Excelの評価シート一つひとつにパスワードをかけて運用している――そのような企業は多いのではないでしょうか。日常の業務で使い慣れているソフトであるため使い方はシンプルですが、それでも手間がかかり、使っていくうちに大小の課題が出てくることは避けられません。
本コラムでは、B社の事例をもとに、人事評価(人事考課)システム導入によって評価者である上司と人事労務担当者の手間を削減し、残業時間を減らすためのポイントをご紹介します。
今回事例をご紹介するのは、アミューズメント業のB社。ご担当人事労務部長のB様です。
自社シートでの運用が単なる“作業”になってしまっていた
人事評価システム未導入だったB社。Excelファイルを作り、一つひとつのファイルにパスワードをかけての運用でした。
Excelを使っているということでシンプルではあるものの、
- パスワードを忘れてしまって開封できない人がいる
- ファイル名を別名保存してしまう
- どのファイルが最新かわからない――など、課題は山積していました。
また部署や営業所の異動が多いこともあり、評価には複数の上司が関わります。記入漏れも後を絶たず、評価制度は存在しているのに正しく運用できていない、「評価=シートを埋める作業」になってしまっていたのです。
重要な書類であるにもかかわらず、フォルダへのアクセス権とパスワードが部署単位で共通になっており、パスワードの規則性を知っている人であれば誰でも閲覧できてしまうという問題もありました。
作業効率アップ、コミュニケーション活性化などメリットを訴求して経営層に提案人事評価の項目の決め方
システム導入を検討されたきっかけは、評価会議の時期になると人事労務担当者が泊り込みで作業をしなければならないほど効率が悪かったこと、そして、パスワード管理ではセキュリティーが脆弱であることでした。
今までも検討されたことはありましたが、遠隔地勤務の社員を含めた全社員に新システムの使い方をレクチャーするにはあまりに時間がかかると感じ、断念されていました。今回導入の決め手になったのは、自社で運用中のExcelファイルがそのまま使えることだったのです。自分たちにも見えていなかった課題が見えただけでなく、情報が一元管理でき、社員へのレクチャーがマニュアルの配布のみで実施できると確信できたため、導入を決定されました。
経営層からの承認を得ることには苦労されました。作業の業務効率アップだけでは納得していただけず、人事評価のデータを蓄積し、活用できること、評価者と被評価者の議論が活発になる効果が見込めると説明したところ、費用対効果が見合うととらえていただけたようです。
人事労務担当者と評価者、いずれの残業も削減できた
導入後すぐに目に見えた効果は、人事労務担当者が評価会議の時期の大型連休などに泊まり込みをする必要がなくなったこと、そして、現場の評価者のファイル管理の時間が大幅に削減できたことでした。
初めてのシステム導入ですので、マスタの設定で困惑する場面もあったものの、評価サイクルを一度こなすとすっかり定着しました。
ファイル管理、評価情報のセキュリティー確保、評価業務にかかる膨大な残業時間の削減とさまざまな課題がありましたが、無事に解決し、評価制度が機能するようになったのです。B様の「今年は、入社して初めて5月の大型連休に出社しなくてすみました」というお言葉が印象に残っています。
この事例のポイント
人事評価にさまざまな課題があり、評価が機能していなかったクライアント。コンサルティングによって課題を洗い出し、それらの課題がすべてシステム導入によって解決されることがわかりました。
今までは、「ファイルのパスワードを忘れてしまった」「業務が多忙で、評価の締め切りに間に合いそうにない」などの問い合わせや相談が人事労務担当に多く寄せられていましたが、これらを一挙に解決できたのです。また集計作業そのものが簡略化でき、評価にかかわるすべての人の残業時間を削減することができました。
大きな成果として、評価に使っていた時間を短縮し、その時間を、自分の振り返り、得手・不得手を明確にし、次年度の目標を立てる時間に充てることができるようになっています。
また、システム導入により、全社員分の評価を一覧で「見える化」したこともポイント。評価のバラつきが可視化され、評価者研修を実施することが決まりました。評価のバラつきを解消することで、社員のモチベーションアップが目指されます。
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