適正な人事評価をするためにはコミュニケーションは重要な要素です。従業員とのコミュニケーション不足は評価基準を正しく伝えられず、評価に対する不満を生み出す要因となってしまいます。本記事では、適切な人事評価をするための望ましいコミュニケーションについて解説します。
コミュニケーション不足は適正な人事評価を妨げる
人事評価制度は組織を運営していく中で極めて重要な仕組みであるため、企業がそれぞれ独自の制度を確立しています。従業員に対して適切な評価をし、適した報酬や役職を与えることがモチベーション向上につながります。
しかし、評価基準をしっかり定め、判断材料を明確にしている場合でも、従業員に対して適切な評価を与えることは容易ではありません。
特に評価内容に対して納得できず、不満を抱いてしまうケースについては、問題が発生する要因は従業員とのコミュニケーション不足が挙げられます。評価を受ける側に評価基準や根拠が伝わっていない場合、評価に対する不公平さを感じ、自身の努力を企業は見てくれていないと感じるようになります。
また、評価対象者と適切なコミュニケーションを取れていないと、「従業員がどのような意図を持って業務に当たっているか」が不明確となります。判断材料が不足した状態で評価することになるので、正当な評価をすることは困難となるでしょう。
日頃の適切なコミュニケーションによって相互理解が進めば、組織活性化につながる人事評価が実現に近づきます。
人事評価におけるコミュニケーション不足の課題とは!?
人事評価を行う中でコミュニケーション不足はさまざまな不満を生み出します。不満を生む理由として、従業員が「評価基準を理解できていないこと」「評価に満足できない」「上長に対する不信感を募らせること」などが挙げられます。
そこで、ここではコミュニケーション不足によって起こる人事評価時の課題について紹介します。
評価基準を理解できない
コミュニケーションが不足していると、従業員は評価基準が理解できず、「自分に与えられた評価は正当なのか」判断できません。社内の基準が設計されていても、自身の努力を見てもらえていないと思い、モチベーション低下を招くこともあるでしょう。つまり、現状の状態や課題に対するフィードバックが企業側から不足することで、従業員は「自身が組織から何を求められているのか」がわからないのです。
この状態が持続してしまうと、従業員たちは評価制度自体を煩わしく感じるようになり、結果的に企業全体での生産性低下に結び付く恐れすら生じます。
「従業員に与えられた評価が、具体的にどのような評価基準を基に評価されているのか」を適切に伝える場を設けることで、こうした不満の発生を防止したり、小さな不満を早期に解消したりすることが可能です。
評価への不公平さを募らせる
評価基準が理解できていない場合、たとえ平等な評価を行っていたとしても、従業員は評価に対して不満を抱き、不公平に感じる場合があります。
努力をしても報われないと従業員が思ってしまうことで、会社や顧客のために行う行動に意義はないと感じ、パフォーマンスに支障が出て、企業として大きな損失につながることも珍しくありません。不公平さを感じると業務へのモチベーションも上がりにくく、企業への貢献度も低下してしまいます。
こうした評価への不公平さはコミュニケーションの欠如から生まれやすく、不満が蓄積されることで労働意欲が低下していきます。
経営層や管理者、人事部が何を基準に従業員の業績や能力を評価しているのかを明確に提示することが重要です。自身の評価は何を根拠に決められているのかが曖昧だと業務に取り組む際に目標を見失ってしまうため、評価への不公平さを募らせる前に従業員とコミュニケーションを取れる場を意図的に設けることが大切です。
評価を行う上司への信頼の欠如を招く
評価を行うのは従業員の直属の上長に当たる管理者であることが多く、上司は部下の業務実績やパフォーマンス、個人のスキルを考慮して、組織への貢献度や設定された目標の達成度に対して評価をします。
このとき、上長と部下のコミュニケーションが不足していると、「適正な評価がされていない」と部下が不信感を抱くきっかけとなることもあります。また、上司側が部下のパフォーマンスに対して不適切な評価を行なった場合、部下の上司に対する信頼度は大きく低下します。
こうして上司への不信感を一度抱かれると、それを拭うことは難しく、その後正当な評価をしたとしても不満を抱かれたままになってしまう恐れがあります。また、コミュニケーションが不足することで、管理者側が現場レベルでの課題に気づけないまま無理のある目標設定を課してしまい、現場従業員たちのモチベーション低下を招いてしまうこともあります。
このように、管理者側や上司側で、仕事に対する意義や成果に対する処遇を不透明にしておくと、従業員側で不満は蓄積されていき、組織に対する貢献意欲も低下してしまいます。複数の従業員たちから上司への信頼度が失われ、組織に対する貢献度も低くなってくると、全体の生産性が低下しやすくなります。これを防止する基本対策として、日々のコミュニケーションは大切なのです。
人事評価におけるコミュニケーションのポイント
人事評価で正当な評価をするためにはコミュニケーションが必要不可欠です。従業員の成長を促すため、フィードバックできる場の構築、定期的な面談の場を用意、従業員一人ひとりを適切に評価する仕組みを導入、といった施策が重要なポイントになります。
ここでは人事評価におけるコミュニケーションのポイントを解説します。
成長に向けた適切なフィードバック
従業員の成長を促すためには評価期間内の業績やパフォーマンスを振り返る場を設けておきましょう。評価対象者は上司からフィードバックを受けることで、自身の現状を把握し、次の目標に向けてアクションを起こせるようになります。
従業員一人ひとりが、次の成長に向けて「不足している点」や「目標設定」を行うことで、現在の業務にどう取り組むかも明確になります。そのため、フィードバックの仕組みを構築することは、人材育成対策としても重要な要素となるのです。また、フィードバックを行う場があると、「上司が自身の何を見て評価判断をしたのか」が明確になるため、人事評価への従業員側での納得性も向上します。
管理者は質の高いフィードバックを行うために業績や成果、目標達成度を整理してから会話に望むことが大切です。適切なフィードバックを受けることで従業員が持つ上司への不信感は消え、評価に対する不公平さを感じさせない環境を築けます。
定期的な面談実施
定期的に上司と部下がコミュニケーションを取れる場を設けることで対話を意図的に促せます。多くの企業では四半期や半年、1年といった周期で人事評価面談を取り入れて評価基準や判断材料、目標設定、期間内の業務におけるフィードバックを行う機会を作っています。
面談の回数を増やすことで、人事評価制度の目的を組織全体に浸透させられます。また、コミュニケーションが必然的に増加するため、上司や組織に対して本音の意見を言いやすくなり、信頼感やモチベーションの維持が期待できます。
定期的なフィードバックは従業員一人ひとりの声に耳を傾けられるということにつながるため、従業員個々の具体的な目標設定や現状のスキル、将来への希望などを踏み込んで把握できます。
面談を実施する際は部下の話を傾聴するように心がけ、話を遮らずに意見をすべて聴くことが大切です。現場レベルでの課題を考慮しつつ実現可能な目標設定をすることで、モチベーション向上だけでなく、人材育成や組織活性化へと貢献します。
まとめ
人事評価を適切に行うにはコミュニケーションが必要不可欠です。コミュニケーション不足の改善策として評価面談の実施や、評価方法そのものを改善するなどの方法が挙げられます。
また、人事評価システムを刷新することも一案です。人事評価システムP-TH/P-TH+は評価制度と評価シートをシステム化することで効率的に業務を遂行可能です。業務の負荷を軽減することで、フィードバック面談に時間を充てられるなど、コミュニケーションの増加にも寄与します。
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