人事評価にMBOが果たす役割とは? 活用方法についても解説

 2020.08.25  AJS株式会社

MBO(目標管理制度)とはなにか、あるいは人事評価制度への活用方法など、イメージが沸かない人も多いかもしれません。MBOは単に成果を管理するだけでなく、従業員や企業全体の持続的な成長につなげることもできます。

今回は、MBO(目標管理制度)の概要や人事評価への活かし方などを詳しく解説します。

MBOとは?

まずは、MBO(目標管理制度)の概要や、取り入れられている背景などを確認してみましょう。

目標管理制度の概要

目標管理制度は、マネジメントの分野でもその名が知られている経営思想家ピーター・ドラッカーが提唱した、組織におけるマネジメント手法です。企業やグループ、あるいは個人における目標を設定し、その達成度をもとに人事評価を行います。個人の目標においては、各従業員が個別に設定するのではなく、経営目標や部門目標などと連動する内容を上司と相談のうえ定めることにより、個々の主体的なアクションを促します。これにより、業績アップにつながるという考え方です。

MBOが取り入れられるようになった背景

続いて、MBOが広がっている背景を理解し、理解を深めましょう。まず、ビジネス環境や社会環境を広く考えたときに、時代的な変化が大きな背景となっています。

具体的には、従来の「職能資格制度」は終身雇用および年功序列を前提とした制度ですが、この制度では優秀な若手よりも勤続年数の長い従業員が優遇され、職能などによる評価基準がありませんでした。これにより、成果に見合った役職や給与を得られない優秀な人材のモチベーション低下が課題となっていました。

また、テクノロジーの発展などで変化のスピードが速くなっているビジネス環境において、従来の人事評価制度ではカバーしきれなくなってきています。そのため人件費を不必要に上げることなく、貢献度の高い従業員に高い賃金を支払う成果主義が広がりはじめ、その実行において「目標管理」の考え方に注目が集まるようになったのです。

『月刊人事マネジメント』事例掲載
「人事評価制度見直し」決断する前にやること

制度導入のメリット

目標管理制度の導入により、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

まずは、「目標」をしっかりと設定さえできれば、それを基にした評価は容易になります。目標を達成できたかどうか、あるいはどれだけ達成できたかを客観的に計測できるからです。職種や業種にもよりますが、できるだけ定量的に測れるように数値を基準にした目標を設定できるとよいでしょう。

また、目標を明確に定めることにより、従業員は漫然とではなく、目標の達成から逆算して自律的に創意工夫を行うようになります。場合によっては、能力開発にもつながるでしょう。従業員としても充実感を感じ、モチベーションも向上します。個人レベルでこの姿勢が広がれば、企業の継続的な成長が期待できます。

目標管理シートは有用なコミュニケーションツール

目標管理シートは、従業員間のコミュニケーションツールとしても機能します。

目標管理シートとは

まず、目標管理シートとは本記事で解説している目標管理制度を実行する際に鍵となる、成果や目標をドキュメントとして管理するのに使用されるシートです。フォーマットはスプレッドシートやエクセルの形式で作成するのが一般的です。大まかな項目としては、組織としての目標とそれをもとにした個人の目標も記入します。組織と個人の目標がリンクしているかどうかがポイントです。また、評価の対象とする期間も明確に定め、定期的に進捗状況を上司や他メンバーと一緒に確認し、達成に向け必要に応じて軌道修正も行います。

目標管理シートは成果を導くツール

もともと、目標管理シートは上司と部下が目標達成に向けて適切にコミュニケーションを行い、目標を実現するための位置づけでした。しかし、バブル崩壊後、従来の年功序列から成果主義へ移行していく過程において、近年では目標管理シートは目標とその達成度を機械的に測定するための意味合いが強くなってしまっています。

ビジネス環境が刻々と変化しているなか、やはり目標管理シート本来の機能が重要です。単なる物差しではなく、目標のすり合わせをはじめとしたコミュニケーションツールとして捉えて活用しましょう。進捗確認やミーティングを重ねる中で、チームとそのメンバーが同じ目標に向かっている共通認識を持つこともできます。

目標管理制度の効果的な運用方法

目標管理制度の効果的な運用方法について解説します。

その1: 実行と達成度の確認

まずは運用面において、目標管理シートにおいて定めた目標や行動内容の実行とその達成度の確認が重要です。部下をはじめチームメンバーの能力を存分に引き出し、成果につなげるにはいくつかポイントがあります。

  • セルフコントロールと管理のバランス:一方的な指示ではなく、部下のセルフコントロールにある程度委ねる一方、アドバイザーとしてサポートを行うバランス感覚が大切です。
  • 目標達成に向けたプロセスの管理:素晴らしい目標でもプロセスが管理できていないと達成に至りません。プロセスの管理までシートに落とし込めるとよいでしょう。
  • 目標の確認:目標の質によって、目標管理制度の成果が左右されます。プロセスにしっかりと落とし込める目標をメンバーとともに設定しましょう。
  • 臨機応変な軌道修正:目標は設定して終わりではなく、達成度や内部・外部のビジネス環境の変化に合わせて軌道修正が必要になることもあります。

これらのポイントを満たすうえで、やはり管理職のマネジメント能力が問われるでしょう。年功序列制度より評価者の負担が大きくなりますが、マネジメント層の育成の機会と捉え、マネジメント能力の向上につなげましょう。

その2: 客観的な評価・評価後のフォロー

目標の設定と同じくらい、その達成度やプロセスに対する客観的な評価およびフィードバックが大切です。期間ごとに各メンバー自ら評価を行い、その後に上司による評定を行います。目標管理制度においては、「目標達成度」を中心に客観的評価を行うのがポイントです。そのうえで、目標達成に至らなかった場合は、「何が問題だったのか」「次はどのようにすれば目標を達成できるか」を従業員に考えさせ、それをサポートすることで従業員の成長を促します。このプロセスが従業員のさらなる成長につながっていくでしょう。

まとめ

人事評価において、目標管理制度の重要性が高まっています。成果主義的な評価に適しているだけでなく、各従業員の主体性を引き出し、それぞれの成績や企業全体の業績向上に役立てることも可能です。マネジメント職のスキル向上も期待できる目標管理制度を人事評価制度に組み入れてみてはいかがでしょうか。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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