在宅勤務における人事評価の課題とは?適した施策と評価方法も解説

 2022.06.29  AJS株式会社

新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が始まり、働き方が大きく変わっているのに、人事評価制度は従来のままというケースが少なくありません。新しい働き方に合わせて、人事評価制度の在り方も見直すべきでしょう。本記事では、人事部の担当者に向けて、在宅勤務における人事評価の課題と適した施策・評価方法について解説します。

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人事評価の目的

企業における人事評価には、「人材育成」という企業の成長に欠かせない重要な目的があります。人事評価を人材育成につなげるためのポイントは2つです。

まず、公正な評価により、従業員の仕事への意欲や組織への帰属意識を高めていくことができます。次に、納得できる評価を実施し、適切にフィードバックすることで、従業員の成長や行動革新を促せます。

評価の軸が不明瞭では、従業員たちは、たとえ高い評価を受けても達成感を得にくいでしょう。また、努力や成果に対して低い評価を受けた場合には、きちんとフィードバックを行って評価内容に納得をしてもらえないと、課題克服に向けて取り組むどころか、逆に組織に不信感を抱きかねません。

在宅勤務における人事評価の課題

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、在宅勤務をはじめとするテレワークを導入した職場も多いことでしょう。在宅勤務には従業員のワークライフバランス改善などのメリットがある一方、適切な人事評価が難しいという声も聞かれます。ここからは、在宅勤務における人事評価が難しいとされる理由について解説します。

勤務態度を直接確認できない

在宅勤務では、上司が直接部下の様子を確認できません。オフィスワークでは、業務の成果に加えて、勤怠状況や勤務姿勢、仕事への意欲なども含めた「勤務態度全般」を評価対象にすることが可能でした。

しかし、物理的な距離がある在宅勤務では、こうした定性的な要素を把握しづらくなります。遅刻やサボリはないか、服装や態度に問題はないか、苦手な仕事にも前向きに取り組んでいるか、主体性や協調性が見られるか、といったポイントが見えづらくなるのです。

コミュニケーション不足になる

対面機会が減少する在宅勤務では、コミュニケーション不足にも陥りやすくなります。コミュニケーション不足は、上司と部下の信頼関係にも影響し、人事評価をさらに難しくさせるでしょう。例えば、業務に関する悩みやトラブルが発生した場合、意思疎通に時間がかかり、部下の内面や置かれている状況について深い部分までの理解が及びにくくなります。

業務の話だけでなく、雑談が減ることも実は懸念材料となり得ます。現在の仕事とは関係ない将来的なアイデアを話すこともあった雑談は、部下のポテンシャルを発掘する絶好の機会でもありました。加えて、ほかのチームメンバーや取引先とのコミュニケーション状況も見えづらくなります。

成果に至るプロセスが見えづらい

在宅勤務では、成果につながる行動や成果達成までのプロセスが細かく把握しづらいものです。オフィスワークであれば、部下の仕事ぶりを直接確認できます。進捗状況について部下の席に行って確認したり、悩んでいる状況を見て声をかけにいったりといったことも可能です。

やり取りの中で、成果を出すための創意工夫や改善努力など、数値化不可能な要素についてもチェックできます。部下の勤怠状況も可視的に把握していけるようになるので、成果を出すまでにどのくらいの工数を費やしたのか、業務の効率性も正しく見積もれるでしょう。

在宅勤務では、こうした成果に至るまでのプロセスが曖昧になりやすいため、適正な評価を行うには工夫が必要です。

在宅勤務時の人事評価に必要な施策

在宅勤務の人事評価を適正に行うためには、実態に即した施策を取り入れていくことが大切です。在宅勤務時の人事評価をスムーズに行うための施策を2つ紹介します。

双方向のコミュニケーションを増やす

人事評価のPDCAサイクルを回していくには、お互いが納得できる公平な評価を実施する必要があります。そのためには上司と部下の相互理解が不可欠であり、認識のズレが起きやすくなる在宅勤務では、「双方向」のコミュニケーションを意識的に増やしていくことが重要です。これには、上司が部下に接する時間を物理的に増やすことが、大前提となります。オフィスワーク時以上に、業務予定の共有や、業務終了後のアウトプット報告を習慣づけるようにしましょう。

ビジネスチャットやWeb会議システムなどのテレワーク用ツールは、在宅勤務時のコミュニケーション活性化に大いに役立ちます。勤怠管理や業務内容の把握にも便利ですので、積極的に取り入れるといいでしょう。上司からの一方的な確認だけでなく、部下自身がタスクの難易度や成果に至るまでのプロセスをアピールできる場を設けるのもおすすめです。在宅勤務によって大幅に削減できる移動時間などをこうした双方向コミュニケーションに充てていくようにすると有意義です。

評価基準を統一する

在宅勤務を初めて導入するとなると、何を評価してよいのか迷いも生じやすくなるものです。しかし、評価基準が曖昧では、上司によって評価方法に偏りが出てしまったり、主観の要素が強まったりすることもあるでしょう。結果的に、オフィス勤務者と比べて在宅勤務者が不利になったり、評価に納得できなかったりする恐れも高まります。

これらを解決するためには、在宅勤務の実態に合う評価方法や評価項目を設定・導入していくことが重要です。例えば、一対一でのオンライン面談の機会を頻繁に設けて、成果までのプロセスや難易度をヒアリングします。これは状況把握の方法として有用であり、かつ公平です。このほかにもコミュニケーションツール上での業務スピードやレスポンスを定量的に計測し、勤務姿勢の評価軸にしていくという方法もあります。

従来の評価基準に曖昧な点が見られる場合は、在宅勤務導入を機に人事評価項目の明確化、評価方法の統一を図りましょう。人事評価システムを導入すれば、一連の評価業務を大幅に効率化し、評価者によって偏りがでない合理的な仕組みを構築できます。

在宅勤務に適した評価方法の例

すでに確立されている手法の中から、在宅勤務と相性のよい評価方法を紹介します。在宅勤務に適した評価方法は次の3つです。

目標管理制度(MBO)

目標管理制度とは、組織の目標に紐づけて個人が期間内に達成したい目標やその達成方法を上司と相談して設定し、その達成度に基づいて評価する仕組みです。MBO(Management By Objective)とも呼ばれます。評価項目の明確化・評価方法の統一の実現に適しており、同じ組織に属する従業員同士のベクトルを同じ方向に合わせられることが、目標管理制度のメリットです。

あらかじめ達成目標やその達成方法を設定しておくため、在宅勤務でも適正な評価がしやすくなります。上司と部下の間で、相談や指導・サポート、振り返りも行われるため、双方向のコミュニケーションが促進されやすく、在宅勤務における人事評価の課題解消へつながります。自身が決めた目標であるため、評価に対する部下の納得感も生まれやすいでしょう。

成果主義

営業職をはじめ、成果を定量化しやすい職種については、在宅勤務の評価に成果主義を取り入れるのも選択肢の1つです。成果主義では、在宅勤務で把握しづらい勤務時間や態度などは評価対象として重要視しません。あくまでも仕事の成果を中心に評価するため、業務プロセスが見えづらい在宅勤務においても運用可能です。

評価期間中の到達度を明確にできる前述の目標管理制度と組み合わせると、さらに運用しやすくなるでしょう。ただし、必ずしも目標達成できるとは限りませんし、業務内容によって成果の難易度にも差があります。公平性を担保するためには、プロセスに対する評価も一定量は残しておくべきでしょう。

360度評価

上司ひとりで部下の勤務実態を十分に把握しづらい在宅勤務では、360度評価を取り入れるのも手です。360度評価とは、上司だけではなく、同僚や部下、関係部門の従業員、さらに自分自身も評価者とする制度です。複数の視点や立場からひとりの従業員について多面的に評価できるだけではなく、上司と部下との相互評価も行われます。また、自己評価と他者評価のギャップから真の課題が明確になることで、新たな強みも発見できるでしょう。このことから、従業員の自発的な意識・行動変革を促進する手段として導入する企業が増えています。

360度評価は、在宅勤務時におけるチームメンバーや取引先とのコミュニケーション状況の把握、上司には見えづらいプロセスの理解に役立ちます。さらに、フィードバックのための面談が重視されるという特徴もあるため、在宅勤務で不足しがちな双方向のコミュニケーションを増やすのにも有用です。

まとめ

働き方の変化に合わせて、人事評価制度も臨機応変に対応させていく必要があります。評価基準を明確にし、在宅勤務時にも公平な評価を行うには、人事評価制度のシステム化がおすすめです。AJSが提供する「P-TH」を活用すれば、評価に関する作業を大幅に効率化でき、人事評価そのものに焦点を当てた効果的な運用が叶います。

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