企業が社会に貢献し、より大きく成長していくためには優れた人材の育成が必要不可欠です。体系化された目標管理制度を人事評価に組み込むことは、従業員のモチベーションと生産性を高めることに繋がるでしょう。そこで今回は目標設定の重要性と活用方法をご紹介します。
人事評価における目標設定の重要性
多くの企業において昇進や賞与など、従業員の処遇を決定する基盤となるのが人事評価であり、最近は人事評価に目標管理制度を取り入れる企業が増えています。人事評価制度とは、従業員を育成して生産性の向上を図り、企業の業績アップに繋げるためのシステムです。そこに目標管理制度を取り入れることで、より効率的なマネジメントを行うことができるでしょう。
企業の存在意義は事業活動を通じて社会に貢献し、利益を得て活動を継続・発展していくことにあります。企業がより大きく発展していくためには、最終的なゴールに至るまでの目標を明確にする必要があります。明確な企業目標が定まることで、組織という大きな船の行き先が定まります。それにより、従業員一人ひとりが何を求められ、何をすべきなのかという個人目標の設定をすることができます。個人目標が明確になることで生産性の向上やモチベーションアップにも繋がり、それが企業の業績アップに繋がるという好循環が生まれます。
また明確な目標を設定することで、ゴールに辿り着くまでの進捗を可視化し、定期的に達成度を確認することで、目標に向けた計画的な業務遂行を行うことができるでしょう。万が一目標とする値から大きく逸脱してしまった場合でも、現在置かれている状況を客観視することで軌道修正を図ることができます。
目標設定の際におさえたいポイント
目標はただ設定するだけでは意味がありません。正しく運用してこそ価値を生みます。適切な目標設定は、人材育成だけでなく企業の成長にも繋がる重要な要素です。ここでは目標設定の際に押さえておきたいポイントをピックアップしてご紹介します。
事業目標を考慮する
個人目標を設定する上で最も大切なことは、企業が掲げる事業目標を基盤とすることです。企業の目標を達成するために個人目標が存在し、個人が目標を達成することが企業の目標達成に繋がる必要があります。
目標設定の一例を挙げてみます。例えば、企業目標が営業利益を前年比10%アップすることだと仮定します。その目標を達成するためには新規顧客の獲得やリピート率の上昇といった、目標を達成するために実現しなければならない指標が可視化されます。それを基に、営業チームは新規営業先を獲得するという目標が設定できます。すると、営業スタッフは新規顧客のアポイントメントを取るという具体的に取るべきアクションが見えてきます。
このように企業が掲げる事業目標を基盤とすることで、従業員は何を求められているのかが明確になり、具体的な目標とアクションプランを設定することができます。
SMARTの法則に基づいた目標を設定する
目標設定のフレームワークで代表的なものに「SMARTの法則」があります。これは1981年にジョージ・T・ドラン氏によって発表された理論で、「Specific」「Measurable」「Achievable」「Relevant」「Time‐bound」の頭文字を取って「SMARTの法則」と呼ばれています。
SMARTの法則に基づいた目標を立てることで、目標を具体的なアクションプランとして落とし込めるため、行動に対するモチベーションを高めることができます。それによって「会社と従業員の方向性の共有」、「取り組むべき課題の明確化」、「コミュニケーションの活性化」といった効果も期待できます。
それでは、SMARTの法則について簡単に解説していきましょう。
「Specific(具体的)」
「Specific」とは具体性を指す言葉です。曖昧な目標では何をどのように始めればいいのかわかりません。明確で具体的な目標を設定することによって、「どこから始めて」「どこに辿り着くのか」が明確になります。
「Measurable(測定可能)」
「Measurable」は目標が測定可能かどうかを指します。計量的に具体的な数値や指標を設定するということです。たとえば前年同期比120%増、3万PV/day達成、などです。目標を数字に落とし込むことで、達成までの距離が現実的に理解できます。また、目標達成率や進捗状況が可視化されることで、必要に応じて目標の軌道修正が容易になるというメリットもあります。
「Achievable(達成可能な)」
「Achievable」は達成可能かどうかを指す言葉です。目標は達成してこそ意味を持ちます。あまりにも非現実的な目標を設定してしまうとモチベーションの低下を招き、目標未達に終わってしまいます。目標は高すぎても低すぎても良い結果を生みません。達成可能と考えられるギリギリのラインで設定しましょう。これ以外にもAssignable((割り振り)適度な役割分担と権限の割り振り)という場合もあります。
「Relevant(関連性)」
「Relevant」は関連性のことを指します。目標を達成することで、どういった結果やメリットが得られるのかが可視化されている必要があります。会社のために利益を生むことが、自分にとってどのようなメリットをもたらすのかが明確になることで、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。Relevant以外に、Realistic(現実的な(現実に沿った目標設定をする))という場合もあります。
「Time-bound(期限が明確)」
「Time-bound」は期限を定めることを指します。目標設定は期限を設けることで達成率が高まります。「近日中に」といった曖昧な表現ではなく、具体的に「何月何日」までに達成するという期限を設けることがポイントです。目標を達成する期限を決めることで、逆算思考して今なにをすべきかを明確化でき、具体的な行動へと繋げられます。
目標設定シートを活用する
目標設定には様々な手法が存在しています。その一つが目標設定シートを活用する方法です。設定した目標を目標設定シートに落とし込むことにより、目標達成へ向けて計画性を持って動き出すことができます。
目標達成シートを作成する目的は、目標を明確にして可視化することにあります。目標は頭の中に思い描くだけでは具体的なアクションプランが見えてこないため、なかなか行動に移すことができません。そこで「SMARTの法則」や「5W1H」のようなビジネスフレームワークを目標達成シートに落とし込みます。
※5W1HとはWho(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)を指し示す言葉。
目標シートの書き方に注意することで、具体的にどのような行動を起こしていくべきかが可視化されやすくなります。例えば、以下のように書くことで目標がより具体的に、明確になります。
- 目標:達成すべき目標は何か?
- 達成基準:どのレベルまで達成するのか?
- 達成期限:いつまでに目標を達成するのか?
- 達成方法:どのようにして目標達成を目指すのか?
- 成果:目標を達成することで何が得られるのか?
設定後の目標管理がさらに大切
従業員の自律的な行動と管理者の進捗管理、そして従業員と管理者の適切なコミュニケーションがなければ目標達成は難しいものになるでしょう。目標は実際に行動に落とし込むことが重要であり、達成してこそ意味を持ちます。そのためにも設定後の目標管理は重要です。
管理者が定期的に進捗を確認することで、チームや個人が取り組むべき課題が可視化され、解決に向けて具体的なアクションプランを作成することができます。例えば、取り組みの進捗を面談で確認し、適切なアドバイスやフォローをすることは有効な目標管理手法です。上司部下の風通しがよくなったり、新たな発見につながったりするでしょう。チーム一丸となって目標達成に取り組むという連帯感も生まれ、モチベーションの向上にも繋がることが期待されます。
目標が未達だった場合は原因を追求し、具体的な改善案を提示しなればなりません。未達の従業員に処分を下すだけでは目標管理制度は機能しません。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のPDCAサイクルを繰り返し行い、継続的な改善を試みましょう。
目標管理はシステム利用がおすすめ
目標管理や人事評価制度は、企業の業績アップに欠かせない重要な要素です。しかし、進捗確認の面談や評価シートの正確な記入などを含む煩雑な作業に、多くの時間を取られてしまいがちです。また、一人ひとりの部下について、正確・公正な評価をすることは非常に難しいことでもあります。
こういった課題は、多くの場合システムを導入することで解決に導くことができます。データによる正確な集計や関連するファイル管理が容易になり、情報の整理がしやすくなります。また、評価の進捗が可視化されることで、評価関係者(被評価者、評価者、人事部門)が進捗管理をしやすくなります。こういった作業効率が上がることで、コスト削減や時間節約にも繋がります。
近年、目標管理の重要性が認知され、様々な目標管理・人事評価システムが登場していますが、人事評価システム「P-TH+(ピースプラス)」は、現在利用しているExcel評価シート、人事評価制度、ワークフローなどを流用してそのままシステム化することができます。そのため、システム導入後、一からデータ入力をする必要がありません。目標管理や人事評価を一元管理してシステム化したいが、既存の仕組みや流れが変化することは避けたいという企業におすすめです。
P-TH+を導入することで、今まで手作業で作成していた目標管理や評価制度を自動化したり、進捗をリアルタイムで確認したりすることが可能になります。膨大なデータを一元管理し人事業務を効率化することで、人件費などのコスト削減にも繋がるでしょう。また取得したデータを元に集計・分析することで、人間の思い込みや主観といった曖昧な評価をなくし、公平・公正な評価が可能になります。
会社全体の生産性を高め、従業員にとって働きやすい職場づくりを目指す企業は目標管理・人事評価システムの導入検討をおすすめします。
まとめ
目標設定においては、企業が掲げるビジョンと個人の目標を紐付けることが重要です。そうすることで、組織と個人の方向性が共有されます。またその達成に必要な成果指標を視覚化することで、従業員一人ひとりが何を成すべきかが見えてきます。設定後は、日々の進捗管理とフィードバックを徹底することで、目標達成意識や連帯感が高まり、会社の利益向上へと繋がるでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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