クレドとは?意味や企業が導入するメリットについて解説

 2021.08.04  AJS株式会社

企業の信条や行動指針を示す「クレド」。近年では、コンプライアンスを守り主体的に行動するため、クレドを意識した働き方が重視されています。しかし導入にあたっては、クレドというものをしっかり理解していないと、かえって逆効果になることもあります。本記事では、クレドの導入メリットや作成時の注意点、効果を発揮させるために必要なことなどを解説します。

クレドとは

そもそも「クレド」とは、どういったものを指すのかご存じでしょうか。クレドとは、ラテン語で信条を意味する「クレド(Credo)」に由来した言葉で、企業で社員が心がけるべき信条や行動指針のことを指します。

有名なところでは、ザ・リッツ・カールトンホテルのクレドがあります。このクレドは、「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することがもっとも大切な使命」とされています。創業当初付近から長年守られている、歴史あるクレドのひとつです。

クレドとよく似た言葉に、「企業理念」や「社是」などがありますが、これらとは少し違う意味合いになってきます。
企業理念や社是は、創業時に掲げられ、企業の目的や存在意義、社会的責任などを表しているものです。

一方クレドは、創業後に企業の改革やコンプライアンス経営を目的として掲げられ、従業員の判断基準になるものです。考え方としては行動指針に近く、企業が活動する上で具体的な考え方や価値観を従業員に浸透させるために、具体的な言葉で、業務や行動に落とし込みやすい文章であるのが特徴です。

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クレドが注目される背景

上述の通り、クレドは企業改革やコンプライアンス経営のために作られるものです。そんなクレドが企業で作られるようになった背景には、相次いだ企業の不祥事が影響しています。

2000年代以降、アメリカの企業が不祥事を発端に倒産し、企業におけるコンプライアンスの遵守が求められるようになりました。その流れを受け日本でも、2006年に金融商品取引法などをはじめとする内部統制の見直しが義務付けられました。このような企業不祥事への対策の一環として、社員の行動指針を定めるクレドが注目されるようになったのです。

クレド導入のメリット

クレドは、ただ社員の行動指針を明確化するために掲げられるものではありません。クレドの導入によって、企業にはさまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な4つのメリットを紹介します。

従業員の意識改革

クレドによって行動指針を明確化することで、従業員一人ひとりが適切かつ迅速に判断・行動できるようになります。そのため、これまで企業の決定に流されてきた従業員でも、自分の意思を持って働けるでしょう。

たとえば、従来では上司の指示を仰ぐ必要があるため、問題解決までに時間がかかることも少なくありませんでした。クレドがあれば、それをもとにして社員がトップ層と同じ考えで判断し、行動に移せます。このように、従業員の意識が変わり、従業員が主体的に行動できるようになることが、クレドのメリットのひとつです。

人材育成

どの企業においても、自ら考え行動できる主体的な人材を育成したいと考えるものです。しかし、会社の成長のためにはトップ層だけでなく、従業員全員が主体的な人材となる必要があります。

先述した通り、クレドがあれば、従業員が軸にして考えるべき事柄が明確になるため、主体的に行動する人材が増えます。また、クレドは普段から目にするものなので、研修などとは異なり、日常的に人材育成に役立てられます。

コンプライアンスの遵守

クレドはもともと、企業のコンプライアンス遵守のために導入されたものです。しかし中には、「クレドよりも、コンプライアンスに関するガイドラインを導入したほうが効果的ではないか」と考える方もいるかもしれません。

もちろんガイドラインの導入も、コンプライアンス順守のためには有効な手立てです。そこにクレドも併せて設定することで、従業員の自主的な意識改革を促すことができるでしょう。従業員一人ひとりの意識を高め、組織力も高め、コンプライアンスも強化できることがクレド導入の大きなメリットです。

従業員のモチベーションアップ

業務を行う中で、うまくいかずに落ち込むこともあるでしょう。そんなとき、クレドを読み返すことで行動指針を再認識し、気持ちを切り替えて仕事に臨めます。また、クレドをもとに行動することで主体性が生まれ、仕事のやらされている感がなくなります。その結果、社員のモチベーションアップが期待できます。

高いモチベーションを維持するためには、社員が常にクレドを見返せるよう、クレドカードを作成することが有効です。もちろん、ただ配布するだけでなく、朝礼での読み上げなども実施するとよいでしょう。これにより、組織としての一体感が生まれることにもつながります。

クレド導入時に注意すべきこと

クレドの導入は、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。その一方で、導入時にはいくつか注意すべきこともあります。ここでは、クレドの導入における注意点をご紹介します。

文言選び

クレドは企業理念などと異なり、実践的な文言が記載されるものです。そのため、あいまいな言葉を用いたり、到底実現できないような事柄を記載したりしては、クレド作成の意味がありません。現実的に実践に移せるものを記載するよう心がけましょう。当たり前ですが、企業が行っている活動内容とかけ離れた文言を記載するのもよくありません。

社員からの理解

従業員が自らクレドに沿った行動を取ってくれるよう、前もって導入の目的を必ず周知しておきましょう。会社の一方的な押し付けではなく、従業員が共感できるようにすることが大切です。さらに共感を得るために、クレド作成時には、社員アンケートを通して意見を募るのもおすすめです。自分の意見が反映されたものであれば、クレドを遵守しようという気持ちも高まります。

このように、クレドの導入時には「実践に移しやすい言葉選び」と「社員からの理解を得ること」が大切です。この2点を押さえたうえで導入を検討しましょう。

クレドの作成の手順

では、クレドは具体的にどのようにして作成するのでしょうか。ここでは、クレドの作成手順についてご説明します。

  1. クレド作成チームを作る
    まずは、クレドを作成するためのチームを編成しましょう。経営層や管理職だけでなく、一般の現場社員も含めた、さまざまなメンバーを集めるのがおすすめです。複数の目線をもとに、クレドを作成します。
  2. 経営者の意見を盛り込む
    クレドを作成するうえで、経営者の意見は欠かせません。経営者が企業を今後どのようにしていきたいと考えているのか、クレドに落とし込みましょう。ただし、クレドは実践的な内容にすることが大切であるため、経営者の意見をそのままには記載せず、現場の社員が理解できるまで分解します。
  3. 社員へのヒアリングを行う
    クレドには経営者の意見だけでなく、社員の意見も取り入れることが大切です。全社員向けにアンケート調査を行い、社員の意見を集めましょう。ただし、前触れもなくアンケートを始めたところで、思うように回答は集まりません。アンケートを出す前に、なぜクレドを作成するのか、その目的を伝えておきましょう。
  4. 文章化する
    経営者や社員からの意見が集まったら、その内容を参考に文章を作成します。文章は、社員が実務において参考にできるよう、抽象的な表現ではなく具体的な表現にしなければなりません。わかりやすくまとめるために、コピーライターへ依頼するのもひとつの手です。
  5. 配布する
    クレドが完成したら、クレドカードにして社員に配布しましょう。困ったときや朝礼時などで確認するのに便利です。また、カードとして手元に持たせることで、クレドの浸透を促せます。
クレド作りは、企業や社員がどうなるべきかを見直すよいきっかけにもなります。ぜひ積極的に取り組みましょう。

クレドの効果を発揮させるには

せっかくクレドを作成したのであれば、その効果を十分発揮したいところです。ここでは、クレドの効果を高めるための方法について詳しくご紹介します。

まず、クレドを作成してすぐに、全社員が参加する会議やミーティングでクレドの発表を行います。ただクレドを作成した旨を伝えるだけでなく、「どうして作成しようと思ったのか」「クレドをもとにどんな会社に成長していきたいのか」など、ストーリーを交えて伝えるようにしましょう。

次に、クレドを見ることを習慣化できるよう、工夫する必要があります。クレドカードを配布する、社内ポータルや社内報で定期的に発信する、社内のマグネットエリアに掲示するなど、従業員の目に触れる機会を作りましょう。クレドに日常的に触れる習慣が付くと、それをもとにして業務を行えるようになります。クレドを作って終わりではなく、実践的に使用できる仕組みまで考えることが大切です。

まとめ

クレドとは、企業における行動指針を示したものです。コンプライアンスの強化や主体的な人材育成を目指すうえで役立ちます。クレドを作成する際は、経営者の理念だけではなく、社員の意見も吸い上げましょう。社員が迷った際にクレドを見て、自分がとるべき行動を決められるような、実践的な内容にすることが大切です。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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