エイジハラスメントとは?人事が取り組むべき対策を解説

 2021.07.21  AJS株式会社

世間にはさまざまなハラスメントがありますが、ドラマで取り上げられ、最近話題となったのが「エイジハラスメント」です。被害者にとって深刻な悩みでありながら、加害者には自覚がないことも少なくありません。誰もが加害者になりうるため、すべての人が理解しておく必要があります。本記事では、エイジハラスメントの具体例や人事が取り組むべき対応策について解説します。

エイジハラスメントとは

エイジハラスメントとは、「年齢」を理由とした差別や嫌がらせのほか、悪意を伴う言動のことを指します。高齢である、若者であるという理由でハラスメントを受けるものではなく、誰でも被害者・加害者になりうる点が特徴です。そのため老若男女問わずハラスメントになる発言を行っていないか注意する必要があり、年齢に関する発言を多くしている自覚のある方は、特に注意が必要といえるでしょう。

エイジハラスメントに該当するのは、例えば「〇〇さんは高齢だからこの仕事は難しい」「最近の若者はみんな出来が悪い」「〇〇さんは30歳だし、そろそろ結婚したら?」といった発言などです。人によっては普段何気なく発している言葉がハラスメントに該当するケースも増えているため、若い社員も年配の社員も、また男性も女性も注意が必要なハラスメントといえます。

老若男女関係なく注意が必要なハラスメントといえます。

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エイジハラスメントの具体例

上記のような発言の他には、どのような言動や行動がエイジハラスメントに該当するのでしょうか。具体的には、年齢や世代で一括りにして扱うことや年齢に応じて仕事の割り振りを変えること、また年齢から結婚や子供の有無を勝手に判断することなどが挙げられます。ここからは、それぞれについて詳しく紹介します。

年齢や世代で一括りにする

エイジハラスメントに該当する一つ目の例として、「年齢や世代で一括りにすること」が挙げられます。これはエイジハラスメントの代表例で、「ゆとり世代」や「団塊世代」、「就職氷河期世代」など特定の世代を指す言葉を用いて「これだからゆとり世代は」や「就職氷河期世代だから定職についていないのも仕方ないよね」とひとくくりにする発言には注意が必要です。先ほど挙げた「最近の若者はみんな出来が悪い」という発言も、この例にあたります。

場合によっては、特定の世代を指す言葉だけでも相手の受け取り方によってエイジハラスメントに該当するケースもあります。言葉そのものには悪意がなくても、相手が不快に思っていたり、頻繁に発言したりしているとハラスメントと判断されてしまうでしょう。特にネガティブな文脈で使用する場合には、多くの人が不快感を抱きやすいため注意が必要です。

年齢に応じて仕事の割り振りを変える

エイジハラスメントに該当する二つ目の例として、「年齢に応じて仕事の割り振りを変えること」が挙げられます。年齢に伴ったスキルの有無や経験などで仕事を振り分けることは問題ありませんが、ここで注意したいのは振り分けの理由が「年齢のみ」であるケースです。

例えば、シニア世代の従業員に対し、「もう歳なんですから」「もうおばさんなんですから、無理しないでください」などと、働く意欲と能力があるにも関わらず、年齢だけで判断して仕事を与えない場合はハラスメントと判断されます。ここで注意が必要なのは、「無理しないでください」や「身体に負担になりますよ」などの発言は、たとえ相手のことを考えて発した言葉であっても、相手が不快感を抱く場合があるという点です。

もちろん、家庭の事情や健康面、子育てなど考慮すべき点は年齢を重ねるに従って増えていきますが、年齢だけを見て仕事内容を判断するのは不適切であるといえるでしょう。

年齢から結婚や子供の有無を勝手に判断する

エイジハラスメントに該当する三つ目の例として、「年齢から結婚や子供の有無を勝手に判断すること」が挙げられます。世間話やコミュニケーションの一環として自然に話したケースであっても、当事者は気にしている・不快感を感じている場合が多々あるため注意が必要です。

例えば、「〇〇さんはもうすぐ30歳を超えるんだから早く結婚しないとね」「20代のうちに子供は作ったほうがいいよ」といった、年齢と結婚、年齢と子供の有無を結びつけたような発言がハラスメントにあたります。これは上司が職場の雰囲気を和せるためにした発言であったり、コミュニケーションをとりたかったりという意図がある場合でも、相手の気持ちや言い方によってはエイジハラスメントになってしまう可能性があるでしょう。

人事が取り組むべきエイジハラスメントへの対策

従来までは問題とされてこなかったなかった言葉でも、現代ではハラスメントとして問題になるケースは少なくありません。ここから、エイジハラスメントの対策として人事が取り組むべき内容について解説します。主な内容は啓発活動を行うこと、アンケート調査を行うこと、丁寧なコミュニケーションを行うことの三つに分けられます。それぞれについて詳しく解説します。

啓発活動を行う

人事が行うべきエイジハラスメントの対策の一つ目に、「啓発活動を行うこと」が挙げられます。人事部や上層部などの一部の人間だけが注意しても問題解決には至らないため、どのような発言がエイジハラスメントに当たるのか、社内全体で共有していくことが重要です。

具体的には社内で研修などを実施し、一部の人々ではなく個々人に当事者意識を持って考えてもらう必要があります。ハラスメントの概要や具体的例、注意すべき言動などを研修に組み込んで、会社全体に啓蒙していきましょう。

前項の具体例からも分かるように、発言者に悪意がなくても、受け取る人が不快に思ったらハラスメントに該当する可能性があることを重点的に伝え、組織全体としての意識を高めていくことが重要になります。また、実際に問題が起こった際の解決方法や組織としての対応を定めておくことも抑止力となります。これらを勘案した対策が求められるでしょう。

アンケート調査を行う

人事が行うべきエイジハラスメントの対策として、「アンケート調査を行うこと」が挙げられます。匿名性が高いアンケート調査は、顕在化していない問題を発見する意味で有効です。例えば裁量権の多い上司から若い社員がハラスメントを受けているケースでは、若い社員から告発していくことは難しいといえます。今後の出世に関する問題や、仕事のやりやすさにも影響してしまうためです。

そのため、アンケート調査を実施することで、ある程度の匿名性を担保した上で、社内の状況を把握することが可能です。また、社内でのアンケート調査は問題が発生してからの対応策としても優れています。社員から直接情報収集することで、ハラスメントに早期に対処し、若手社員の退職などの致命的な事態を防止する効果があります。

なお、アンケート調査以外にも、対策委員会や相談窓口を設けることも有効な対策の一つです。ハラスメントをそのままにせず、なるべく多くの社員が言葉を発しやすい環境を整えることが重要といえます。

丁寧なコミュニケーションを行う

人事が行うべきエイジハラスメントの対策の三つ目として、「丁寧なコミュニケーションを行うこと」が挙げられます。エイジハラスメントが発生する原因の一つとして、コミュニケーションが足りていないことが考えられます。その原因もまた、「年配の人は考えが古いから」「最近の若者の考えは理解できない」といった、年齢を理由に、歩み寄りの姿勢が足りなくなっているが招いていることも少なくありません。

これらの問題を解決するために、丁寧なコミュニケーションを意識することは非常に重要です。気軽に問題を相談しやすい環境を作る意味でも、コミュニケーションの活性化は不可欠です。なかなか声を上げにくい雰囲気の職場では、力の弱い人ほど気持ちを抑え込みがちになってしまいかねません。

それぞれの世代の分断を一度取り払い、一個人として理解しようとする姿勢が重要でしょう。そのためには、日々の丁寧なコミュニケーションを意識する必要があります。

エイジハラスメントにあった時は

最後に、エイジハラスメントに実際にあった場合の対処法を解説します。最初に重要なのが、「誰かに相談する」ということです。1人で抱え込んでいると適切な判断が行えない場合があり、事態がエスカレートする可能性が高まります。最悪な場合だと、うつ病をはじめとした精神疾患に罹患する可能性もあるでしょう。最悪の事態に発展させないためにも、まずは信頼できる人に相談し、複数人で適切に対処していくことが重要になります。

また、被害にあった際にはメモなどに記録することも重要です。記録内容は問題の証拠となるとともに、社内や外部機関へ相談する際の大切な材料となります。被害にあった日時や内容、誰に何をされたかなどをできるだけ詳しく記載するようにしましょう。メモに記録しておくと、相談がスムーズになります。

まとめ

エイジハラスメントは、普段何気なく発している言葉でも、相手の捉え方によっては問題となる可能性があります。そのため、ハラスメントにあたる内容から具体例に至るまで、真摯に理解することが重要でしょう。また、被害を起こさないためには社内の認識の統一やコミュニケーションを改めることが大切です。人事部が主導となって、社内全体に普及させていく取り組みを行いましょう。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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