業務を進めるうえで、エクセルは必要不可欠なソフトです。エクセルを使うことで、業務を正確に進められる場面が増えましたが、反対に効率が下がったと感じる方もいるのではないでしょうか。そこで当記事では、エクセル業務における課題と、エクセル業務の効率化を助けてくれるツールについて解説します。
エクセル業務の課題
エクセルを使って業務を進めるうえで、どのような問題が浮き彫りになっているのでしょうか。まずは、エクセル業務における課題から順に解説していきます。
属人化しやすい
「属人化」とは、特定の人物が業務を行うことで、その人物しかファイル内容の詳細が分からない状況になってしまっていることを指します。
エクセルは基本、個人単位で利用するため、同じ部署内であっても各業務の進捗具合を把握できない場合があります。人によって業務にかかる時間や精度は異なるため、これらを把握せずにいると、次第に品質が安定しなくなってしまうのです。
また、エクセルを使っていくうちに、ほかのデータを引用・抽出などしようとした際、どうしても足りない機能が発生します。このとき、作成者が作りやすいエクセルファイルを作ろうとした結果、作った本人にしか内容を理解できないファイルが生まれるなどのケースも発生しがちです。
業務の可視化が困難
エクセルは、共有ファイルとしてグループ内で閲覧することが可能です。しかし、複数人で同時に編集することができず、個々で業務を進めざるを得ないこともネックとされています。それゆえ、1つの案件に対して複数人が関わる場合、それぞれの業務を可視化することが難しくなってしまいます。
複数人で使用していれば当然、変更・修正・編集・削除などの作業も伴います。しかしエクセルでは、これらの作業を「誰が」「いつ」行ったのかが履歴に残りません。そのため、ミスが起きた際、原因を特定するのが困難になってしまいます。ヒューマンエラーは防ぎきれないものですが、原因が特定できないことで、ヒューマンエラーの予防策を立てることすら難しいケースもあるのです。
それでもエクセル業務が人気の理由
昨今では、多くの企業で「脱エクセル」という言葉が聞かれるようになりました。これは、エクセルの弱点をカバーするために、エクセル以外のソフトを使うことを指します。とはいえ、エクセルには次のような利点があるため、企業での人気が依然高いことも事実です。
企業で使われているパソコンがWindowsであれば、すでにエクセルがインストールされているケースも多く、システムの導入費用をかけることなく始められます。知名度の高さはもちろん、使用経験がある人も多いことから、研修や教育にかける時間が短縮できます。
また汎用性の面においても、表計算はもちろんのこと、グラフ・帳票・名簿・見積書など、幅広い業務において素早く処理を行うことができます。これにより、効率よく業務が進められるようになるのです。
エクセル業務を効率化してくれるツールの種類
このように一長一短な側面をもつエクセルですが、近年では上述の課題点を解消しつつ、エクセル業務の効率化をサポートするツールが数多く登場しています。今回は、その中でも特におすすめのツールを5つピックアップしてご紹介します。
表記ゆれ修正ツール
データの名寄せやクレンジングを自動的に行えるツールです。
エクセルに入力されたデータには、各支店や店舗、部署から送られてくる資料のほか、他社から送られてきた情報や、顧客がWebサイトで入力した個人情報なども含まれます。さまざまな人が打ち込んだ情報であるため、表記ゆれも多く、中には誤記も見られるでしょう。表記を統一させてデータを整理しようにも、データが複数のファイルに分散している、データ量が多過ぎる、といった理由で手つかずになっているかもしれません。
表記ゆれ修正ツールを使えば、全半角やカナ変換、空白や区切り記号の有無による表記ゆれを正し、複数箇所に散らばっていたデータを整理、統合することが可能です。
アプリ化ツール
エクセルファイルをアプリ化し、ファイルの共有・保管、データ保存、集計などを行うツールです。クラウド型の共有システムと異なり、シートではなくデータそのものを共有します。
通常、社内で複数人が同じファイルを共有すると、他の人がアクセスしているときは作業が行えません。アプリ化することで、いつでもWeb上で自分に必要な部分のデータを編集できるようになります。これまで通りエクセルでもデータ入力可能です。
エクセルでは困難なアクセス権限の設定も可能ですし、ファイルのやり取りも不要になるなど、セキュリティ面でもメリットがあります。
集計ツール
エクセルに入力された膨大なデータを集計元として、そこから必要なデータを抽出・分析・加工できるツールです。集計した最新のデータをWebから閲覧できるため、会議や、出先・テレワーク先で参照しやすくなります。
企業には、取り扱うデータが膨大にあり、エクセルで管理されている場合が多いでしょう。とはいえ、年々増えていくデータを担当者が手作業で集計すると多くの時間や手間を要し、集計ミスやエラーなども起こります。使い慣れたエクセルをそのまま使えて、しかも正確かつ迅速に集計できるのが便利です。
RPA
エクセルで行う定型的な作業を自動化するツールです。作業者の負担軽減やヒューマンエラーの防止に役立ちます。作業速度が人間よりも速く、時間に関係なく作業を続けられるため、業務全般のスピードアップが可能です。
RPAツールにさせる作業をパソコン上で実践するだけで、RPAが記録して作業を自動化させるため、プログラミングの必要もありません。自動化できる作業には、単にエクセルの表への入力だけではなく、グラフやレポートおよび書類の作成、ファイルへの保存やプリントアウトといった作業も含まれます。エクセルの周辺システムの処理も自動化でき、利便性が高いといえるでしょう。
人事評価ツール
エクセルの人事評価シートをWEBシステム化するツールで、AJS社の「P-TH(ピース)」もその一つです。
入力した評価データはデータベースに蓄積され、従来のように一覧表の作成や転記などを手作業で行う必要はありません。必要な人事データを一覧で見ることができ、異動や抜擢、人材育成など、人材活用に役立たせることも容易です。
使い慣れたエクセル評価シートをそのまま使えるため、評価方法や制度を変える必要もなく、導入の負担も抑えられます。あらゆるタイプの企業にとって利用しやすいツールといえるでしょう。オンプレミス版のP-TH、クラウド版のP-TH+があり、選択可能である点も便利です。
まとめ
昨今の日本では、企業に対する働き方改革が求められ、企業もこれに対応するべく業務効率化を進めていくことが急務となっています。今回ご紹介したツールは、どれもエクセル業務の効率化を目指すのに適していますが、それだけでなくトラブルやミスを最小限に抑えられるよう工夫されている点も、注目すべきポイントです。
ツールを選ぶ際は、機能性や負担の度合いなど、自社事情に適したものを検討するとよいでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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