人事評価制度に廃止の動き? 新たな評価の手法とは

 2020.08.17  AJS株式会社

近年では、「人事評価制度を廃止する」という動きが話題に上るようになっています。この記事では年次でランク付けを行う人事評価制度を廃止し、ノーレイティング方式に移行することについて、ノーレイティング評価のメリットやこの制度が抱える課題など複数の観点から解説していきます。

アメリカでは人事評価制度を廃止する動き

米国で従来型の人事評価を行わないという動きが新たに出現しています。これは、社員への評価付けを完全に廃止するという意味ではなく、数字や記号でランク付け(レイティング)する形での評価をやめるという動きを指しています。

基準に照らし合わせてランク付けを行う従来型の人事評価に替わるこの手法は「ノーレイティング」と呼ばれています。米国では2010年代に入ってこの方式を採用する動きが起こり、GEやマイクロソフト、Googleなどの名だたる企業が従来の制度から移行を始めています。

従来型の人事評価制度では、年初に立てた業務目標に対し、目標達成度などの実績を踏まえて年度末にランク付けを行い、フィードバックを行うといった手順が踏まれていました。しかし、多種多彩な専門性が求められる現代では、一定の人事評価項目や評価基準で評価を行うことが難しくなってきました。

そこで編み出された手法が「ノーレイティング」です。業績と達成度を測ってランク付けする「9ブロック(ナインブロック)」という評価基準で知られるGEは、一世を風靡したこの業績評価システムを2016年に全面的に廃止し「パフォーマンス・ディベロップメント」と呼ばれるノーレイティング型の新制度に正式に移行しています。

なぜ廃止に至ったのか?人事評価制度の抱える課題

従来型の制度を廃止して新しい手法を取り入れるようになった背景には、人事評価制度がはらむ課題も大きく関係しています。ここでは人事評価制度の課題について解説します。

時代の変化

これまでよりも時代の変化が速くなり、ビジネスを取り巻く環境も急速に変化するようになっています。そのため、新製品などを実際に投入した後に改善点が見つかれば、即座に対応してよりよいものを提供していくことが重要になっています。

こういった絶え間ない改善や改良を続けるためには従業員の業務目標も迅速に設定し直す必要が生まれることもあります。しかし、年次などの単位で評価を行う従来型の評価方式では、目の前の事象への対応を評価対象とすることが難しいため、マーケットへの対応が遅れて利益を逃す可能性もあります。

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そこで、年次での目標設定やフィードバック実施をリアルタイムで行う目標設定やフィードバックに置き換えて、現場の活性化や生産性の向上が期待できるものに変えていこうとする動きが生まれました。めまぐるしい変化に追いつき対応していくために、目標設定やフィードバックも迅速に行う必要が出てきたというわけです。

人事評価制度が抱える課題

人事評価制度を運用していると評価項目の基準が曖昧になったり、評価者個人の好き嫌いが評価に影響したりすることがしばしば起こるため、対象者が評価に納得できず不満を抱えてしまうことがかねてから課題として挙げられています。

実際に、人材関連サービス会社のアデコが1532人を対象に行った「人事評価制度に関する意識調査」では、勤め先の人事評価制度に「満足している」と答えた割合は全体の37.7%にとどまる一方、「不満」という回答の割合は62.3%となっているのです。不満を感じている理由として「評価基準が不明確」という回答が全体の62.8%で、「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」という回答は全体の45.2%を占める結果になっています。

このような調査結果からも、人事評価に対する不満や疑問を抱いている従業員が少なくない割合で存在することがうかがえます。

ランク付けが相対評価で行われる場合は、所属する集団によって評価が左右されるため、自身の評価とかけ離れた評価が下されることも少なくありません。また、評価が固定化しやすいなどの特徴もあります。その結果、自分の努力や成果が評価されていないと感じた従業員のモチベーションが下がり、生産性の低下を招くこともあります。

ノーレイティング導入のメリットとは?

この点、ノーレイティング方式には従来型の人事評価制度にはないメリットがあります。メリットの例を挙げてみましょう。

評価エラーを減らす

ノーレイティングの大きな特徴の一つは、評価対象となる業務から実際に評価を受けるまでのタイムラグがないことや、面接の頻度が高いため不当な評価が起きにくいというメリットがあります。

従来型の評価制度では、半年や1年間など定められた期間の業績が対象になるとはいっても、実際には記憶に新しい直近の実績だけで評価されてしまい、過去の実績に対する評価が適切になされない可能性もあるため、評価の正当性に疑問が生まれる可能性もあります。

その点、ノーレイティングでは実際の行動や成果から評価までタイムラグがないことや、即時にフィードバックが行われることで、好ましい成果を正しく評価でき、改善すべきポイント直ちに部下に伝えてスピーディーに改善を図ることも可能です。評価者と評価対象者の双方で気になる点があればすぐにフィードバックできる環境を制度として作ることで、上司の評価作業が軽減されて、部下の不満が溜まりにくくなる効果も期待できます。

社員のモチベーション向上

この方式では上司と部下が日常的に1対1で面談を実施し、目標設定や日々の業務のフィードバック、問題改善指導を行うことになります。このような機会を継続することで、従業員の内発的な動機づけを促して、作業パフォーマンスが向上することを期待できます。この方式はリアルタイムであることから、ある特定の「評価」に対して、なぜその評価が導き出されたのかの確認がしやすく、納得感や信頼感を高める効果もあります。上司と従業員の間に信頼感などのポジティブな人間関係が構築されることもまた、従業員のモチベーションアップにつながる効果があります。

ノーレイティング導入時の注意点

この方式では定期的に面談を行う必要があります。つまり、部下全員に対する面談の時間を確保しなくてはならず、評価者の時間的な負担がより増えてしまう面があります。ですから、この方式を導入するにあたっては人事部門のサポートが必要不可欠です。

また、効果的な面談ができない場合は上司と部下の信頼関係が崩れてしまうなど、評価者には精神的にも負担がかかることは否めません。

今後は日本の企業でも普及が進むことも考えられますが、この方式には課題も多く、現在の制度とそのまま入れ替えることは現実的には難しいと考えられます。ノーレイティングの導入を検討する場合は、社員全体の理解を得た上でサポート体制を整えるなど細心の配慮が必要です。

導入に先立って、まずは面談の実施回数増加や面談やフィードバックの技術を身につけるためのコーチング研修を取り入れるなど、できることから始めてみるとよいでしょう。

まとめ

米国では新しい評価制度としてノーレイティングが普及し、日本でも導入を進めている企業もあります。しかし、導入する際にクリアすべき課題も多く、大半の企業にとってはそのまま取り入れることは難しいかもしれません。ノーレイティングが自社に適しているかを検討して、実施する場合には態勢を十分に整えておくことが必要です。

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