人事評価制度とはあらかじめ定められた基準に従って従業員を評価し、適切な人事配置や人材育成を行い生産性の向上につなげるための制度です。客観的で公平な人事評価を行う方法として、評価を点数化する方法が多く取り入れられています。この記事では人事評価の基準を点数化する意味や問題点、評価を点数換算する際のポイントについて詳しく解説します。
人事評価の点数化とは
人事評価は人材を確保し適切な育成や配置につなげるために行うものですが、人事評価を点数化するということはあらかじめ定めた評価項目について従業員を数値化して評価する方法です。
人事評価に明確な制度を定める理由は、従業員の働きに応じた適正な報酬の分配を従業員が納得する形で行うことにあります。いくつかの評価項目をつくり、それぞれの項目について具体的で分かりやすい基準を設けて、その基準に照らし合わせて点数化して評価を行います。これにより業務の成果や態度などについて数値の形で比較することが可能になります。点数化は、評価者の主観に左右されない、より正確で公平な評価を行うための仕組みとして人事評価に取り入れられています。
また、点数化にあたって評価項目に具体的な基準が設けられることで、従業員の目標が明確になり、モチベーションを上昇させる効果も期待できます。生産性の向上につながるより理想的な人事評価に近づけるためには、分かりやすい評価項目の設定もまた大切な要素です。
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人事評価の点数化におけるポイント
人事評価を点数化するにあたって押さえるべきポイントを紹介していきます。
評価の種類を設定する
まず、評価の項目を分けて、個別にルールを定めていきます。代表的な評価項目に「業績評価(成果評価)」「行動評価」「態度評価(情意評価)」「能力評価」の4つが挙げられます。業績評価は、所定の期間における従業員の業務実績や成果で判断が行われる評価です。この項目では成果の達成度を点数で表し評価を行います。例えば営業職のように具体的な販売目標数や売り上げの目標金額がある場合は、その数値をどの程度達成できたかを数値をもとに判断します。一方、事務職などのように成果を具体的な数値で表しにくい職種の場合は、与えられた業務内容に対してどの程度達成できたかを判断し評価する定性的な評価を行います。
行動評価では従業員が業務を行う過程、プロセス自体を重視し評価します。業績評価と行動評価は相互に関連するものであり、プロセスを重視するあまり結果が伴わないことがあっては、生産性を上げるという企業本来の目的から逸脱してしまい本末転倒です。行動評価によって個々の従業員の生産性を向上させる、利益を追求するという意識を促すことが大切です。
態度評価では仕事に取り組む姿勢や勤務態度、チームワークなどについて評価を行います。態度評価は評価者の主観に影響されやすい要素で、評価者によって判断の基準が異なりばらつきや不公平感が出やすいため、できるだけ客観的に判断できるような明確な基準が設けられていることが必要です。
態度評価の一般的な項目設定には「協調性」「規律性」「責任性」「積極性」などが挙げられます。項目を設定することで、企業が求めている事柄を従業員に明確に伝えることができるという効果もあります。
能力評価は組織から与えられた業務を遂行するために必要な知識や技能が備わっているかを判断するものです。評価項目には「企画力」「実行力」「理解力」などが含まれることが多くなっています。また、資格の有無も判断材料の一つとなります。
基準を設定する
評価の種類と項目を設けると同時に評価の基準を設定します。これは共通の尺度(ものさし)を設けることで、評価者によって生じるばらつきを最小限に抑えることを目的としています。基準には従業員全体に共通で適用される「共通基準」と、職務や役職に応じた「個別基準」に大別されます。
共通基準は組織全体として全社員に共通で求めるレベルを明確にするために定められる尺度です。具体的には「期待した要求を満たしている」「期待した要求を大きく下回る」などの同一の尺度に沿って個々の従業員に評価点を与える方式で行われます。
個別基準は職務別、役職別に設けられた尺度で、共通基準とは異なり職務ごとの具体的な内容を問うものとなっています。例えば営業職なら目標の新規顧客開拓数に対して達成した実際の契約数などより具体的な内容で評価基準が定められます。職種に応じた基準で具体的な尺度を設けることで、評価される側も自分に足りない部分や今後の改善ポイントなどを明確に知ることができるというメリットもあります。
ウェイトを設定する
部署や役職によって責任や企業への貢献度はさまざまですから、それぞれの評価をどの程度重視するかという比重をポジションに応じて設定するのがよいでしょう。職種が同じ場合でも、新入社員と中堅社員とでは求められる内容やレベルが異なります。新入社員から管理職まで責任が重くなるにつれて成果評価にウェイトを置いたり、業績を上げにくい新入社員に対しては業務に取り組む姿勢など態度評価や行動評価に比重を置いたりすることが一般的に行われています。
これらの種類・項目ごとのウェイト配分については定期的に見直しを行い、企業の経営状況や体制などに合わせて最適な設定になるように調整することが必要です。
複数の評価者を置く
評価にあたっては、直属の上司を1次評価者とし、2次評価者に上位の管理職を据えるなどして複数の評価者を置いてより適切な評価を目指すことが行われます。この時、必要に応じて点数の調整を行うこともあります。複数の評価者を置くことで、1次評価者の誤りを訂正したり、評価の客観性を担保し公平感を高めたり、従業員の理解を得やすくなる効果などが期待できます。
人事評価の点数化をした場合のシート構成
人事評価の点数化を行う場合、表形式の評価シートを職種別や役職別に設定します。この表の縦軸には「決めた目標を達成できたか」「適切な判断を行えたか」「自発的に動くことができたか」など「業績」「行動」「態度」「能力」を評価するための具体的なチェック項目を並べます。そして横軸の項目には各チェック項目に対する従業員本人の配点、1次評価者の配点、2次評価者の配点を順に並べていきます。
このとき、縦軸のチェック項目は、なるべく具体的に設定したうえで、達成の成否に関する判断基準をあらかじめ明確にしておくことが大切です。
もちろん、縦軸に並ぶチェック項目の内容は企業や職種によって異なりますし、横軸の評価者の人数や役職は組織によって異なるでしょう。自社の実情に合った構成のシートを作成しましょう。
人事評価の点数化に関する問題点
人事評価を点数化して行うことには問題点もあります。点数化の問題点を解説します。
評価者による「ばらつき」の問題
一人の人間が全従業員を評価するのではなく、複数の評価者が評価を行う場合はばらつきが出やすくなります。評価者それぞれの主観が異なるため、全体的に低い点数をつける「辛い」評価者もいれば、部下の平均点が高い「甘い」評価者もいるでしょう。評価者によるばらつきの影響を最低限に抑え、より公平な評価を行うためには評価の数値を調整する必要があります。
調整の方法としては複数人で話し合って調整する方法もありますが、点数評価の場合は全社の平均点を参考に点数を調整したり、標準偏差を用いて調整する方法などがしばしば採られます。
点数だけでは分からない部分の問題
同じ点数がつけられていたとしても、評価の内容が全く異なる可能性があります。また、例えば4.1点と4.2点の間にある0.1点の差が示す意味が何であるのか明瞭ではなく、評価対象者に不信感を抱かれることもあります。これらの点数で表現できない部分を考課者に伝えたい場合は、必要に応じて面談などによるフィードバックを行って説明したり、今後のアドバイスをしたりするなどの機会を設けるとよい場合もあります。
まとめ
人事評価を数値に置き換えて表す点数化方式を取り入れるにあたっては、明確な評価項目や基準を設けるだけでなく、公平な評価を行うために評価の比重を変えたり、評価の質を可能な限り一定にしたりする工夫などが必要です。今回紹介したポイントを踏まえて、適切な形で点数化を実施していきましょう。
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