人事評価と給与・昇給の関係性と気をつけたいポイント

 2020.10.15  AJS株式会社

人事評価は人員の配置や給与・昇給などの待遇を決める主要な判断材料です。しかし、人事評価制度を導入している企業でも、納得感のある評価を行い昇給に反映させることが果たして実現できているでしょうか。この記事では人事評価が給与や昇給の決定において果たす役割と、人事評価を給与などに反映させるときの注意点やポイントについて紹介します。

人事評価は給与・昇給決定において重要な役割を果たす

人事評価制度では、基本的に評価の内容に従って従業員の等級や適正な給与額を決定します。つまり、従業員にとって人事評価は給与額や昇給に直結する非常に重要なものでもあります。従業員のモチベーションが上がらなかったり、離職率が高かったりする大きな理由に人事評価が納得感のあるものになっていないことが影響している可能性があります。正しくなされていない人事評価は職場のトラブルや離職を招く原因になりますが、人事評価を適切に運用していくことに難しさや課題を感じる企業が多いのもまた事実です。

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人事評価制度の給与・昇給設定における課題

では、人事評価を給与や昇給額の決定、待遇などと連動させるときに問題となりやすい事柄について一つずつ解説していきます。

評価基準が曖昧である

人事評価の基準が明確になっていない場合や、評価基準の正当性が乏しい場合、業務でどれほど努力したとしても正当に評価されないのではないかという疑問や不満が従業員の間で生まれることになります。その結果、業務へのモチベーションが低下したり、最悪の場合は退職につながることもあります。

また、中小企業などでは、人事評価制度を整備する余裕がないために適切な評価が行われていないケースもしばしばみられます。社内のモチベーションの低下は業績の深刻な悪化にもつながりかねませんので早急な対策が必要であると考えられます。

評価エラーや、評価者間でのねじれ

評価基準が明確に設定されている場合でも、運用がうまくいっていないケースがあります。その原因として頻繁にみられるのが誤った評価を行ってしまう「評価エラー」と、評価者間で差異が発生する「ねじれ」です。

評価エラーとは、評価の対象となる従業員が生み出している真の価値と、評価者が実際に下した評価が大きく乖離しており、正当な評価が行われていない状態のことです。こういった評価エラーが発生してしまう原因はいくつかあります。よく知られている現象として、一人の対象者に特に優れていたり劣っていたりする項目があった場合に際立った部分に他の項目の評価が影響されてしまう「ハロー効果」や、直近の印象や成果に年次の評価全体が影響されてしまう「近似点考課エラー」などがあります。

人事評価フローの改善に役立つチェックシート
「人事評価制度見直し」決断する前にやること

ですから、事前にこのようなエラーが起こりうることを踏まえ、自分の判断や見解が偏っていないかどうかを振り返り、適切な評価になるように常に心がけておくことが大切です。

また、1次評価者、2次評価者など複数の担当者を置く場合に担当者間で整合性のない評価が付けられることがあります。これが「評価者間でのねじれ」です。

たとえば、直属の上司が1次評価を行い、そのさらに上の上司が2次評価行う際、2次評価が1次評価より極めて低い場合があります。この場合、評価対象者にとって直属上司より遠い存在であり接点が少ない役職者に低い評価を下されることが評価対象者の納得感を下げ、大きな不満となる結果を招くこともあります。

もちろん、評価を複数の担当者で行うこと自体には、多面的で重層的な評価を可能にしたり、別の担当者のエラーに気付きやすくなるといった利点があります。しかし、その場合でも単に評価に関わる人数を増やせばよいというものではなく、評価担当者それぞれの役割を明確にして、それらの情報を評価対象者とも共有して納得を得ながら運用していくのがポイントです。

人事評価制度の給与・昇給設定のポイント

ここでは人事評価を行って給与や昇給に反映するときに気をつけておきたい点について解説します。

業績や情報の透明化

まずは、事業や業績、経営の状況などについて各従業員と企業との間にある情報のギャップを可能な限り少なくして、情報の透明化に努めることが大切です。

個人レベルで自分自身の成果や業績について把握できている場合でも、部門や企業全体の業績が開示されていなければ、自分自身の業績を全体の利益の中で位置づけることは難しくなります。

企業全体の業績を数値の形でオープンにすることで、自分自身の業績の位置づけができるようになり、それらの情報をもとにすれば従業員個人が自分の業績が自身の待遇にどの程度反映されるかイメージすることが可能になります。

オープンにする具体的な項目としては、事業の売上高や売上総利益だけでなく、本業以外の収入も含めた経常利益も開示すれば、企業全体の生産性などを省みるきっかけになるかもしれません。いずれにせよ、会社全体や部門の業績などの情報がオープンにしておくことは、評価対象者が評価の理由について総合的に考えて納得に至るための重要な情報の一つであると言うことができます。

人事評価シートの評価項目を適切に設計する

明確な評価基準の設定にも関連する重要な事柄として、人事評価シート評価項目の設計は人事評価制度全体を成功に導く大きな鍵となります。設計次第では評価水準のばらつきが不適切な形で生じたり、評価内容が似かよって意味のない、有用性がないものになってしまう可能性もあります。評価項目に従ってなされる評価付けにより給与や待遇を決定することになりますので、しかるべき時間や手間を割いて入念に設計を行いましょう。

評価項目は一般的に「業績評価」「能力評価」「情意評価」の3種類の軸に分けて、業種や部門、役職などによって細かく設定していきます。評価の精度は項目設定が適切かどうかに左右されますので慎重さが必要です。状況によっては現場の意見を取り入れながら設定することで、より納得感が高いシートが仕上がる場合もあります。自社の状況に合わせながら適切に作業を進めましょう。

また、これらの項目は一度決定したら完了というわけではなく、ビジネスの状況や環境の変化に応じて最適なものになるように変化させていくことも重要です。特に、テクノロジーの急速な発展もあってビジネス環境が急速に変化している現代では、時代に取り残されて業績悪化を招くようなことが起きないように、人事評価制度も随時見直しを行いよりよいものに変えていくことも強く求められています。自社や業界全体はもちろん、外部環境の変化に応じて最適な人事評価制度となるよう、定期的な見直しを行うことも意識しておきましょう。

まとめ

給与や待遇を決定する材料となる人事評価では、評価の基準を明確にして、誰にとっても納得感を得られるような制度設計を行うことが必要です。人事評価制度の実際の運用では、客観的な事実に基づき明確な基準に照らし合わせて評価を行うことを心掛けて、各種の評価エラーの回避に務めましょう。必要に応じて業績など企業全体の情報も開示しながら、人事評価と待遇を公正な形で連動させることが大切です。

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