人事の仕事は、ミスなくこなすことが当たり前で、営業職のように目に見える成果があらわれにくいという特徴があります。また、給与計算や社会保険業務、採用や人材育成、人事制度の構築など、多岐に渡る業務を担当しなければならないことから、ストレスをため込んでしまいがちな仕事です。
今回は、人事の仕事が辛い、残業が多いと感じている時の対処法を考えます。
人事業務の実態とは
批判の対象になったり、時には嫌われ役になることがある
勤怠の注意喚起、評価シートの提出催促など、決められたルールに則って仕事を行っていても、時には社員から疎まれてしまうこともあるでしょう
また、昇降格や異動なども、人事の主観が入っていると思われてしまうケースがあります。
「人事情報を管理しているから、下手なことは話せない」と思い、近づきたがらない人も中には存在します。会社に雇われているという意識が強いほど、経営に近い部門への視線は、厳しくなるようです。
機密事項が多く、心労が絶えない
人事は個人情報を取り扱うなど、機密事項の多い職種であるため、それがストレスに繋がることもあるようです。
人事職の人が雑談のつもりで、「Aさんは〇〇部の在籍期間が長いね」と言えば、「Aさん、〇〇部が長いから、異動を検討されているみたい」と他の人に解釈されるかも知れません。
「Bさんって、頭の回転早いよね」など、普段の会話で感じた印象を口に出そうものなら、「人事のCさんはBさんの適性検査の結果を漏らしている」などと抗議されかねません。
他の職種なら世間話で済む内容も、人事では大きな誤解を招くことがあり、日ごろの発言にも注意が必要です。
ミスをしないことが当たり前で、成果が見えにくい
「給与明細に間違いはありえない。特別控除の申請も、連絡がきて処理してもらえて当たり前」
繊細で慎重な作業を求められるにも関わらず、労われる機会は少なく、ミスは大いに非難される労務管理。
新入社員の離職やミスの責任を問われることがあっても、功績については、本人とその上司が称賛されやすい採用・育成。
ミスが許されない重要な仕事なのに、成果の求め先がわからないと不安を感じる人事担当者は多いようです。
月1回、年5回の決まった繁忙期があり、その時期は残業が増える
人事職の仕事は、月に1回、そして年に5回繁忙期があると言われています。
まず毎月の給与計算では、基本給以外に手当・控除など、社員の数だけ計算・処理があります。
これが月に1回ある繁忙期です。
次に年5回の繁忙期は、採用活動の時期、新入社員入社時期、査定・昇給の時期、年度更新、社会保険算定の時期、年末調整の時期が挙げられます。
ミスが許されない仕事は何度もチェックが必要ですし、複数の人の目を通す必要があるため、残業率は高くなるでしょう。
新卒採用では、会社説明会が始まる1月頃から約半年間、採用担当者のスケジュールは真っ黒に埋まり、休日出勤が発生するケースも存在します。ư
さらに、人材評価では、半期ごとに集計・分析・会議準備などに追われ、人材評価が決定すれば、賞与準備や昇降格の処理が始まります。ư
特に年度が替わる3~4月辺りは、新入社員の入社・配属と同時期に、既存社員の配置・調整や処遇変更処理も発生しますから、その時期の人事部門はかなり忙しいと思った方がよいでしょう。
実際に、人事職でも担当業務によって繁忙期は違いますが、中小企業やベンチャー企業などで、上記の業務を個人、もしくはごく少数で担当している場合は残業時間が多くなりがちです。
人事業務のやりがい
前項では人事業務の厳しさをお伝えしましたが、やりがいの多さも人事職の特徴の一つです。
社内外のさまざまな人と関わるのでコミュニケーション力が身につく
人の事を扱う人事職では、多方面で様々な人たちと関わる必要があります。
面接、法律相談、申請などを通して、社外とのコミュニケーションの機会は増えるでしょう。
多様な職種・業界、幅広い年齢層との関わりが、人事担当者のコミュニケーション力を鍛えてくれます。
幅広い知識と経験を得ることができる
多職種と関わることで幅広い知識が身に付きますし、業務で学ぶ社会保険や納税のルールは私生活でも役立ちます。
また、人事経験は「人を見る目」を養うことができるので、人事職から管理職となった場合でも経験を活かすことができるでしょう。
人の成長やキャリアアップに関わることができる
人事は、皆の前で表彰されたり、称賛されたりといった華やかさはありませんが、様々な業務を通して、全ての社員を支える「縁の下の力持ち」です。
自分の関わった社員が活躍する姿を見ると、親のような、監督のような喜びを感じることもできます。
企業の経営を支えている実感が味わえる
「人」という経営資源を最大限に活かし、強い組織を作り上げるためには、人事部門の活躍が必須です。
戦略的人事の実行で、企業の経営を支えている実感が味わえることは、大きな魅力と言えます。
人事業務が辛いと感じるときの対処法
前述した実態とやりがいを比較すると、やりがいでカバーできる辛さもありますが、やはり対処が必要でしょう。
特に残業については、残業時間を減らす取り組みを担うべき人事だからこそ、対処は必須と考えるべきです。
業務フローを見直し、効率化を図る
社員に対する注意喚起や書類提出などの催促、社員数に比例して増える給与計算などによって引き起こされる残業時間増は、業務全てを自社で行うことで発生しがちです。
この場合、業務フローを見直し、効率化することで、作業負担が大幅に減少する可能性があります。
また、無駄のない業務フローが確立できれば、最適なシステムの導入やアウトソーシングも検討でき、より高品質な成果を求めることが可能です。
効率化できた分のリソースは、残業時間の短縮はもちろん、より重要度の高い業務に回すことができます。
年間のスケジュールを把握し、余裕のある時期に先々の準備をする
目の前の仕事に忙殺され、計画的に動けないことで、残業時間が増えているケースもあります。
その場合、年間スケジュールの作成によって繁忙期・閑散期が可視化され、業務量の調整が期待できます。
また、担当業務別にスケジュールを作成すれば、部署内での協力体制の構築にも繋がります。
まとめ
仕事が辛いと思うことは、人事に限らず、どの職種にもあることです。
もし、人事を任せている部下が悩んでいる様子であれば、やりがいや辛さを共有するための対話の機会を設けたり、上記の対処法を試してみてはいかがでしょうか?
特に、成果が見えない不安を感じているようなら、「業務フローを見直し、導入システムを期内に決定する」「年間スケジュールを作成し、協力体制を業務フローに落としこむ」など、その対処法自体を評価の目標に設定し、成果を感じるチャンスを与えること試してみてもいいでしょう。
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