織化、③校務効率化・デジタル化による労働環境改善、④学校を支援する地域と協働する体制づくり、⑤教育委員会によるサポート体制、の5つの観点で整理され、ガイドラインは策定されています。

このガイドライン策定を受け、各教育委員会は教職員の負担を改善するためにさまざまな取り組みを行っています。

教員負担の軽減への取り組み

前述したような課題を解決するため、教職員の負担を軽減することを目的としてさまざまな取り組みが行われています。具体的には、文書作成を効率化する校務支援システムの導入や、会計事務の効率化及び透明化を実現する学年会計ソフトの開発など、システム導入による改善などが行われています。

さらに、業務改善の取り組みとしてICTの導入も促進されており、グループウェア機能や成績管理システムの活用によって作業効率も改善されています。

また、業務マニュアルの作成や定期的な施設点検、セキュリティ強化を目的とした統合サーバーによる一括管理を導入するなど、教職員の負担を軽減する職場環境づくりが促進されています。

事務手続きにも改善が見られており、郵便で行っていた本校・分校間(聾学校)の文書処理手続きを電子決裁システムによって簡素化し、スムーズに行えるようにした事例もあります。

教員のメンタルヘルスケア対策

教務員の業務は激務であることが多いため、精神疾患による休職者が続出していることも大きな課題です。平成19年度以降は年間5,000人前後で推移していましたが、平成28年度の4,891人から右肩上がりで増加しており、令和元年は5,478人と過去最多の人数となりました。

こうした問題が生まれる背景には、校務において発生した問題点に対して学級担任や事務職員など、教職員が一人で対応するケースが多く、組織的に対応できていない状態が原因として挙げられます。また、その理由は教職員の業務が多岐に渡り、1日を通して多忙であることと無関係ではありません。

加えて、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントのような問題も精神疾患を起こす要因となっており、早急な対応が求められています。

教職員へのメンタルヘルスケア対策として、スクールカウンセラーや退職校長会のような専門家を活用する仕組みが構築されつつあります。また、教職員の役割を明確にするとともに、業務縮小・効率化によって業務にかかる負担を削減するなど、根本的な改善活動も積極的に行われています。

そのほか、教育委員会専属の産業医や嘱託精神科医などの配置、労働衛生管理体制の整備、学校現場の実情を理解してもらうための対策なども推奨されており、今後の環境改善促進が期待されています。

まとめ

教職員の人事評価は、個人の能力や業績を基に評価されるように改善されました。また、教職員のパフォーマンスが最大限に発揮されるよう、労働環境の改善を促進しつつ、業務効率化やメンタルヘルスケア対策なども進められています。

こういった、文部科学省主導による改善も重要ですが、各現場における自助努力も大切です。各学校規模で業務改善を進める方法として、最新の人事評価システムを導入することも効果的です。AJS社が提供する人事評価システム「P-TH/P-TH+」は、評価制度をシステム化可能なため、人事評価関連業務を効率化でき、多忙な現場業務の負担軽減に貢献します。
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