就活ルールの廃止が企業に与える影響と、とるべき対策とは

 2019.03.04  AJS株式会社

2018年10月9日、経団連は2021年度以降に入社する学生を対象とする採用選考に関する指針、つまり就活ルールを策定しないことを発表しました。今回は、就活ルールの廃止が企業の採用活動に与える影響と、とるべき対策についてご紹介します。

現状のルールは形骸化していた

2020年度入社については、2019年同様、以下の日程が指針として示されました。

広報活動:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降

選考活動:卒業・修了年度の6月1日以降

※正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降。

ただし、就活ルールはあくまで指針であり、ルール外活動への罰則もなく、経団連会員でない企業や外資系企業もあります。上記日程を前倒しした採用活動が盛んに行われており、ルールが形骸化していることは周知の事実です

現状のルールが廃止されるのはなぜ?

就活ルールには、「中小企業にも優秀な人材獲得のチャンスを与える」「学生が学業に専念するための配慮」等の目的がありました。これらの目的があるにも関わらず就活ルールが廃止されるのは、上述したようにルールが形骸化しているためです。

人材の流動化が激しい時代、フライング採用活動の加速は、自然発生的といえるでしょう。ちなみに、経団連会長の中西氏は、就活ルールが経団連主導であったことに抵抗感があると言及し、「今後は、未来投資会議をはじめとする政府の関係会合において、2021年度以降のルールの在り方について議論していくことになる」と述べ、政府主導であるべきとの考えを明らかにしました。

ルールの廃止がもたらす企業への影響とは

では、就活ルール廃止は、企業にどのような影響を与えるのでしょうか。

『月刊人事マネジメント』事例掲載
「人事評価制度見直し」決断する前にやること

【メリット】

  • ルールに縛られることなく、早期の採用活動ができる
  • 自社独自の個性を打ち出した、自由な採用活動が可能となる

【デメリット】

  • 採用の長期化や見直しによる様々な負担増
  • 早期内定による辞退者増加

採用日程の縛りがなければ、欲しい人材をいち早く確保できる可能性はあります。また、魅力をアピールできる「業務イベントのリアルタイム体験」等の戦略も立てやすくなるでしょう。 ただし、既に形骸化したルールが廃止されたところで、メリットを多く享受できるのかは疑問です。就活ルールを廃止すれば、多くの企業が早期行動に移りますが、長期インターンシップや内定者フォローは、費用、人的リソース、時間など、全ての負担が増すことになります。

企業の体力による採用格差が広がる懸念もあり、新卒採用を断念するケースが増えるかも知れません。内定を出すのが早まれば、内定辞退者数を予測することも難しくなるでしょう。

企業はどのような対策を立てればいいのか

2019年10月29日、政府は2021年入社の就活ルールについて現行の日程を維持し、当面はこの日程を変更する可能性が高くないことを発表しました。就活ルールが経団連から政府主導に代わっても、しばらくは日程が維持されそうですが、形骸化を野放しにするとは考えにくく、大きな変化の可能性もあります。よって企業は柔軟に対応するための対策が必要です。

就活ルールが完全に廃止された場合、多くの企業が通年採用スタイルを選択し、長期インターンシップの活用も増加すると予想されます。以下では、「長期インターンシップのメリット・デメリット」とそれに伴う「CGMの効果」、就活ルール撤廃後の対策をご紹介します。

社員個人の課題や組織としての目標が明確になる

ルールが廃止されることで、企業が実施するインターンシップの期間は自由に設定することが可能になります。人手不足が慢性的に続いている日本の現状から、インターンを長期化させ、採用の吟味と、労働力の補填を同時に進めたいと考える企業は多いでしょう。

ここでは長期インターンシップのメリットとデメリットについて整理していきます。

【メリット】

  • 人手不足の解消(特にスタートアップ企業の場合)人手不足の企業では、インターンシップ生を採用することでリソースの補填が可能になります。特に、スタートアップの企業では社員数に対してのタスク量が多く、人手不足の状態の企業は多く存在します。そういった企業で長期インターンシップ生を採用すれば、社員でなくてもいいタスク、あるいは数少ない社員がわざわざやる程でもない事務的なタスクをインターンシップ生に任せることができます。さらに学生と企業のマッチングが上手くいけば企業の抱える人手不足と採用の問題を同時に解決することができます。
  • 学生ならではのアイデアを活用インターンシップ生を採用することで、新たなアイデアが生まれやすくなります。既存社員の知識や経験は貴重なものですが、同じような人材で構成されていると、画期的なアイデアを生み出すのは難しいかもしれません。そこで、敢えて知識も経験もないインターンシップ生の視点を取り入れることで、社員が思いもつかない新しいアイデアやイノベーションが生まれる可能性もあるでしょう。
  • 優秀な学生との出会い長期インターンシップを導入することで、優秀な学生と早い段階で出会える可能性が高まります。長期インターンシップに参加するのは、就職する意思や目的が早い段階からある学生です。インターンシップに参加せずに就職活動を行う学生と比べ、「働く」という将来に対する意識が高く、主体的に学び取ろうという姿勢で取り組むでしょう。長期インターンシップ生を採用することで、このような人材と早期にコンタクトを取ることができ、採用に繋げることもできます。
  • 入社後の早期退職の回避一度採用した人材を、一から育てた後に辞められてしまう事態が多発すると、採用・育成に掛けたコストは無駄になります。長期インターンシップを導入し、実際の業務を就業前に経験してもらうことでミスマッチの解消に繋がり、入社後の早期退職を未然に防ぐことができます。

【デメリット】

  • インターンシップ生にかかる負担長期インターンシップでは、アルバイト以上に責任のある仕事を任せることになります。難しい仕事に積極的にチャレンジし、自己成長していきたいという学生にとってはよい環境である一方、楽に稼ぎたいと考えている学生には不向きな環境ともいえ、後者のような意識で参加した学生だと、せっかく採用しても能力を発揮する前に辞めてしまう可能性が高まります。
  • タスクの指導に時間とコストがかかるインターン生とはいえど、事業の一端を担う人材であるため、ある程度のノウハウは教えなければなりません。学生によってはPCの使い方から教えなければならない場合もあります。さらに学生に指導している時間で生まれるはずの営業利益が失われる、という副次的なデメリットもあります。

長期インターンのデメリットは働き始めの段階で発生する問題が多いことが分かります。しかし、マッチングが上手くとれた場合は、人手不足や学生ならではのアイデア等、長期的に見れば企業にとってプラスとなる要素が多くあります。

対策その2

インターンシップ生のCGM(Consumer Generated Media,消費者生成メディア)効果

長期インターンシップが増加すると、実際にインターンシップを経験した学生の口コミ件数が増えます。スマホネイティブ世代の学生が長期インターンシップを体験することで、CGMの件数は確実に増え、その口コミは、インターンや入社を検討している閲覧者に良くも悪くも大きな影響を与えるでしょう。

CGMへの対処方法として、インターンシップ生に口コミをさせない、口コミを操作する、などが考えられますが、それよりも、インターンシップ生によい印象を持ってもらう為の努力をした方が賢明です。言い換えれば「長期インターンシップ生によい印象を持ってもらえるよう、自社の体質を根本から改善すること」が唯一無二の対策となります。とはいえ、根本から改善するには時間も手間もかかるため、学生に合わせて体質を変えるのは難しいでしょう。従って、インターンシップ生に指導にあたる担当者は、学生が自社で体験した情報は外部に発信されるということを念頭に置いた「丁寧な対応」が求められることになるでしょう。

もっと言えば、ネガティブな口コミを恐れて丁寧な対応をするという受動的な発想よりも、この学生には自社のファンになって欲しい、もっと能力を発揮してもらうにはどうすべきか?といった前向きな発想でインターンシップの雰囲気作りを行えれば、ポジティブな情報はインターンシップ生の周囲へと伝わり、よい人材がインターンに来るという好循環が生まれることでしょう。

人材の流動化、少子高齢化が加速する現代においては、就活ルールの有無にかかわらず、優秀な人材の争奪戦は避けられません。どんな条件が課されても右往左往することのない、魅力ある組織作りこそ、人材確保の土台となります。

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