人事評価における能力評価シートとは? 社内での活用方法や運用のポイント

 2020.10.08  AJS株式会社

給与や待遇に直結する人事評価は社員のモチベーションに直結する事柄であるだけに、公平な運用が行われるように務めなくてはなりません。人事評価制度の運用で、評価の土台になるのは評価対象者や評価者が記入する「能力評価シート」です。今回は人事評価を行う際に使用する能力評価シートについて、その概要や運用のポイントについて紹介します。

人事評価における能力評価シートとは

人事評価制度を整備し人員の配置や給与の決定などに運用している企業では一般的に、「能力評価シート」を利用して人事考課を行っています。企業によっては「人事評価表」「人事評価データ」などという名称の場合もあります。このシートの目的は人事評価のプロセスと内容を可視化して分かりやすいものにすることで、目標やその達成度、ランク付けや評価コメントなどを記入して運用します。

人事評価で能力評価シートを活用するメリット

対象者一人ひとりについて客観的で公平な人事評価を行うためには、業績などを具体的にリストアップして明確にすることが大切です。評価シートを用いるメリットとしては次のようなものが挙げられます。

従業員のスキルアップやモチベーションアップが期待できる

まず、あらかじめ決められた基準に従って分かりやすく構成された評価シートを採用することで、従業員のスキルアップや業務に対するモチベーション向上につなげやすくなるという点が挙げられるでしょう。

目標を定めず、日々の業務を当てもなくこなしている状況では業績や成果などについての実感がわかず、仕事へのモチベーションも下がり、その結果企業全体の業績が伸び悩むこともあります。明確な目標を定めれば業務でやるべき具体的な内容も明確になりやすく、従業員自身の内的な動機付けに役立てることができます。また、個々の従業員の目標達成率などを定期的に確認しながらこまめにフィードバックすることで、従業員のいっそうのスキル向上を目指すこともできます。さらに、目標に売上額や契約数などの具体的な数値を設定すれば、より正確で客観的な評価につながり、フィードバックもきめ細かい内容で行うことが可能になります。

評価の納得感を高める

具体的な情報を記載した能力評価シートを使うことで、評価や評価のランク付けに対する納得感を高められるという効果もあります。シートに記載することで、設定した目標に対してどのような結果が得られたのかなどを可視化できるというのがその理由です。

能力評価シートは、最初に年次など決められた期間の目標を記載し、期間の終わりにその目標を振り返って達成や未達成、自己評価について記載するスタイルとなっています。この目標を設定して結果を把握し評価するまでの一連のプロセスを踏むことは、従業員にとっても業務について客観的に見て、改めて考え分析する絶好の機会でもあります。また、評価シートにはあらかじめ決められた評価項目と評価の基準などが分かりやすく表示されています。このシートを全ての評価対象者に前もって配布することで、評価基準をあらかじめ明確にできるという効果があることも見逃せない要素です。

評価シートの導入は、評価内容に説得力を持たせるという意味でも非常に大きなメリットがあるといえます。

人事評価で能力評価シートを運用するポイント

それでは、能力評価シートを実際に運用する場合のポイントについて詳しくみていきましょう。

適切な目標設定の実施

最初に注意しておきたいポイントは適切な目標の設定です。業務の内容によって、数値目標を掲げやすい部門とそうでない部門があり、それぞれ異なる対応が必要です。

『月刊人事マネジメント』事例掲載
「人事評価制度見直し」決断する前にやること

営業などの部門では、売上額や契約数など成果が数字に表れやすく、数値目標も設定しやすいと言えるでしょう。一方、総務や人事などの管理部門では、具体的な数値による目標が立てづらい場合もあります。ですから、部門によってそれぞれ目標設定の内容を工夫していく必要があります。

営業部門などのように、売上高前年比、売上目標額などの形で具体的な数値目標が立てやすい職種では、具体的な数値目標に加え、その目標を達成するためのプロセスについても詳しく記載するようにするとよいでしょう。その際は、「休眠顧客へのアプローチや訪問営業を10件以上こなし、前期実績比110%を達成する」など、目標と達成のプロセスを具体的に盛り込んで明記することが大切です。

では、管理部門などはどのように目標設定を行ったらよいでしょうか。総務などのセクションでは概して「ミスをなくす」などの抽象的な目標設定になりがちですが、こういった部門においても可能な限り数値に基づく定量的な目標を立てることが望まれます。たとえば「一括購入や割引キャンペーンを利用して、部署内の消耗品費を前期比5%削減する」など、成果が判定しやすい内容を目標として設定するとよいでしょう。

製造などの専門職の場合も同様に数値で目標設定を行うことが望ましいといえます。製品製造のコストダウンや工数の削減など、実際に数値に表れる内容を目標として設定しましょう。

納得感ある評価コメントの記載

運用を軌道に乗せるためには、納得感を与えられるような評価コメントを記載できるかどうかも非常に重要です。

あらかじめ設定された目標に対して、達成ができたかどうかや評価の結果としてのランク付けを記載しただけでは評価シートを十分に活用できているとはいえません。評価ランクなどのほかに、自分に与えられた評価が妥当であると対象者に納得して受け入れてもらえるような内容をコメントに残し、対象者とコミュニケーションを取っていくことが大切です。コメントの内容が理不尽であったり納得感のないものであった場合、対象者の業務に対するモチベーションを著しく低下させてしまうだけでなく、そのコメントを記載した上司への信頼が大きく損なわれる可能性もあります。ですから、コメントを能力評価シートに記載するときには、評価対象者にとって有用な内容であり、納得感を与えられるものになるように配慮する必要があります。

フィードバック面談の実施

しかし、決められた周期ごとに能力評価シートに達成・未達成を記入していくだけではなく、シートを活用してフィードバック面談を行っていくことも人事評価制度の運用には必要不可欠なプロセスです。他者の視点から受けるフィードバックは、自身では気付きにくい課題を洗い出すことができるので、新たな手法を考えたり別のアプローチを編み出すヒントにもなります。

営業部門なら売上目標達成までの過程でその都度フィードバックを行い、細かい軌道修正が素早く行えるようにすれば、最終的な営業成績をさらに向上させることができるかもしれません。

ですから、上司の立場にある場合は、部下の目標達成の進捗度合いを確認しながら、面談を行いフィードバックする形でサポートを行っていくのが理想的なスタイルです。また、フィードバックのための面談を繰り返し行うことで部下と細かくコミュニケーションを取り信頼関係を構築することができますし、評価対象者の自己評価と客観的な評価の食い違いを埋めていくことにもつながります。また、これらの関係構築が人事評価を理由としたトラブルなどを未然に防ぐことにも大きく役立ちます。

全社的な運用でさらに効果的な人事戦略に

能力評価シートは、導入しただけで大きな効果を発揮するというものではありません。シートを効果的なものとするためには、目標設定からフィードバック、人事評価への利用まで、社内全体で適切な運用ができるように努めることが取り組み全体の質を高めることになります。ここでは全社的に運用していく際に気をつけておきたいポイントを紹介します。

評価者が付けた評価の質を担保する

まず、評価者が行う評価の質が一定の基準を満たしており、不適切な評価がなされないことが保証されていなければなりません。評価者によって評価の内容に著しく偏りが出ることを防ぐために、評価担当者が定期的に集まって評価方法についてすり合わせを行うのは、評価の質をそろえるために有効です。

人事担当の部門でも評価コメントを都度チェックして、適切なフィードバックがなされているかどうかを確認しましょう。

社内一元管理によって人事戦略へ活用する

能力評価シートは部門で管理するのではなく、社内で一元的に管理して人事異動や採用など人事戦略に広く活用することが理想です。一元管理で全ての社員の情報を1か所に集めることで、人事的な課題をさまざまな角度から分析する作業もスムーズになり、その結果、人事異動や新規採用など各種の人事戦略に活用しやすくなるという利点があります。

社員のモチベーション向上やスキルアップといった個人的な目的だけにとどまらず、部門全体の得意とする業務内容や足りない人材などの傾向も可視化することで、仕事の効率が大幅に改善され、生産性の向上につなげることもできるでしょう。

参考:厚生労働省のテンプレートについて

ここまで能力評価シートの概要や運用のポイントなどについて触れましたが、実際に能力評価シートをどのように作成して活用すれば良いかなど、具体的な内容になかなか手が回らないことも多いのではないでしょうか。

そのような場合には、厚生労働省が公式Webサイトで公開している能力評価シートのテンプレートを使用する方法があります。

厚生労働省のサイトにはあらゆる業種に関して職種・職務別に細かく設定された職業能力評価基準のモデルや詳しい解説が掲載されています。実際に使える能力評価シートのテンプレートがMicrosoft Excel形式でダウンロードできます。さまざまな業種や職種のテンプレートが網羅されており、非常に利便性の高いものとなっています。また詳細な評価ガイドラインも併せて公開されています。運用に迷ったら、まずテンプレートを利用してみるのもよいでしょう。
参照:厚生労働省「職業能力評価基準について

まとめ

今回は人事評価で使用する能力評価シートの概要や運用のポイントを紹介しました。能力評価シートは従業員本人や評価者が目標や達成度などを書き込んで運用するツールで、評価の質を上げることを目的としています。個々の社員に適切な評価やフィードバックを行い、モチベーションや業績の向上を目指すにはシートで得られる情報を活用することが非常に重要です。能力評価シートをモチベーションアップや人事戦略に有効に活用するために、その導入・見直しを是非検討してみてください。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
『月刊人事マネジメント』事例掲載

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