近年注目されるAI活用は人事評価の領域にも!メリット・デメリットは?

 2020.07.09  AJS株式会社

AI技術は既に私たちの生活になじみ深いものとなっていますが、人事評価の領域でもAIの活用が進んでいます。人の評価は人が行うべきであるという、いわば“聖域”でもあった人事分野でAIはどのように活用されているのでしょうか。今回の記事では人事評価の領域で活用されているAIの詳細と、メリット・デメリットを紹介します。

そもそもAIとは

AIという用語は「Artificial Intelligence」の頭文字をとったもので、日本語では「人工知能」の語があてられています。人工知能学会が1990年に著した設立趣意書では、人工知能について「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」と定義しています。つまり、大まかな意味としては、「大量のデータを分析することで物事を予測したり問題に対する解決方法を見つけたりするコンピュータ技術」のことです。

AIにもあらかじめ入力したルールに沿って問題を解くだけのシンプルなものから、専門知識を取り込んだ複雑なものまであります。現代のAIの大きな特徴は、コンピュータが大量のデータを取り込んで、必要な知識を自分から繰り返し学習する「機械学習」のしくみが取り入れられていることです。この機械学習の技術により、複雑な事柄に対してもAIが対応し予測できるようになりつつあります。

AIの人事への活用

最近では人材を扱う部署である人事部門でもAIの活用が進んでおり、採用活動や人事評価、勤怠管理など人事関連の業務全般を最先端のテクノロジーを利用して課題を解決するサービスが登場しています。このサービスは人材(Human Resource)とテクノロジーを組み合わせて「HRテック(HRTech)」と呼ばれています。HRテックはクラウドサービスの形で提供されるものが主流で、情報・通信分野の市場調査を専門とするミック経済研究所が公表した「HRTechクラウド市場の実態と展望 2019年度版」によると、2019年度のHRテックのクラウド市場は前年比136%の伸びを見せており成長途上にある分野といえます。
HRテックの運用例には採用活動の効率化などが挙げられるでしょう。書類選考の代わりに動画での選考を実施し、応募者の動画を分析して表情や話し方などを数値化して評価する製品も登場しています。ソフトバンクは2020年5月、AIベンチャー企業と共同開発したシステムを導入し新卒採用選考の動画面接の評価にAIを導入することを発表しました。ソフトバンクはこのシステムの導入で動画面接の選考作業に必要な時間を70%程度削減できるとしています。

AIを利用した人事評価関連システムの登場

AIの活用は採用活動だけではなく既存の従業員の人事評価の分野でも使われ始めています。これまでの人事評価では、評価対象者の勤怠状況や成果などのデータを、管理職が面談の内容と合わせて加味するのが標準的な手順でした。しかし、この方法では性別や年齢などによるステレオタイプや管理職の個人的な好き嫌いなどの要素が交じりやすく、必ずしも正確な評価が行われていない可能性があると指摘されてきました。

このような課題を解決する手段としてAIを活用した人事評価関連システムが導入され始めています。これらのシステムでは評価対象者のデータをAIが分析して、行動力や責任感などの項目について評価するような仕組みになっています。

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AIによる人事評価のメリットとは

では、人事評価にAIを活用するメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

公平性が高まる

人が人を評価する場合、無意識のうちに年齢や学歴、性別などによるバイアスがかかり、信頼性の高い結果が得られないことがしばしば起こります。一方、AIによる人事評価は、コンピュータが大量のデータと照合して行う分析作業であるため、個人の好悪の感情や思い込みによる偏りが入り込むことがなく、客観的かつ公正な評価が実現できる可能性があります。

効率が向上する

管理職個人のバイアスによる評価の偏りを排除する方法として、人事評価の専門家にアセスメントを依頼する方法もあります。しかし、専門家にインタビュー形式の評価を依頼した場合、評価対象者1人につき数十万円の費用がかかり、納期も1週間以上かかるのが普通です。
これに対して、AIによる人事評価なら処理スピードが極めて速いのが特徴です。採用活動においても企業と応募者の双方が作業を効率化できるため、採用機会の拡大につながる面もあります。

AIによる人事評価のデメリットとは

もちろん、AIによる人事評価にもデメリットはあります。代表的なデメリットは次のようなものです。

ブラックボックス化の問題

AIはデータとして現れる表情の動きや文章などを分析することで、評価対象者の心の動きを可視化して一定の結論を導くことができます。その一方で、AIが評価を下す根拠となる情報の中身や、どのような基準で情報を評価に反映させているかなどの仕組みは分かりにくくなっており、運用次第では「ブラックボックス化」してしまうという批判もあります。2020年4月には日本IBMの労働組合がAIを利用した人事評価と賃金決定をめぐり、AIの学習データやAIが提示する評価内容についての開示を求め、東京都労働委員会に救済を申し立てています。

法律への抵触可能性

人事評価では企業に裁量権があります。ただ、この裁量権は無制限に認められているのではなく、人事権の濫用と認められる場合には違法であると判断される可能性があります。人事評価にAIを活用すること自体は人事権の範囲内と考えられますが、評価対象者のデータや学習データに事実誤認があったり、AIが誤った分析をしたと認められた場合には人事権の濫用とみなされることも考えられます。
AIを利用した人事評価制度を導入する場合は、以上のことを念頭に置き、社内周知して社内して了解を得ておくことが望まれます。

まとめ

人事評価の領域でもAIを活用した「HRテック」の利用が進んでいます。AIの進歩により、課題となっていたバイアスの混入を取り払うことが可能になり、人事関連業務の適正化と効率化に大きく寄与しています。AIを活用した人事システムの仕組みとメリット・デメリットを十分に理解した上で業務の効率化につなげましょう。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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