今日、アウトソーシングは多くの企業で導入されています。
専門性の高い業務や煩雑なルーティンワークをアウトソーシングすることで、限られた社内のリソースを効率的に活用することができるからです。
では、人事業務が対象の場合は、何に注意するべきでしょうか。
人事業務にアウトソーシングを活用・導入するメリット・デメリットなどについて考えます。
人事業務をアウトソーシングする際のメリットとデメリットは
人事業務でアウトソーシングできるのはどのような業務か
人事業務でアウトソーシングをしやすい業務としては、「給与計算」と、給与計算に関わりの深い、「社会保険業務」が挙げられます。これは、ルーティンワークが多く、明確なタイムスケジュールがあるため、業務の切り離しがしやすいためです。能力開発や研修などの「人材育成」も、多くの専門家・企業が存在しますから、アウトソーシングを活用しやすい業務と言えるでしょう。
最近では、「採用」や「人事制度の構築」「再就職支援」など、人事戦略に大きく関わる業務もアウトソーシングが可能となっています。
アウトソーシングで企業が得られるメリット
重要業務へリソースが集中できる
ルーティンワークのアウトソーシングは、人事担当者の負担を減らし、問題対処や企画・立案など、より重要で戦略的な業務に集中することができます。
業務の品質向上
たとえルーティンワークであっても、給与計算は間違いが許されませんし、労務関連の法令は細かい改正が多く、都度対応するにも専門的な知識が求められます。
アウトソーシングでプロの力を活用できれば、スピーディーかつ間違いのない成果を期待できます。
育成についても、常に最新の情報を取り入れたアウトソーサーにより、よりハイレベルな成果を求めることができるでしょう。
業務品質の維持・継続
業務が属人化しないため、社員の退職や異動などによる後任探しや引き継ぎに慌てる必要がなく、業務の品質が維持できます。
コストダウン
増員の形で業務を賄うと、給与だけでなく、社会保険料や法定福利費、増員分の設備費や水道光熱費、採用・育成費用がかかるため、アウトソーシングの方がコストダウンとなることが多いようです。
また、アウトソーシングを進める際に、業務の洗い出し・見直しをすることで、周辺業務を含めた業務のスリム化も期待できるでしょう。
アウトソーシングをすることのデメリット
情報漏洩の不安
人事業務をアウトソースする際の不安材料と言えば、情報漏洩です。
ただし、情報漏洩の多くは社内のヒューマンエラーですから、アウトソースする外注先の見極めをしっかりしていれば、あとは社内に目を向けた対策の方が重要です。
自社でノウハウが蓄積できない
アウトソーシングは外部に業務を委託することになりますから、ノウハウの蓄積が課題となるでしょう。
業務仕様書の作成や、定期的な擦り合わせによって、アウトソーシングした業務について把握することが必要です。
人事業務をアウトソーシングする際に気を付けたいこと
人事担当者の負担減やより戦略的な業務注力することがアウトソーシングの目的ですが、準備や慣れない初期対応に社員が疲弊してしまうことも考えられます。
そのため、業務の棚卸しや、体制を整える時間を想定するなど、計画性を持った行動が求められます。
効果的なアウトソーシングのために必要なこととは
効果的なアウトソーシングの実現には、以下の項目を意識することが肝要です。
アウトソーシングと外注の違いを知る
従来の「外注」は、その業務を社内で担うことが割に合わないから外に出すといった、コスト重視のものでした。
一方「アウトソーシング」は、外部の専門家に委託することで、より高品質な業務遂行を実現し、自社の人員には、コア業務でのパフォーマンスアップを求めます。
コストについての期待もありますが、アウトソーシングは、戦略的活用が重要であることを認識すべきです。
どの業務をアウトソーシングするのかを見極める
アウトソーシングを戦略的に活用するためには、自社にとってのコア業務が何かを捉え、どの業務をアウトソースすべきかを見極めなくてはなりません。
「現状で切り離しやすい部分」から早々に手を付けたくなるところですが、まずは業務の棚卸しから始め、人事業務を顕在化させることが必須でしょう。
人事業務をアウトソーシングしている企業の割合と親和性の高い業種
東証一部上場の日系企業では50%以上が人事業務のアウトソーシングを活用しており、人事部門においては、特に「給与・賞与計算業務」や「福利厚生業務」をアウトソースしている傾向が見られます。
アウトソーシングサービスも多岐にわたるため、金融・保険、製造業、流通業をはじめ、様々な業種でアウトソーシングが活用されていると言えます。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の市場規模が年々拡大されていることから、業種に関係なく、人事業務に対するアウトソーシングの需要は高まっていると考えられます。
下請けではなく、信頼できるパートナーを探す
従来の外注の考え方では、発注先を「下請け」と呼ぶことがありますが、アウトソーシングの場合は戦略的ベクトルを持つため、業務を委託する相手は、対等な「パートナー」と考えるべきです。
自社の成長戦略を理解・共有し、デメリットで挙げた問題に十分な対応力を持つ、優れたパートナーを探すことは、アウトソーシングを成功させるための必須条件なのです。
まとめ
人事部門は、「コストのかかる個人情報の保管庫」ではなく、人材を最大限に活用し、自社を強固な組織へと成長させるための「戦略部署」にならなければいけません。
アウトソーシングの活用は、限られたリソースで戦略部署の責務を担うための、有効な手段のひとつと言えるでしょう。
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