人事評価の目標設定に使える「SMARTの原則」とは?目標設定の例も紹介

 2020.07.09  AJS株式会社

人事評価における目標管理の活用が広まっている一方、導入したものの、それほど効果につながっていないと感じている人もいるでしょう。それは目標が「SMARTの原則」に沿っていないことが原因かもしれません。そこで、人事評価の目標設定に使える「SMARTの原則」の内容や、目標設定の注意点、具体例などを解説します。

人事評価における目標設定の意義

企業活動において、人事評価の重要性は認識されていますが、それを効果的に行うためには目標設定が重要です。それでは目標設定はどのような効果があるのでしょうか。
人事評価を行う際、客観的で公正な評価基準が必要になります。その評価基準を定める材料となるのが、目標設定に関する項目です。設定自体やその達成率は、その従業員の働きや貢献度を評価するうえで有用です。また、組織としての目標に基づき、各従業員が目標を立てることは、その達成に向けた工夫やアイデアを考えるなどの自発的な努力につながります。結果として従業員の能力やスキルの向上に役立ちます。自発的な行動の意味で、当然モチベーションの向上にもつながるでしょう。

目標設定に利用できる「SMARTの原則」とは

目標の質が悪ければ従業員の自発的な行動や正当な評価にはつながりません。明確で、従業員の日々の行動にも落とし込めるようにする必要があります。それでは効果的な目標を設定するには、どうしたらよいのでしょうか。

そこで有効なのが、「SMARTの原則」と呼ばれるフレームワークです。ジョージ・T・ドラン(George T. Doran)が論文の中で、このフレームワークを経営者向けに紹介したのが最初です。5つのポイントを基準にして考えることで、効果的な目標にすることが可能です。では、5つのポイントとはどのような内容でしょうか。

SMARTの原則における5つのポイント

SMARTはそれぞれの単語の頭文字を取っています。「S」はSpecific、「M」はMeasurable、「A」はAchievable、「R」はRealistic、「T」はTime-boundです。オリジナルの単語以外に、別な単語が基準として使われていることもあります。たとえば「R」はRealistic(現実的な)ですが、近年では個人の目標設定として、「Relevant」、「Related」(関連した)のように別の単語を当てはめたり、Realistic/Relevantとして、両方で「関連した」と表現したりすることもあります。また「T」は、Trackable(追跡可能な)やTime-oriented(時間志向)などが使用されることもあります。 

Specific(具体的に)

仕事に限らず、漠然と目標を設定しても日々の行動にうまく落とし込めないことが多いでしょう。これは「具体性」が足りていないことが原因で、誰もが分かるレベルで具体的に言語化することで解消できます。特に「5W1H」を意識した目標設定を行いましょう。

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Measurable(測定可能な)

目標は設定して終わりではなく、その達成に向けた努力をし、結果を振り替えることで次のステップや成長につなげることができます。その観点では、定量的に測定できるものが望ましいとされています。「新規顧客獲得のために30社訪問」のように具体的な数字で可視化し、客観的に測定できることで、組織全体としても評価を効率的かつ公正に行えます。

Achievable(達成可能な)

目標は高い方が良いものの、現実離れした目標ではモチベーションを保つのは難しくなります。達成可能なレベルのものを設定することで、それに必要なアイデアやアクションを考えます。簡単すぎず、かつ達成可能な目標を意識しましょう。

Relevant(組織目標に関連した)

モチベーションをより高めるには、その目標が組織やチームの目標に即したものであることが大切です。自身の立てた目標が、全体目標とどう結びついているのかを見極めます。全体と個人で内容があまりにもかけ離れている場合は、たとえ目標を達成しても会社に貢献していることにはなりません。全体目標と紐づいている内容にすることが大切です。

Time-bound(期限付きの)

いくら目標の質が良くても、いつまでに達成すればよいか定まっていないと、スケジュールを立てることができません。達成の期限を明確に設定することが大切です。これにより、途中のプロセスをスケジュール化でき、進捗にズレが生じた場合にはすばやく修正することができます。

SMARTの原則を利用した人事評価の目標設定例

SMARTの原則の具体的な内容を踏まえ、実際の人事評価における目標設定の例について解説します。業界や職種によって目標とする対象が異なるため、あくまで一例になります。
たとえば営業職の場合は、「今期中に新規顧客の受注を10件」のように設定するとよいでしょう。Web担当者であれば、「新商品案内ページの今月の閲覧数を先月の1.5倍にする」などとして、数値化します。どちらも具体性があり、期限もクリアしています。会社全体としての目標が定まっていれば、自身の目標がどれだけ寄与するかも明確です。

目標設定にあたっての注意点

注意点を2つの観点から解説します。目標設定は、組織全体において大きな力を発揮する一方、運用方法次第では従業員のモチベーションを下げてしまうなど逆効果になりかねません。チームの現状も踏まえながら、チェックしてみてください。

評価対象者の能力を把握する

目標は頑張れば達成できるものである方が効果的です。そのためには、評価対象となる個々の従業員の能力を適切に把握する必要があります。また、どの項目で従業員を評価するかについても共通している方がより客観的に把握でき、人事評価も行いやすくなります。評価対象者の能力をしっかりと把握し、評価項目や目標レベルを適切に設定するのがよいでしょう。

目標設定後はプロセスも意識する

目標設定を行う目的は、人事評価の材料づくりだけではなく、各従業員の成長や生産性向上のためでもあります。むしろ、後者を重要視する企業も増えているでしょう。その意味で、単に目標とその達成度で評価するのではなく、目標達成に向けたプロセスも含め評価することが大切です。プロセスにも目を向けることで、短期的な目標の達成だけでなく、長期的な視野でのスキルアップなど自発的な努力も従業員に期待できます。

まとめ

人事評価における目標設定の活用は非常に有効ではありますが、目標の内容を適切に設定する必要があります。そのためには、SMARTの5つのポイントを基準に考えるのもひとつの方法です。このフレームに沿って設定することで、従業員の自発的な行動や努力を促し、モチベーションやスキルの向上にもつなげられます。目標管理を有効活用できていないと感じたら、SMARTの観点で見直してみてはいかがでしょうか。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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