従来の働き方が見直され、テレワークや在宅勤務といった新しい働き方への関心が高まっています。2019年に施行された「働き方改革関連法案」や、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、テレワークを導入する企業は年々増加。その流れは今後さらに加速していくでしょう。そこで今回はテレワークや在宅勤務について詳しく解説します。
テレワークと在宅勤務の違い
時間や場所に縛られない、新たな働き方として注目されているテレワークや在宅勤務ですが、東京都産業労働局が行った調査によると、テレワーク制度を認知している企業は、全体の約60%程度にとどまり、まだまだ普及しきっているとは言えません。IT技術の進歩、AI産業の台頭に伴い、時代は大きく変わろうとしています。従来の働き方を脱し、多様で柔軟な働き方に転換していくことは、企業にとって避けることのできない課題です。ここではテレワークと在宅勤務の違いは何かという定義について見ていきましょう。
テレワークとは
テレワークとは「tele=遠隔地」と「work=労働」をかけ合わせた造語です。「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用してオフィスから離れた場所で働くことを指します。テレワークを行う人を「テレワーカー」と呼び、国土交通省は「1週間に8時間以上、職場以外でICTを利用して仕事をする人」を(狭義の)テレワーカーと定義しています。
IT技術の進歩と共に注目を集めているテレワークですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、より一層関心を高めることとなりました。パーソル総合研究所の調査結果によると、2020年3月の時点で13.2%だった正社員のテレワーク実施率が、緊急事態宣言が発令された4月以降は27.9%と大きく上昇しました。
在宅勤務とは
在宅勤務とは、企業で働く従業員が自宅、あるいは自宅を拠点として業務を行うことを指します。ただ「在宅勤務=テレワーク」というわけではありません。在宅勤務は、テレワークという広い働き方の一形態です。つまり情報通信技術を使ってオフィスから離れた場所で働く「テレワーク」という大枠の中にある、自宅で仕事を行うもののみを指して「在宅勤務」と呼んでいます。在宅勤務は育児中の女性、高齢者や障害者など、従来のオフィス勤務型の雇用が難しい人材の登用につながることから、人材不足に悩む企業から注目を集めている就業形態です。
参考:在宅勤務以外のテレワーク
ICTを駆使してオフィス外で働くテレワークには、大きく分けると3つの種類があります。前述した従業員の自宅で仕事を行う在宅勤務のほかに、取引先のオフィスやカフェなどで仕事を行う「モバイルワーク」と、自社で整備した専用施設などで仕事を行う「サテライトオフィス勤務」があります。
モバイルワーク
モバイルワークとは、電車やタクシーなどの交通機関や顧客先、カフェやコワーキングスペースなどで仕事を行うことを指します。在宅勤務との決定的な違いは、従業員の裁量でいつでもどこでも好きな就業場所を選べる働き方だということです。在宅勤務に比べると自由度が高く設定されているのが特徴です。
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務とは、所属する企業のオフィスではなく、遠隔勤務用に設置された専用オフィスで業務を行う働き方です。サテライト(satellite)とは英語で「衛星」という意味をもつ言葉であり、本体から離れて存在するものの比喩としてよく使用されます。つまり、本社や支社以外に従業員が利用できる小規模のオフィスを指しています。サテライトオフィスはさらに3つの種類に分けられ、都心部から少し離れた郊外に設置する「郊外型」、都心部に設置される「都市型」、地方に設置される「地方型」があります。それぞれ一長一短の特性をもっているため、自社に必要な形態を選択する必要があるでしょう。
在宅勤務のメリット
時代の変化と共に働き方が見直されつつあり、働き方改革推進のもと、より柔軟な働き方の実現が促されています。そんな中、注目を集めているのが在宅勤務です。そんな在宅勤務がもたらす3つのメリットについて見ていきましょう。
生産性の向上
会社のオフィスで働く場合、打ち合わせや会議、顧客対応などにより、自分の仕事に集中できないという事態が起こります。在宅勤務では、こうした業務の中断を大幅に減らせるため、自分の仕事に集中可能です。また、従業員がオフィスに行く必要もないため、通勤にかかる時間やコストを削減できます。満員電車や長距離移動などによる精神的負荷も軽減されることから、在宅勤務は業務の人的生産性を最大化することへつながります。
コストの抑制
従業員が自宅で仕事をする在宅勤務ならデスクやチェアなどを社員全員分用意する必要がないため、コスト削減につながります。それだけでなく、さまざまな備品も必要なくなるので、オフィスや事務所の必要スペースを縮小し、大幅に費用が削減できるでしょう。
人材の確保
企業が継続的に発展していくためには、優秀な人材の確保は必須課題です。総務省統計局の調査によると日本の人口は2008年以降、減少の一途をたどっています。このままでは少子高齢化と人口減少により、日本は今後さらに深刻な人手不足に陥っていくでしょう。在宅勤務制度を導入することで、離職率の低下にもつながりますし、新規人材獲得のアピールにもなります。育児や介護といった家庭の事情で従来の雇用形態では働くことができない優秀な人材を確保することも可能です。
在宅勤務導入におけるポイント
ここからは在宅勤務の導入を考えている企業へ向けて、憂慮すべきポイントと、その対策について紹介します。
課題の理解
自宅で仕事が完結する在宅勤務は、生産性の向上や経費削減といった大きなメリットがありますが、他方、課題もあることを忘れてはいけません。
自宅で仕事が完結するということは、裏を返せば勤務時間とプライベートの線引きが曖昧になるということです。休む時間と働く時間の区別がつかなくなれば、長時間労働につながる危険性もはらんでいます。労務の面では、いつ、どれだけ働いたのかという労務管理が複雑化してしまいます。進捗状況の正確な把握も難しくなるため、人事評価では結果や成果物重視の評価になりがちです。上司や同僚の目がなくてもしっかりと職務を遂行する、といった自己管理の徹底が求められます。
また、電話や、各種アプリケーションで連絡をとることは可能ですが、直接会って会話することが極端に少なくなるため、コミュニケーション不足に陥る可能性があります。円滑なコミュニケーションが阻害されてしまうことにより、業務が滞るということも考えられます。
最後に、セキュリティ問題も大きな課題です。本社やオフィスに強固なサイバーセキュリティを実装していても、在宅勤務をしている従業員の自宅やPCにも、本社レベルのセキュリティを施すことは困難でしょう。情報漏えいや、不正アクセスのようなサイバー犯罪に遭うリスクへも、対策が求められます。
対策の実施
在宅勤務のメリットを最大限得るためには、労務管理とセキュリティの実装、そして適切な人事評価制度の整備が必須です。これらの課題をクリアするためには、社内の仕組みを見直したり、新たなツールを導入したりといった工夫が求められます。
情報漏えいや不正アクセスなどのリスクに対しては、「VPN(Virtual Private Network)」といった仮想ネットワークの構築や、「UTM(Unified Threat Management)」といった統合型のセキュリティ管理システムの導入も有効です。業務遂行中のログを監視したり、従業員への危機管理教育を再徹底したり、といった対策を実施する必要があるでしょう。
また、従業員のパフォーマンスを最大化するためには、正当な人事評価が欠かせません。
体系化された人事評価制度を組み込むことは、従業員のモチベーションと生産性を高めることにつながります。そこで、人事評価や目標管理に長けたシステムの導入がおすすめです。「P-TH(ピース)/P-TH+(ピースプラス)」では、目標管理や人事評価を一元管理してシステム化できます。
まとめ
ITインフラのめざましい進化により、ワークスタイルが大きく変わろうとしています。とくにITを駆使する企業ではオフィスに出社する必要さえなく、在宅勤務やモバイルワークが今後のスタンダードになっていく可能性もあります。今回の記事を参考に在宅勤務のメリットとデメリットをしっかりと理解し、自社の事業に応用していただければ幸いです。
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