人事評価を担当している人事担当者にとって、成果を正確に反映できる評価方式は喉から手が出るほど欲しいものです。特に、3段階から5段階の評価が一般的な段階評価では、どの評価方式が効果的な人事評価につながるのか頭を悩ませるところでしょう。そこで、本記事では段階評価の課題や4段階評価の優れている理由について詳しく解説していきます。
今までの人事評価は5段階評価が採用されていた
基本的に従業員に対する人事評価は会社の裁量によるため、自由な指標に基づいて判断をしても法的問題はありません。しかしながら、主観的・属人的な評価は「公正な評価がされていない」と従業員が不満を募らせることもあり、結果として人材の流出や新たな人材確保が難しくなるケースが散見されます。
そこで、特定の人物の恣意的な判断のみで決まらないように、人事評価の方法もある程度形式化されるようになりました。例えば、従業員それぞれに対し、3段階ないし5段階に区分した評価を行うといったやり方です。従業員の評価に使われることもあれば、プロジェクト単位で評価するなど、区分や使われ方は様々です。
その中でも、日本では人事評価に限らずあらゆる局面で5段階評価が採用されてきました。例えば、顧客満足度調査では「非常に満足・満足・普通・不満・非常に不満」と設定したり、成績評価では「S(86点~)・A(71点~)・B(56点~)・C(41点~)・D(40点以下)」と基準を設けたりします。また従来の評価では競争を促す相対評価が多かったものの、最近では個人の成果を尊重する方向へとシフトした結果、絶対評価が主流となっています。
段階評価の評価時の課題とは
以前から5段階評価に慣れ親しんできましたが、5段階評価あるいは3段階評価は、どちらにも傾かない中間の評価があることが原因で適正な判断が下せなくなっているという課題を抱えています。
たとえば、人事評価者が従業員を評価する場合、評価によるモチベーションの低下や、社内の雰囲気の悪化をおそれて極端な評価を極力避けたいという心理が働きます。また、自己評価では「評価者と自身の評価ズレはできるだけ避けたい」という危惧によって無難な評価をしてしまいがちです。そのため、5段階評価にもかかわらず、実質的に中間の2~4しか選ばないという3段階評価になってしまっているケースもあります。
また、評価対象が売上など数字として評価できる場合は客観的に公平に判断できますが、事務職や管理職など、成果が見えにくい職種では段階評価は難しくなります。成果による評価を期待している従業員にとって、成果が評価に反映されない状況に不満を抱くこともあるでしょう。従業員が不満やストレスを抱えた職場では生産性の向上や企業の業績アップも期待できません。
本来であれば、職種や業務範囲ごとに最適な評価方式を設定すべきですが、評価を行う度に制度を作っていたのでは非効率です。そのため、企業では基本的に一定の評価方式を設けて対応しており、一律で段階評価を導入している場合が多い傾向にあります。しかし、適切ではない評価方式は、社員の不満が大きくなるばかりですから、評価方式の検討をしないまま5段階評価や3段階評価を導入している企業は、現在の評価方式が本当に自社にとって適切かどうか、検証をする必要があります。
段階評価は4段階評価をおすすめする理由
評価方式は、人事評価制度の意義・目的から考えることが大切です。人事評価では、従業員の成果や評価項目を適切に分類し、社員の育成や生産効率の向上を目指します。そのため、可もなく不可もなくという中間評価は人事評価の目的に合いません。従業員にとっても、評価が今後の昇進や昇給に関わるので、「可もなく不可もない」と曖昧にするべきではないでしょう。
以上のことを踏まえると、段階評価は4段階での実施がおすすめです。4段階評価は中間の選択肢を排除し、「良い」「悪い」の選択を迫ることができます。「良い」「悪い」の選択に強制力を持たせることで、自己評価では自身の成果が会社に求められている基準に達しているかどうかを振り返らせます。また、評価者が別にいる場合は、業務内容が良好な状態でなければ「悪い」とつけざるを得ない点でも有意義です。5段階評価で中間の選択をしてしまう社員が多い企業は、率先して4段階評価を取り入れ、曖昧さを排除した人事評価を行うようにしましょう。
例としては、「非常に良い」「良い」「悪い」「非常に悪い」といった分け方があります。また、それぞれに3点・2点・1点・0点などと配点を行い、スコアをつける方法もできるでしょう。「非常に悪い」とする評価を設定すれば、成果が基準以下であることを明確に伝えることもできます。
段階評価の集計時の課題
一般的に、段階評価は評価項目が記載されたExcelファイルなどによって実施されます。しかし、評価項目は多岐に亘るため、評価結果を出すまでの集計・分析作業の負担や、なかなか提出しない従業員を追跡する労力が大きいという課題を抱えています。
VBAなどマクロを組んで集計を行っている企業もありますが、評価数や集計方法を変える際に労力が必要になります。また、そうした技術者がいない企業では手作業による集計を行っている場合もあります。特に手作業による集計では評価項目と評価欄を見間違える、あってはならないヒューマンエラーが生じる可能性もあります。
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まとめ
人事評価を行う際、従来は5段階評価が主流でした。しかし、中間の評価が選ばれやすいため、本来の意味での人事評価が適切に行われているとは言い難く、課題とされてきていました。4段階評価は曖昧な評価を排除する事ができますので、是非検討してみてはいかがでしょうか。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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