人事評価が納得いかないと言われたら? 不満の理由と対処法について紹介

 2020.11.20  AJS株式会社

人事評価に納得いかない」と部下から申し出を受けたり、人事担当者として「評価について不服がある」と相談を受けることがあります。この記事では人事評価で社員から不満が出てしまう原因や、見直しを行う場合に気を付けるべきポイントなどについて解説していきます。

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人事評価に納得いかない!社員が抱える不満とは

人事評価の結果に納得がいかないと訴える社員が抱えている不満の原因はどういったところにあるのでしょうか。まず、人事評価で不満が出やすいポイントや注意しておきたい点について解説します。

人事評価制度が抱える課題

人事評価で不満が出やすいケースとしては、評価の基準が不明確で曖昧な場合や、評価者によって判断基準にぶれがあり、公平感が失われている場合などが挙げられます。

ほかにも、部署を異動になり、それまでの業務内容と異なる任務を任されて不慣れであったり、苦手な分野に配属されたりしたことで成果を発揮できず低い評価をつけられたと受け取った場合や、相対的な評価で低評価を与えられたケースなどが考えられるでしょう。

実際に、人事関連サービス会社のアデコが働く人1532人を対象に行った「人事評価に関する意識調査」では、「勤務先の人事評価に満足している」と回答した人は37.7%にとどまる一方、「不満」と答えた人は62.3%に上っています。

また、評価制度に不満を感じる理由として「評価基準が不明確」が62.8%、「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」が45.2%となっており、評価基準の曖昧さや評価者間の差異が原因で不公平感や不満が生じていることが分かります。

また、勤務先の評価制度を見直すべきと考えている人が約8割近くに上ることからも、現在行われている評価制度に不満を持つ社員が多くいることが見て取れます。

制度が社会の変化に追いついていない

評価制度に不満を抱いている社員が多数を占めている理由の一つに、社内の制度が社会の変化に追いついていないという点も見逃せません。

一連の働き方改革関連法案の施行などで雇用状況や労働環境が変化しつつある中で、社内制度が社会の変化に追いついていない場合も、評価に対して不満が出やすい環境になっているといえます。

日本生産性本部が2019年に実施した「第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査」によると、賃金体系に年功序列制度を導入している企業自体は47.1%まで減少してはいるものの、まだまだ旧来の年功序列制度をそのまま運用しているところも多く、業績を上げていても年齢が若いという理由で昇進しなかったり昇給が不十分であったりすると、努力や業績が評価されていないと感じて不満を抱くきっかけにもなります。

年功序列制は、個人の勤務年数に応じて業績に関係なく給与が支払われる仕組みです。高度経済成長期以降の日本では長らく年功序列制にのっとった運用が行われてきました。しかし、経済が成熟期を迎えると、年功序列制が機能不全に陥ることが発生するようになりました。例えば、年数が長い従業員に相応の役職を用意することが難しくなる、人件費が企業経営を圧迫するようになる、といった問題は、年功序列制での解決が困難です。そのため、年功序列制に代わって成果主義を取り入れる企業も増えています。

年功序列制と成果主義制のどちらで運用するのが好ましいかは、企業の経営状況にもよるため一概にはいえませんが、社員の年齢構成が特定の世代に偏っている場合には不公平感の元となりやすく注意が必要です。

「人事評価制度見直し」決断する前にやること
人事評価フローの改善に役立つチェックシート

他にも、リモートワーク(テレワーク)を導入した場合には、以前と同じ基準で評価を行うことは難しくなります。これら社会状況の変化に企業の制度や運用が追いついていないという問題もあるのです。

気をつけたい不服申し立て

終身雇用が以前ほど当たり前ではなくなり、転職も珍しくなくなった現代では、上司の評価を無条件に受け入れ続けるという風潮も変化しつつあります。

ですから、納得できない評価については上司や人事に不服申し立てを行うというケースも見られるようになっています。問題がこじれた場合には、当事者間の話し合いにとどまらず、訴訟に発展することもあります。

また、SNSなどでインターネット上に気軽に情報を公開できる時代であることを考えると、穏便に解決できたはずの問題が大事に発展してしまう可能性もあるため、慎重な対応が求められます。人事評価に関する不満や感情のもつれを発端に、企業イメージが悪くなるような情報がひとたび発信されてしまうと、今後の経営に少なからぬダメージを与える場合もありますので、不服申し立てには真摯に向き合う必要があります。

人事評価を見直すポイント

それぞれの会社の経営理念や目標などに基づいて人事評価制度も定められているため、すべての場合に適応できるただ一つの正解というものはありません。ただし、多くの企業に共通するポイントはあります。ここではそのポイントを紹介していきます。

人事評価の目的を明確にする

一口に人事評価といっても、実施する目的は会社によって異なります。自社がどのような目的で人事評価を行うのか改めて目的を確認してから評価制度を構築することが求められます。

たとえば、社員を適切な部署に配置することを主な目的として評価を行うのであれば、社員のスキルをより適切に見いだせるように評価項目の見直しをするなどの方法がありますし、モチベーションの上昇が目的の場合はフィードバックの手法や内容に重点を置いて見直す方法が考えられます。

スケジュールや手法、制度について

人事評価の手法や実施のスケジュールが、個々の従業員のスキルアップや業績改善につなげられているかどうかも重要な見直しのポイントです。

たとえば、日次の業務内容を逐次設定する手法や、月次の業務目標と課題を設定して、その達成度を評価するなどの手法があるでしょう。日次や月次、数カ月に1回など評価の実施タイミングや、それぞれのタイミングで実施する評価内容をあらかじめ決めておくことが大切です。そして、スケジュールが継続的に運用できるものであるかどうかを見直し、実施が難しい場合は解決策を考えるなど、工夫して活用していくことが求められます。

もちろん、一度設定した後も、環境の変化などに合わせて評価の手法や制度を見直すことも大切です。

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新しい手法を取り入れるのも一つの方法

今までの評価手法に加え、新しい手法を取り入れると効果的な場合があります。ここでは人事評価の手法として注目を集めている方法を紹介します。自社で活用できそうな方法があればまずは部分的にでも取り入れてみるとよいかもしれません。

360度評価

米国で人材育成を目的として生まれた評価方法で、1980年頃から日本でも大手企業を中心に実施されることが増えてきています。多面評価とも呼ばれるこの方法では、上司からの評価だけでなく、同僚や部下などいろいろなポジションにある複数の人物が評価を実施する点が特徴で、主に中堅社員以上が対象となります。

複数人からの評価を受けることで、一面的な評価になる可能性を下げたり、あらゆる方向から評価されることで評価結果に納得感が生まれたり、異なる人の視点から評価されることでそれまでは明らかになっていなかった強みや弱みを見いだす可能性があることなどがメリットとして挙げられます。

一方で、より高い評価を得るために社員同士が加減してよい評価をつけ合ったり、逆に悪意によって意図的に低評価を行ったりする事態が発生する可能性があります。また、評価ルールに対する認識の差で着眼ポイントが異なり、本来の目的からずれたフィードバックが行われて評価対象者のモチベーションを下げてしまう結果になることもあります。

360度評価を成功させるためには、実施の目的やガイドライン、評価スケジュールなど細かい実施要項を整備しておくことが求められます。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、コンピテンシー(業務遂行能力)が高い社員をモデルとして定めて、その人物の行動特性に基づいた評価項目に沿って評価を行う方法です。個々の従業員はその人物の業績に近づくために、設定された行動目標を目指し、上司や同僚からの評価を受けながら行動改善を目指すことになります。

この方法では成功法則を社内的に共有しやすく、目指す行動規範が明確になる、社員個人の業績や成果に繋がりやすいなど、社員教育や能力開発にも活用できる点がメリットです。

一方、市場の変化などに従って常に項目内容の見直しが必要となり、そのコストが必要になるなどのデメリットもあります。

いずれにしても、コンピテンシー評価が機能するためには、業務実態に即して評価モデルを定期的に見直すことが必須となります。

ノーレイティング評価

ノーレイティング評価とは、過去の業績に対して記号や数値などで事後にランク付けを行うのではなく、リアルタイムで目標を設定し、その都度評価を行って未来に向けた成長を意識してフィードバックを行う手法です。従来の人事評価制度の行き詰まりや環境の変化などを背景に2010年代に入り米国で導入され始めたとされています。この手法では社員の評価と育成を兼ねて上司との一対一の面談が行われます。

ノーレイティング評価方式では、細かい評価項目がないため、環境の変化にも対応しやすい点や、上司と部下のコミュニケーションが積極的に図れる点などが魅力です。しかし、評価方法や評価シートが定まっていないため、評価者のマネジメント能力が問われるほか、面談時間の確保やコミュニケーション能力などの人的資質が必要となり、評価者の負担が重くなる点がデメリットとなります。

まとめ

社員が人事評価に不満を抱く背景には、人事評価制度自体が抱えている課題も密接に関係しています。評価の対象者と評価者の双方にとって納得のいく評価を行うためにも、制度運用のポイントを見直したり、360度評価など新しい評価手法を取り入れてみたりするのもよいでしょう。

株式会社サクセスボード 萱野 聡<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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