本コラムは、2018年1月15日に公開した「人事評価制度の目的と導入のポイント」に加筆修正して公開しています。
多くの組織で課題となる人事評価(人事考課)制度。
正当な評価がなされず社員のモチベーションアップができていない、業績アップに繋がっていないなど、うまく運用されていないケースも多いものです。
今回は、人事評価制度の目的や導入におけるポイントについてご紹介します。
人事評価制度を効果的に機能させるための4つのポイント
四大経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」の中でも、全ての経営資源と密接に繋がる「ヒト」を生かし、会社を成長させる大きなサイクルとして存在するのが人事評価制度です。
評価項目は職種や役職によって細分化されますが、大きく分けると以下の観点が求められます。
成果・業績評価
職務遂行による成果や業績を見ます。 営業の売上高や管理部門の経費削減など、「利益に直結する結果」からの観点です。
能力・プロセス評価
営業職における商談能力や、製造職の生産ライン見直しなど、職務に必要な知識・能力、成果を出すまでのプロセスを見ます。継続的な成果を上げるためにも必要な観点です。
情意評価
職務にあたる姿勢を見ます。優れた能力があり、結果を出しているとしても、周囲のモチベーションを下げるような勤務態度では、組織全体としての成果は上がりません。社員の納得する、バランスのとれた評価に必要とされる観点です。
評価制度の目的を共有
人事評価制度の目的については後述します
人事評価制度の目的とは
賃金や昇格に関係し、「人事処遇が目的」と思われやすい人事評価制度ですが、そのためだけと考えるには、業務に重量感があり過ぎます。
前述したように、人事評価制度は、会社を成長させる大きなサイクルとして存在します。つまり、半期や1年、2年以上の長期計画における経営戦略を、人事の側面から後押しする手段のひとつなのです。
そのため、経営方針や戦略、課題に沿った具体的な目標を社員に設定し、その達成によって会社全体の業績を上げること。そして、社員のモチベーションを向上させ、育成し、長期的視野でも会社を成長させることが人事評価制度の目的と捉えるべきでしょう。
人事評価制度を戦略ツールとして活用するための3つのポイント
人事評価制度を見直す、あるいは改めて導入したとしても、それが経営戦略の一助とならなければ意味がありません。人事評価制度導入におけるポイントや注意点はどこにあるのでしょう。
経営理念、経営戦略から落とし込んだ制度であること
会社の方向性から外れたところで社員が努力しても、会社全体の業績は上がりません。人事評価制度は経営戦略をバックアップする手段のひとつですから、会社の経営理念やビジョン、経営戦略からブレークダウンしたつくりが求められます。そして、会社の方向性や人事評価制度の位置づけ、自分に求められるものを社員が理解し、皆で同じゴールに向かっていく意識付けができる存在であることが必要です。
公平性、透明性のある制度であること
人事処遇に関わる以上、公平性と透明性は欠かせません。そのためには、職種別、等級別などによる具体的な評価項目と基準を明確にして、それを可視化できる人事評価表(データ)を用意し、評価する必要があります。
また、評価者と評価される社員とのフィードバックへの時間確保も必須です。「会社は自分に対し何を期待しているのか?」「自分のどこがどう評価されているのか?」これらの回答を書面やデータの受け渡しだけで社員が納得するのは難しいものです。また評価者も、社員の意見を吸い上げる機会を逃してしまいます。
公平性・透明性に対する信頼を得るためにも、的確な助言や指導をするフィードバック時間を確保し、コミュニケーションを図ることが求められます。
人材データを蓄積、活用できる運用であること
人事評価は、半期、もしくは1年をワンクールとすることが多いものですが、これは「1クールごとに社員の実績データが会社に蓄積される」ということです。このデータを人事異動や採用などの人事戦略に用いてこそ、人事評価制度を最大限に活用していると言えます。
「〇〇の項目において、A評価以上を3年以上維持している社員は何人いるのか」「この社員が、今までどんな仕事をしてきて、どんな成果を上げてきたか、時系列で見たい」
――このようなデータ抽出ができることで、根拠ある人事戦略を進めることが可能となります。制度の導入だけでなく、運用開始後の追求も、重要なポイントと言えるでしょう。
こちら「人事評価制度を人材育成につなげるために必要なこと」記事もご参考にしてください!
注意すべき人事評価エラー
上述の公平性に関連しますが、人事評価制度には、評価者によって評価に違いが出てしまう「評価エラー(考課エラー、評定誤差)」と呼ばれる注意点があります。同じ出身地であるなどの理由で親近感を持ち、評価が甘くなる「近感エラー」、評価基準ではなく、評価者自身と比べてしまう「対比誤差」など、エラーの種類はさまざまですが、どれも評価者の違いが生み出してしまう人間的な問題です。
とはいえ、「人間だからバラツキがあって当たり前」と放置していては、公平性は保たれません。不公平に感じる評価とそれに付随する人事処遇は、社員に不満をもたらし、人事評価制度の目的である業績向上にも、また人材育成にも繋がりません。人事評価制度を効果的に運用するためには、評価者研修などを必要に応じて行い、フィードバックスキルを含め、評価レベルを一定に近づけていく努力が必要です。
成長できる強い組織をつくるためには、組織を構成する者すべてが同じゴールを意識することが重要です。会社の方向性やビジョンを反映させた人事評価制度は、社員が最大のパフォーマンスを発揮し成長するために必要な「人材マネジメントツール」として、活用が望まれます。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー
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