中小企業の人事評価制度とは?テレワークにも対応できる作り方を徹底解説

 2022.07.20  AJS株式会社

適切な人事評価制度の整備は、企業の生産性向上や従業員の能力向上に貢献します。しかしながら、中小企業では人事評価制度の運用に課題を抱えている企業も少なくありません。この記事では、中小企業における人事評価制度の実態や必要性、導入までの手順について解説します。

人事評価制度とは

人事評価制度とは、従業員のパフォーマンスや労働生産性、意欲、会社への貢献度などを一定の基準をもとに評価する制度のことです。評価の対象項目は職種や立場によって変わり、実施頻度も企業によってさまざまですが、半年もしくは1年に一回など、一定の期間ごとに行うのが一般的です。人事評価の結果は賃金決定に反映されたり、昇給・昇進の査定に利用されたりするため、評価は評価者の個人的な感情や曖昧な感覚に基づくことなく、定められた基準に照らし合わせて客観的に行われる必要があります。従業員の得意分野や将来の成長性を見極めるのにも活用し、実力・適性に応じた人員配置を適切に行えば、企業の生産性向上や業績アップに繋げることができるでしょう。

人事評価制度が注目される背景には、経済のグローバル化や景気低迷によって従来の雇用システムが崩壊しつつあることが関係しています。終身雇用や年功序列といった制度が根付いていた日本では、年齢や勤続年数の長さを主な評価対象としてきました。しかし、人材不足や市場競争の激化などにより、これまでの評価方法では従業員のパフォーマンスやモチベーションを引き上げることが難しくなっています。そのため、近年は年齢や勤続年数にかかわらず、能力や成果に応じて賃金や処遇を決定しようとする動きが企業の中で広がっています。

中小企業における人事評価制度普及の実態

人事評価制度が適切に運用されれば、個人の能力や生産性の向上が図られ、ひいては企業の成長も期待できます。特に大企業に比べて人材確保が困難な中小企業にとっては、少ない人員で成果を上げる上で有益な制度と言えます。しかしながら、適切な人事評価を実施している中小企業は現状であまり多いとは言えません。以下で詳しく解説していきましょう。

そもそも実施していない

大企業に比べて中小企業では人事評価制度の整備が遅れている傾向にあり、そもそも人事評価を実施していない企業も存在しています。少し古いデータにはなりますが、厚生労働省が発表した平成14年雇用管理調査によると、「人事考課制度」の導入率は企業規模が大きいほど高くなり、従業員数が100人未満の中小企業では39.4%と半数以下という結果が出ています。もう少し新しいデータとして平成24年就労条件総合調査がありますが、「業績評価制度」の企業別導入状況をみると、100人未満の企業では29.9%と3割に留まっている状況です。

人事評価制度を構築していても適切な運用がなされていない

人事評価制度を導入していても適切に運用されないまま制度が形骸化してしまえば、従業員の能力や生産性の向上は見込めません。人事評価制度がうまくいかないケースとしては、「評価の明確な基準が設けられていない・評価が報酬に反映されていない・部署間で評価の偏りが生じている」などの場合が挙げられます。

このような状況で人事評価を行うと、従業員の間で不満や不平等感が生じ、企業内の人間関係が悪化したり、従業員のモチベーションを低下させたりするリスクがあります。

なお、厚生労働省の平成24年就労条件総合調査結果では、業績評価制度の評価状況について「うまくいっている」と答えた100人未満の企業割合は26.1%に留まっています。また「うまくいっているが一部手直しが必要」は45.8%、「改善すべき点がかなりある」が19.3%と、少なからず人事評価に課題を抱えている状況が見て取れます。

なぜ人事評価制度が必要なのか

ここまでにも少し触れましたが、人事評価制度が必要とされる理由には、生産性の向上のほかに、従業員定着率の向上、社内コミュニケーションの活性化などが挙げられます。以下で詳しく解説します。

従業員の生産性を向上させるため

少ない人数で競争に勝つためには一人ひとりの労働生産性を高める必要があります。「人財」と表現されるように、人は企業にとって財産であり、企業の成長は個々の従業員の能力とモチベーションの総和にかかっています。そこで、従業員が能力を十分に発揮し、パフォーマンスを最大化できるようにするためには、正しい動機付けが不可欠です。人事評価制度で明確な評価基準を設けることは、昇給や昇進といった外発的な動機付けにつながります。また、「自分の頑張りが会社に認められた」という内発的な動機付けを行うためには、上司が一人ひとりの仕事ぶりをきちんとフィードバックすることも大切です。

定着率を上げ、採用コストを抑えるため

人事評価の実施には、従業員の離職を防止する役割があります。少子化により人材確保が困難な現在、既存従業員の離職は中小企業にとっては重要な課題です。新しい人材の確保・育成にはコストと時間もかかるため、経営を安定させるためにも既存の従業員に長く働いてもらう必要があります。

しかし、評価制度が整備されておらず、昇給や昇進の基準が明確でない場合、「努力しても報われない」といった印象を与えてしまい、従業員のやる気が低下し、よりよい条件を求めて他社に流出してしまう恐れがあります。従業員の定着率を上げて採用コストを抑えるためにも、やりがいを持てるような評価制度を設けなければなりません。

コミュニケーションの活性化を図るため

人事評価制度の実施は、社内コミュニケーションの活性化にも貢献します。従業員数が少ない中小企業ほど個々のパフォーマンスが経営に与える影響は大きくなります。人間関係の悪化やコミュニケーション不足によるモチベーションの低下は業績の悪化に直結するため、早急に状況を改善しなければなりません。

人事評価を実施する過程では、上司が部下と個別に面談を行うなど、日頃の仕事ぶりを把握するために必然的にコミュニケーションが生まれます。部下が仕事上で悩みを抱えていた場合でも、問題を早期に発見して解決することが可能となるでしょう。

導入の目安

一口に中小企業といっても成長のフェーズや企業規模はさまざまです。ここからは、人事評価制度を導入すべき段階にある中小企業の状況について解説します。

【従業員が100名以上】
一般的に、人事評価制度はある一定数の社員数になったら導入されるケースが多くあります。従業員数が増えてくると、社長1人では全員に目が届かなくなります。組織が肥大化してから、人事評価制度を整備し、組織構造を検討する必要に迫られると人事部門の負荷は大変なものとなるでしょう。従業員数が50〜100名になる事業拡大期に、人事評価制度の導入を検討するのがよいでしょう。

【働き方改革を行いたい】
働き方改革を行うのであれば、まずは人事評価制度から見直してみてはいかがでしょうか。テレワークや時差出勤、フレックスタイム制、時短勤務といった多様な労働形態を実現する場合、「どれだけ長く働いたか」という時間で評価するわけではない、ということを明確にするとともに、人事評価制度を整備し、個人の能力や成果で評価する仕組みが不可欠です。

【自社に適した人材を確保したい】
人事評価で従業員の「あるべき姿」や「評価すべき行動」を明確にすれば、求める人材の姿もはっきりし、それに応じた募集をかけられるため、希望する人材が集まりやすくなります。また、社内においても自社のビジョンに合致した人材像を共有できるので、採用活動が進めやすくなるでしょう。採用後のミスマッチを防止することにもつながります。

人事評価制度の作り方

人事評価制度は少なくとも半年から1年程度の時間をかけて整備していくのが一般的です。ここからは、人事評価制度を整備するための基本的な手順を解説していきます。

目標を明確にする

長年に渡り年功序列制度による評価が定着していた企業であれば、いきなり人事評価制度を導入することで既存従業員の反発を招くことも考えられます。スムーズな導入を実現するためにも、まずは何のために人事評価制度を導入するのかを明確にして従業員に周知し、目的を理解してもらうことが大切です。企業が人事評価制度を導入する主な目的としては、生産性の向上や最適な人材配置、人材育成、従業員のモチベーション向上などが挙げられます。

評価基準を決める

次に目的に応じた判断基準を定めます。評価項目は以下の3つの軸で構成し、それぞれの評価項目は、5段階で数値化するケースが多いようです。

  1. 能力評価:与えられた業務を遂行する能力に対する評価
  2. 情意評価:業務への積極性や協調性、責任感など人間性に対する評価
  3. 成績評価:一定の期間内に達成された業務の量や質に対する評価

なお、上記の5段階評価は「上司が判断する場合」が大半です。しかしこれだけでは客観性や公平性に欠ける恐れもあるため、上司だけでなく部下や同僚など幅広い従業員が評価を担う360度評価などを併用することも検討しましょう。

評価者・評価期間を決める

最後に評価者と評価期間を決定します。評価の客観性と公平性を保つために、評価者は評価のポイントを的確に把握し、私情を挟まずに判断することが求められます。評価期間は、変動しやすい情意評価と成績評価は半年に1度程度、変動がさほどない能力評価は1年に1度程度というのが一般的です。人事評価の後には、部下とのフィードバック面談の実施も重要です。評価の納得度も高まり、部下の成長を促すこともできます。

テレワーク対応の仕方

新型コロナウイルスへの感染対策としてテレワークを導入する企業が増えていますが、上司が直接部下の働きぶりを確認できない以上、オフィス勤務を前提とした従来のような評価軸では正しい評価を下せない場合があります。

テレワーク中のコミュニケーションはメールやチャットなどのテキストベースで行われるケースが多いため、具体的な評価項目を作成する上では、業務のスピードや質に加え、報告やレスポンスの回数なども踏まえることをおすすめします。また、オンライン会議ツールを用いた1対1での面談を増やすのも効果的です。

また、テレワーク下においては成果主義的な評価手法の方が運用しやすくなりますが、成果を数値化しにくい業種では適切な評価が困難です。そこで、部下と相談の上で事前に目標を設定し、達成の度合いに応じて評価したり、プロジェクト管理ツールなどを用いて成果までのプロセスを確認したりすれば、テレワーク中でも適正な評価が可能となるでしょう。

まとめ

テレワークなど多様な働き方が広がりつつある中小企業においては、人事評価制度を導入する必要性が増しています。制度を導入するためには、適切な手順を踏むことや、運用において要点を押さえることが大切です。

人事評価の管理は、人事評価システムを活用することで効率的化できます。AJS社が提供するP-TH/P-TH+(ピース/ピースプラス)は、既存の評価シート(Excel)をそのままシステム化できる人事評価システムです。これから人事評価制度を構築するのであれば、この機会に活用してみてはいかがでしょうか。

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