人事担当者なら知っておきたい社員(従業員)の離職理由例を解説

 2021.01.18  AJS株式会社

人事担当者が社員の離職理由を正しく把握することは、離職率引き下げに向けた施策を講じるうえで非常に重要です。では、一般的に社員(従業員)が会社を離職する理由には、どのようなものがあるのでしょうか。今回は、社員(従業員)が会社を離職する主な理由や、どのような対策が考えられるかについて解説していきます。

社員(従業員)の離職理由について知る重要性

働き方が時代とともに変わりつつある昨今、社員の離職率に悩まされている企業は多いことでしょう。社員を抱える企業であれば、やはりどうしても離職率が課題になってしまいがちです。令和元年に厚生労働省が発表したデータによると、平成28年3月卒業者の3年以内の離職率は、大卒で約3割、高卒では約4割に上ることがわかります。

働き手の意識が変わりつつある今だからこそ、人事担当者は社員が退職する際の離職理由や、離職後の影響について知っておく必要があります。これらを把握することが、離職防止の対策を講じる手掛かりとなるでしょう。

離職の影響

社員の離職は、企業にさまざまな影響をもたらします。やむを得ない理由であっても、社員が離職することによって、企業に何らかの不利益が生じるのは必定でしょう。例えば、社員の採用や教育に費やしたコストが無駄になったり、新たな人材を確保しなければならなかったりと、人事担当者にとって頭の痛くなるような影響が考えられます。

さらに、高い離職率は企業イメージにも影響しかねません。多くの求職者は、インターネットの情報を駆使して就職・転職活動を行います。ネット上では企業の離職率を簡単に調べられるため、離職率が高いと求職者から敬遠されやすいのです。

また、求人サイトや転職サイトでは、現社員や元社員からの口コミを見られるケースも多々あります。求職者にとって、離職率の高さだけでなく離職に至るまでの理由も、就業先選択の重要な要素となることは間違いないため、その点も含めて把握しておくようにしましょう。

対策の参考

社員の離職理由を知ることで、離職防止に向けた対策法も明らかになります。「人間関係による離職が多ければ、組織の見直しを図る」「仕事内容とのミスマッチが問題なら、異動先の希望を出せるようにし、フレキシブルな人員配置を行う」などの対策が可能です。

このように、離職理由に応じていろいろな選択肢が考えられます。離職者一人ひとりの離職理由をしっかりと把握し、離職率の改善に役立てましょう。

社員(従業員)の離職理由例

では、社員が離職する理由としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った調査や、内閣府による「初職の離職理由」に関する調査結果などをもとに、社員の離職理由として考えられる具体例を紹介します。

なお、これらの調査は、どちらも比較的若い年齢層を調査対象としています。特に、若手社員が定着しないことでお悩みの人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

仕事内容が合わない

社員の離職理由として、まず「仕事内容が合わない」ことが挙げられます。これは、内閣府による調査では離職理由・第1位にランクインしています。またJILPTによる調査でも、男性の離職理由・第2位は「自分のやりたい仕事は異なる内容だったため」です。

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『月刊人事マネジメント』事例掲載

この理由で退職するケースは、新卒などの若い世代に多く、入社前に思い描いていた仕事内容と実態とのギャップを感じてしまうことが原因のようです。このような場合、離職者自身の認識不足を原因とする可能性もありますが、会社説明会や採用面接などで、実際の現場における業務内容を正確に伝達できていないケースも考えられます。採用担当者は社内のことをより深く理解し、求職者に正しく伝えることが大切です。

また、思い描いていた通りの業務内容ではあるものの、想像以上の厳しさから先行きに不安を抱いたり、反対にやりがいがなかなか感じられなかったりなど、働いてみて初めて「自分には合わない」と感じるケースもあるでしょう。こうしたケースでは、部署間の異動によって仕事内容を変えるなどの工夫が必要です。

人間関係に問題がある

「人間関係に問題がある」という理由も、非常に大きな割合を占めています。こちらは、内閣府による調査では第2位、JILPTの調査では男女とも第3位にランクインしています。多くの人間が1日の大半を職場で過ごすことを考えると、良好な人間関係の構築は、働くうえで必要不可欠と言えるでしょう。

多少のストレスや人間関係のこじれなどは、やはりどの職場でも考えられますが、あまりに人間関係を理由とする離職が多い場合、パワハラやセクハラなどのハラスメントが横行している可能性も考慮すべきかもしれません。厚生労働省の発表によると、令和元年における民事上の個別労働紛争相談件数は約280,000件に上り、そのうち「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は87,000件を超えたとのことです。

生活の大半を過ごす職場だからこそ、人間関係は大切です。人間関係を原因とする離職が多い場合は、社内にコンプライアンス部門を設ける、コミュニケーションが円滑となるように社員同士の交流の場を設ける、などの対策が必要です。

賃金が十分でない

賃金を理由とする離職も、両調査にて約20%と高い割合を示しています。賃金への不満が離職につながるのは、何も若手社員に限った話ではありませんが、こと若手社員に関していえば、他者の給与額と比較することで不満が生じるケースがほとんどです。

入社後半年~1年ほど経つと、先輩や上司がどの程度の賃金をもらっているか、大まかに推測できるようになります。そうした結果、先行きに不安を感じてしまい、より好条件の会社に移ったほうがよいのではと考えた末に、離職に踏み切ることが多いようです。

なかなか賃金の改善をすぐに行うことは難しいですが、社員が不満を抱きにくいように、給与評価制度に関する詳しい説明などのフォローが必要でしょう。

会社に将来性が見込めない

内閣府の調査によると、男性の約15%、女性の約3%が「会社に将来性が見込めない」という理由で離職しているとのことです。特に、この理由で離職する若い世代は、就職活動時に十分な企業リサーチができておらず、実際に働いてみて初めて会社の将来性を案じるケースが多いようです。

特に今後は、コロナ禍による経済不安も相まって、自分自身や会社の将来について悲観する若者が増えていく可能性も考えられます。退職を希望する社員の不安を完全に拭い去るのは困難ですが、離職希望者に対して丁寧に説明する場を設けるなど、フォローできる体制を整えておくことが重要でしょう。

今後のキャリアに不安がある

「今後のキャリアに不安がある」という理由も、社員の離職理由として一般的です。例えば、「全く昇進が望めない企業や部署に所属している」「先輩など周囲の社員を見てキャリアアップの希望が見いだせない」などと考えて、離職する社員は少なくないでしょう。さらに、社内の昇進に関する評価基準が曖昧な場合など、どのように自分のキャリアを構築していけばよいかわからなくなってしまうケースも多いようです。

このような離職理由に対しては、社内の評価制度を整えたり、どのようなスキルや業績がキャリアに影響するのかを、共通認識として定着させたりする必要があります。

労働時間に問題がある

JILPTの調査によると、男女ともに労働時間や休日、休暇などの条件に不満を抱いて退職する社員は、30%を超えるとのことです。特に労働時間については、労働時間が長すぎる、残業も多いなどの条件で、離職へつながるようです。

少しの残業なら、状況によっては必要なことも事実です。しかしあまりに残業が多いと体調を崩す要因にもなります。さらに、「残業代が支払われない」「みなし残業時間が多すぎる」などの問題は、社員の不満に直結します。

「ワークライフバランス」という言葉が浸透しつつある中、仕事一色の生活をしている場合は、業務内容を見直すことが求められるでしょう。また、残業しなければ終わらないほどの業務が常にある状態なら、業務の効率化や雇用を増やすなど、1人あたりの負担を軽減する施策の検討も大切です。

休みにくい

「休みにくい」という理由も、特に若手社員の離職理由として挙げられることが多いでしょう。仕事が終わらず休暇を取れない場合や、周囲の目を気にして有給休暇を消化できない場合など、休暇に関する問題を抱えている若手社員は少なくありません。特に、先輩社員や上司が休暇を取らないような職場では、新入社員が空気を気にして休暇申請できないケースが多々あるようです。

また、休日出勤が一般的になってしまっている場合も、社員が不満を感じる要因となります。休みにくさから離職する社員が多い場合は、有給休暇の申請を社内で義務化したり、休日出勤を禁止したりするなどの対策が必要です。

自身や家族関係の事情がある

そのほか、自身や家庭の事情により離職する人もいます。例えば、自身の健康に関する問題や、結婚・出産・子育てといった生活上の変化、家族の介護などが主な理由です。JILPTの調査によると、結婚や出産を機に初職を離職したと回答する女性は、約26%にも及んでいます。

これらの理由は、誰の身にも起こりえるうえ、状況によっては退職せざるを得ないケースがあることも事実です。しかし、こうしたケースでも業務内容や配属場所、勤務地などを変更することで、そのまま会社で働き続けてもらえる可能性はあるでしょう。

まとめ

今回は、社員の主な離職理由について解説しました。高い離職率は、採用コストなどの面で企業にデメリットをもたらすだけでなく、離職理由によっては、会社の評価自体に影響を及ぼす可能性もあります。もし、離職理由が人事評価に関係する場合、評価制度やプロセスの見直しを進めていく必要があるでしょう。

評価制度の見直しを行う際は、「P-TH/P-TH+」の活用がおすすめです。通常どうしても工数が掛かりがちな人事評価のプロセスをシステム化し、人事評価の効率化ができるツールです。Excelで人事評価を行っていた企業であればスムーズな導入が望めます。こうしたツールの導入も検討しながら、自社の離職率引き下げに取り組んでいきましょう。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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