人手不足や生産性向上のために、業務効率化ツールを取り入れる動きが盛んです。とはいえ、ツールが多過ぎて結局どれを取り入れるべきか迷っている方も多いでしょう。この記事では、さまざまな業務効率化ツールの種類と選び方のポイント、ツールの活用事例をご紹介します。
業務効率化ツールの必要性
働き方改革の広がりや感染症対策もあり、業務の見直しを迫られる企業が増えています。さらに見逃せないのが、今後ますます進む人手不足や、生産性向上の必要性、といった点です。これらの点について詳しく知ると、業務効率化ツールの必要性を一層理解できるでしょう。
深刻な人手不足
中小企業庁が2017年に行った調査によれば、人手が「やや不足」と答えた割合は約6割、「大いに不足」は約2割で、人手不足と考える中小企業の割合は合わせて8割に上りました。
また、リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査でも、中小企業は求職者に対して求人数が圧倒的に多い状態が続いています。特に300人未満の企業では、2020年卒の求人倍率が約8.6倍と深刻です。
今後も少子高齢化は進み、国の推計では2029年には労働生産人口が7,000万人を下回ると見られるなど、人手不足は加速すると予想されています。業務効率化を進めて一人当たりの生産性を上げていくことが急務といえるでしょう。
生産性の向上
ICT(情報通信技術)を活用することで、単純作業を減らし、効率よくコミュニケーションを行えるようになれば、従業員を生産性の高い業務に集中させることができます。時間や気持ちに余裕が生まれることで、従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すことも可能です。
また業務効率化ツールで業務の依頼や内容、進捗状況などを可視化すれば、人為的なミスも減るでしょう。チーム全体の進捗管理も容易になり、チームマネジメントにも役立ちます。
業務効率化ツールの種類
業務効率化ツールはさまざまな種類があります。ここでは、目的や用途別に6つに分類してご紹介します。
コミュニケーションツール
業務に関する連絡や相談など、意思の伝達をスムーズにするのが「コミュニケーションツール」です。「ビジネスチャット」ではメールよりも気軽にやり取りできますし、「Web会議ツール」ではテレワークの社員とも顔を見ながら話し合えます。資料の共有なども画面上で簡単に行えるのが便利です。社内の情報やノウハウを共有できる「社内SNS」もあります。
いわゆる「報連相」だけではなく、何気ない会話なども交わしやすくなることで、チームワークや社内の連帯感向上にも役立つでしょう。スケジュール連携やアラート機能などが搭載されているものも多く、漏れを減らす助けにもなります。価格も安価なものが多く、導入しやすいでしょう。
タスク・プロジェクト管理ツール
タスクやプロジェクトの進行具合を可視化し、簡単にチームで情報共有できるようにするのが「タスク・プロジェクト管理ツール」です。
個人でそれぞれタスク管理している場合と違って漏れが生じにくく、手戻りが生じてプロジェクト全体に大幅な影響が及ぶような事態を避けられるでしょう。遅れがあってもほかのメンバーや上司が気付いてフォローに回れるため、チーム全体としてのプロジェクト進行がスムーズに進みやすくなります。
タスクの優先順位も一目瞭然で、書き換えも容易です。カレンダースケジュールやチャット、進行状況をグラフ化する機能などもあります。ツールにより機能や用途、運用コストが異なるので、自社の規模や目的に応じて選ぶのがポイントです。
RPAツール
「Robotic Process Automation」を略した「RPA」は、「ソフトウェア型ロボットによるデスクワークの自動化」を意味します。PCによるデータ収集やバックオフィスの業務の一部を自動化することで、作業時間を大幅に短縮させられます。
AIのようにデータベースをもとに判断することはできませんが、データ処理など単純作業であれば、正確に短時間で作業を終わらせられます。機械ですので疲労による人為的なミスもありませんし、必要であれば24時間作業することも可能です。
プログラミングせずに操作パネルでの選択のみで、専門的な知識が必要なくても操作できる点もメリットです。デスクトップ型やサーバ型などから選べます。
ペーパーレス化ツール
社内の稟議書、取引先との契約書や発注・請求書などこれまで文書で行っていた手続きをクラウド上で管理するのが、「ペーパーレス化ツール」です。脱ハンコの動きで注目されています。「電子契約システム」や「経費精算システム」、「ワークフローシステム」など種類が豊富です。
文書作成から承認や合意、捺印までオンラインで行えるので、業務が迅速に進みます。社内で稟議書を回覧したり、取引先と郵送でやり取りしたりするのに比べ、手間や時間が大幅に削減されるでしょう。
ペーパーレスにすれば、紛失や盗難の心配もありません。印刷にかかるコストや保管スペース、文書管理に関する手間も減らせるのもメリットです。
ファイル共有ツール
クラウド上でファイルを保存して情報を共有できるのが、「ファイル共有ツール」です。「オンラインストレージ」、「クラウドストレージ」などとも呼ばれます。情報を共有するメンバーで共同編集でき、リモートワークであっても必要なファイルにアクセスできます。これまでは社内のみでファイルを共有するのが一般的でしたが、アクセス権限を付与すれば、取引先とのファイルのやり取りにも利用可能です。
人事評価ツール
従業員の経歴や資格、能力、実績などをデータベース化して一元管理できるのが、「人事評価ツール」です。複数の人事担当者が従業員のプロフィールを共有できる上、データ分析なども可能なため、昇給や昇格などの際に客観的に判断する助けになります。新しいプロジェクトのメンバーを選定する際の判断材料としても利用できます。
客観的で正当に評価し、どの点を改善すると評価につながるかが明確になるなら、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。また、社員全員のスキルを共有することで、社内で不足している人材を絞り込み、募集の条件に活かすことも可能です。
業務効率化ツールの選び方
業務効率化ツールの選定では現状と課題の把握、セキュリティ、試しやすさの3つがポイントです。それぞれ解説します。
自社の現状と課題を把握する
自社に最適な業務効率化ツールを選ぶ際は、現状と課題の把握がもっとも重要です。どのような業務を行っているかをすべてリストアップし、カテゴリーに分け、工数と発生頻度を記入し、業務量を可視化します。その上で業務負担が大きく、アウトソーシングも難しい業務は、業務効率化ツールの利用が向いているといえるでしょう。
会社の規模や業種に合ったサービスを選ぶ必要があります。また、自社で導入済みのシステムと連携できるかも確認してください。
セキュリティが万全か
無料で提供されている業務効率化ツールもありますが、企業管理者によるアカウント管理ができないことも多く、情報漏洩が起きると被害は計り知れないため、おすすめできません。ファイル共有ツールなど、会社の重要情報を扱うツールを利用する場合は特に、セキュリティが万全なツールを選びましょう。
ログイン時に二段階認証を要するといった不正アクセス対策の有無、脆弱性対策、データセンターやサーバの管理体制などをチェックしてください。広く知られているツールの法人向け有料サービスであれば、セキュリティ面に大きな問題はないでしょう。
スモールスタート
業務効率化ツールを選定したら、無料トライアルやデモで試してみましょう。無料トライアルでもすべての機能を体験できるツールが少なくありません。トライアルがなくても人数単位の課金サービスを提供しているなら、少人数で短期間だけ契約することもできます。まずは小さな単位で試して、トラブルや課題がないかを確認しましょう。
自社で利用している他のシステムとの相性は、実際利用しなければわかりません。また、使い勝手がよくない、サポート体制に不備がある、といった点に気付くこともあります。業務効率化に役立つかをスモールスタートで試してから本格導入しましょう。
ツールによって業務効率化が推進された事例
業務効率化ツール導入に一定の効果を認めつつも、コストや手間をかけてまで自社に取り入れる価値があるのだろうか、とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。また、導入する予定ではあるものの、具体的な利用法についてはまだ漠然としている、という方もいらっしゃるでしょう。
実際に導入した結果どのように業務効率化につながったのか、ツールの種類ごとに事例を取り上げます。
チャットツール導入による業務効率化の事例
訪問介護などの事業を手がけているある会社では、以前は電話で連絡や報告を行っていましたが、記録が残らないため共有しにくいのが欠点でした。チャットツールを導入してからは、グループチャットを使って各チームのスタッフが利用者の情報を共有し、その際に画像や動画も活用しています。チャットツールの利用により必要な情報を検索するのも容易になり、書類よりも情報を管理しやすくなったのもメリットです。
チャットツールにより、各事業所や各スタッフの横のつながりも密接になり、フレキシブルな働き方が可能になったことで、離職率が減少し、採用面でも好影響がありました。
ビデオ会議導入による業務効率化の事例
国内外にグループ会社や支社を持つある企業では、全社員が使いやすいビデオ会議システムを採用して毎日数千件の会議を行っています。そうすることで、在宅ワークを含むフレキシブルな働き方を実現できました。
社内でセミナーや研究会、イベントを開催する際にも活用されています。会場手配が不要になったため開催の手間やコストも軽減し、参加するのも容易になったことで参加者が数倍に増加しました。
電子契約サービス導入による業務効率化の事例
事業の拡大に伴い、電子契約サービスを導入した不動産業者の例もあります。レンタルオフィスの契約数が大幅に増加したのに対し、契約書の作成にかかわるスタッフの増加はわずかで済みました。紙の書類では、印刷や捺印、送付や回収に、時間やコストがかかっていたのも削減しています。
ペーパーレス化したことで、契約文書を保管するためのスペースも節約できました。営業・受付など関係するスタッフが問い合わせに応じて契約書を確認できますし、検索機能で必要な文書を素早く探し出せるのも便利です。
人事サービス導入による業務効率化の事例
P-THをご導入頂いたネクスウェイ様は、以前は人事評価業務をExcelシートで行い、メールにシートを添付して送受信していました。しかし、誤送信による情報漏洩のリスクがある上、データの照合や管理に時間もかかっていました。
P-THの導入後は、誤送信の恐れがなくなったため、情報セキュリティリスクが減りました。進捗状況が管理しやすくなり、評価会議の結果もすぐにP-THの画面上に反映できるため、人事担当者の作業負荷も1/3ほど削減できています。
P-THの場合、従来使用していたExcelの評価シートをそのままWebシステム化できるため、導入しやすいのもメリットです。
まとめ
業務効率化ツールは、目的や用途に応じて多岐にわたります。まずは自社の現状と課題を把握し、優先的に効率化すべき業務をピックアップしてください。業務に応じたツールを選定したら、スモールスタートで試し、自社の業務やシステムとの相性を確認しましょう。
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