働く女性を悩ませる「マミートラック」の問題とは?人事として知っておきたい企業の対策

 2021.12.08  AJS株式会社

共働き世帯の割合は年々増加傾向にあり、ワーキングマザーの比率も急増しています。しかし、子育てとキャリアアップとを両立できている女性は、日本ではいまだ少ないと言わざるを得ない状態にあります。本記事では、働く女性を悩ませる「マミートラック」について、企業の人事担当者向けに、その問題点や対策などを解説します。

マミートラックとは

マミートラックとは、出産した女性が職場復帰した際、自分の意思とは関係なく出世コースから外れてしまうことを差す言葉です。子育てと仕事を両立する決意をもって仕事に取り組んでも、単調な業務ばかり割り振られてしまったり、昇給・昇格の機会を与えられなかったりすることがその一例です。

マミートラックに含まれる「トラック」は、競技用トラックに由来しています。一度出世コースから外れてしまうと、昇進とはほど遠いコースを延々と走らされるという状況を指しますが、もともとは働く母親への支援策のひとつに使われていた呼称でした。業務量や時間をセーブして、子育てと仕事を両立させるというポジティブな狙いから生まれたのです。

しかし、現実には仕事との両立だけを目指すのではなく、キャリアとの両立を望む女性も多く存在します。そのため、マミートラック=「一方的にキャリアアップの道を閉ざすもの」というネガティブな意味合いが強くなってしまったのが現状です。

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マミートラックの問題

マミートラックの問題は、社員と企業の双方に影響をもたらします。具体的にどのような影響があるのか、それぞれ解説します。

該当社員の不利益

まず、該当社員が不利益を被る可能性が高いのが問題といえます。自分の意思や能力に関わらず、幼い子がいるという事情だけで、事務処理などの望まない仕事に回されてしまうケースも少なくありません。成果を出しにくい業務では評価も得られず、キャリアアップへの道も閉ざされがちになります。昇給や昇進の見込みも減ってしまうでしょう。業務内容の変更によって、給与が大幅に下がってしまうケースも存在します。

同期が次々と昇進していくのを目の当たりにしたり、後輩の業務の補佐を命じられたりという状況では、劣等感も抱きやすくなります。周りと同じように残業や休日出勤ができないことに、気まずい思いをしてしまう場合もあるでしょう。望まない状況になるのは、自分の能力が低いからだと考えて思い詰めてしまう人もなかにはいます。結果的に、仕事への意欲やモチベーションも低下してしまい、復帰したことを後悔し始めるなど、負の連鎖も起こりやすくなります。

企業への影響

マミートラックによって、社員のみならず、企業への負の影響が生じることも考えられます。まず、第一線で活躍できる能力を有する人材にあえて補助的な業務をさせるということは、戦力の喪失にほかなりません。人材は企業にとって大切な資源です。適切な人材活用がなされなければ、業績も伸びていかないでしょう。

望まない仕事を続けるうちに目的を見失い、モチベーション低下によって退職へと発展してしまう場合もあります。自社ではキャリアアップが見込めないと見限られて、子育てをしながらでも活躍できる企業へと転職されてしまう可能性も高まります。優秀な人材であればあるほど企業へのダメージは大きく、抜けた穴を埋めるのは大変です。人手不足が叫ばれるなか、マミートラックに起因する人材の流出は企業としては極力避けるべきでしょう。

人事として知っておきたい企業のマミートラック対策

マミートラックによるモチベーション低下や退職を防ぐためには、どのような対策をとればいいのでしょうか。ここからは、人事として知っておきたい企業としてのマミートラック対策を紹介します。

社員の考えを把握する

マミートラック問題の背景にあるのは、企業側の思い込みと社員とのコミュニケーション不足です。この問題の難しさは、子育てと仕事をどのように両立させたいかの理想が、女性一人ひとりによって異なる点にあります。出産前と変わらずに第一線で活躍したいというキャリア志向の人もいれば、子どもが小さいうちは仕事をセーブして無理なく働きたいという人もいます。企業側がよかれと思って用意したポストが、かえって女性を追いつめてしまう場合もあるということです。

マミートラックを回避するには、育児休暇から復職した社員が、今後のキャリアパスについてどのような意向や希望をもっているかを人事部として正確に把握することが大事です。人事部との面談やアンケート調査などが手段として考えられます。実際に仕事に復帰したあとも定期的に面談をおこない、満足度や仕事の障壁となっている点などについてヒアリングしましょう。本人の考え方と与えられる業務や配属とのミスマッチを減らすことが、マミートラック問題を解決するひとつの鍵です。

産休や育休を浸透・充実させる

多様な価値観、働き方を理解する企業文化の醸成も重要です。たとえば、男性社員も含めて、職場の社員に産休・育休についての理解を深めてもらうように働きかけることは非常に大切です。子どもがいない人や育児に参加してこなかった男性のなかには、子育ての大変さがわかっていない人もいるかもしれません。育休といっても休暇とはほど遠い生活であること、女性の負担を減らすためには男性の育休取得がいかに重要であるかを、周囲に理解してもらう必要があります。特に、人事権をもつマネジメント層を中心に伝えていくことが重要です。

子どもが小さいうちは、できるだけ一緒に過ごしたいと考えている人もいるでしょうし、早く仕事に復帰したくても、保育施設に空きがなく叶わない場合も多くあります。育休期間の延長は、こうしたケースの受け皿になります。企業によっては、無給ではありますが3年間の育休がとれるようにしている場合もあります。

勤務時間に関する見直しや制度導入をおこなう

残業が当たり前になっている職場では、定時で仕事を終えて帰る社員が周囲から「楽をしている」と白い目でみられてしまうこともあるかもしれません。しかしながら、昨今の働き方改革によって法整備が進んだこともあり、大企業を中心に長時間労働の是正に取り組む動きが加速しています。無駄な残業の廃止、時短勤務制度の導入などの対策は、子育てをしながら働く女性の心身の負担軽減につながります。

自身のライフスタイルに合わせて働ける制度の構築も重要です。始業時間や終業時間の融通が利くフレックスタイム制度や、みなし労働時間制のひとつである裁量労働制などの導入も検討するといいでしょう。フレックスタイム制度については、コアタイムのないスーパーフレックス勤務のほうが子育て中の社員には便利です。

テレワーク(リモートワーク)で働けるようにする

在宅勤務を含めたテレワーク勤務の拡充も検討したい対策です。時間や場所の制約を受けずに働けるテレワークの存在は、子育てをしながら働きたいと考えている女性の強い味方になります。特に事務職や営業職の場合は、インターネット環境やテレワーク用のコミュニケーションツールが整っていれば、オフィス以外の場所でも問題なく業務をおこなえることが多いでしょう。

なかでも在宅勤務には、通勤時間が不要になる、仕事の合間に家事ができるなど、子育て中の女性の負担軽減に直結するメリットが多くあります。夫婦共に在宅勤務が可能であれば、家庭内での助け合いも増やせるでしょう。

福利厚生で子育て支援をおこなう

福利厚生の一環で、女性にとって働きやすい環境を整備することもマミートラック対策として有効です。もっとも大きいのは、企業内託児所の設置です。企業の敷地内、あるいはすぐ近くに社員が使える託児所があれば、子どもの送り迎えの手間を大きく省けます。預け先が見つからずに復職できないといった事態も回避できるでしょう。

夫も同じ会社の社員であれば、夫婦で送り迎えを分担できます。土日や祝日に出勤がある業界でも、自社の就業カレンダーに合わせて子どもを預けられる企業内託児所があれば仕事を続けやすくなります。金銭面での補助制度も、早期復帰に向けての大きな手助けになるはずです。一例として、ベビーシッターや家事代行を利用する場合の費用を補助している企業もあります。

社員同士でフォローする環境を整える

社員が休んでも周囲の社員でフォローできるような職場にすることも、マミートラックの対策になります。ひとつの仕事を複数人での担当制にするワークシェアリングがその代表例です。子供が幼いうちは子供も体調を崩しやすく、突発で休まなければならない場合も多いでしょう。ワークシェアリング体制が整っていれば、特定の個人が休みを取得しても業務が停滞せず、納期遅れなどを引き起こさずに済みます。

お互いにフォローし合える体制によるシナジー効果や業務効率化も期待できます。ただし、休む人とフォローする人が固定化すると、フォローする側が不公平感を募らせてしまいかねません。特定の人だけに負担が偏らないような人員配置やマネジメント管理が求められます。

評価制度を変更する

労働時間が人事の評価軸になっていることも、マミートラックの要因になると考えられます。労働時間=貢献度とされてしまうと、いくらでも残業や休日出勤ができる男性社員と、残業が難しい・時短勤務中の女性社員とでは明らかに後者が不利です。働き方改革の最終目的は、より短い時間でよりよいアウトプットを出すという生産性の向上です。貢献度は大きくても、長時間の残業や休日出勤が多い社員は、生産性が高いとは言い難いでしょう。

働き方改革の波に乗り、この機会に評価軸を労働時間から成果に切り替えるのもひとつの手です。同じ時間内でより大きな成果を出した人のほうが評価されるように制度を変更すれば、育児中の女性にも昇給・昇格のチャンスが生まれます。無駄な残業がなくなれば、企業全体としての生産性も向上するでしょう。成果を出せば評価される仕組みは、多様で柔軟性の高い働き方にもマッチします。テレワークでは社員の勤務時間を管理することの難しさが課題として挙げられますが、成果を軸とする仕組みであれば、テレワークの社員も含めて公平な評価がおこなえます。

まとめ

女性の社会進出が進む昨今では、育児と仕事の両立ではなく、育児とキャリアアップの両立を望む女性も増えています。ただし、理想とする働き方は多種多様であるため、企業側の思い込みで進めるのではなく、各自が最適な選択ができるように人事制度や福利厚生を充実させていくことが大事です。成果を軸とする評価制度への移行もそのひとつです。女性の戦力を最大化する取り組みは、長期的にみて企業に大きなメリットをもたらすでしょう。

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