人事評価と人事考課の違いとは?

 2020.11.09  AJS株式会社

「人事考課」と「人事評価」は混在して使われていますが、違いについて考えたことはあるでしょうか。この記事ではそれぞれの定義と使われ方について紹介します。あわせて、人事考課の目的や効率よく運用するためのポイントについても解説します。

「人事評価」と「人事考課」、言葉の違い

多くの企業が人事考課と人事評価を同じ意味として用いていますが、結論から言うとそれは間違いではありません。まずは2つの言葉の定義について解説します。

「人事考課」の定義

人事考課という語句の定義は、「従業員個々の能力や勤務成績を判定すること。給与査定や人事決定の資料となる」とされています。
(参考:『広辞苑(第6版)』(2008)岩波書店 P10200)」

人事考課は、主に昇級や昇進などの等級制度や給与などの判断材料として使用されています。

「人事評価」の定義

人事評価とは、メンバーの成果を基準として、成果の良し悪しを判断することです。一般的な企業では、給与へ反映する意味合いよりも、能力開発や人事異動などの判断材料として用いられるケースが多いようです。

「人事評価」の方が「人事考課」よりも概念が広く、人事考課を包含していると考えてよいでしょう。

特に「人事考課」は重要

働き方の質や生産性が重視される現在、成果を適切に評価する「人事考課」は日々アップデートされています。企業が人事考課を制度として運用するのにはどんな目的があるのでしょうか。目的の一例としては以下のことが挙げられます。

  1. 数値目標、評価基準を共有し、会社や上長が何を期待しているのかメンバーに理解させる
  2. 定められた基準に則って評価し、メンバーのモチベーションをアップさせる
  3. メンバーの能力を客観的に把握し、適材適所を図る

上記を適切に運用すれば、メンバーの目的や意識を可視化し、職務の課題解決や離職防止、コスト削減などにつなげられます。

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人事考課の3つの対象項目

人事考課を適切に運用するには、メンバーの条件に合わせた項目の設定が必要です。人事考課には「業績考課」「能力考課」「情意考課」の3つがあり、メンバーの役職や職務内容により考課に採用される比率が異なります。続いてはそれぞれの評価基準について詳しく解説します。

業績(成果)考課

数値化した売上目標、経費削減目標に対する達成率を評価します。前年比や社会情勢を加味しつつ、あくまで結果に重点を置いた内容です。目標までのプロセスは別のカテゴリになります。「パフォーマンスマネジメント」などプロセスを重視した手法を取り入れるとよいでしょう。

『月刊人事マネジメント』事例掲載
「人事評価制度見直し」決断する前にやること

パフォーマンスマネジメントとは、上長とメンバーの面談回数を増やし、フィードバックを継続的に行うことでスキルアップやモチベーションを促進させる方法です。企業によっては、業績(成果)考課からコーチングに比重を置いた考課制度に移行しているケースもみられます。

能力考課

等級ごとに定めてある職能要件を基準にして、スキルや知識を評価します。共通項目としてマネジメント能力や職務知識、営業職であれば折衝力、判断力、企画職なら企画立案力、企画推進力、技術職なら職務知識や、熟練技能レベルなど職種によって項目が異なります。

業績(成果)考課が目標数値に対する到達率なのに対し、能力考課は職務や自宅学習などで身に付いた能力を評価します。また、難易度の高い職務の遂行・達成、緊急時の対応やその結果なども評価の対象に含まれます。

情意(行動)考課

仕事への取り組みを評価するのが情意(行動)考課で、主な項目は規律性、積極性、協調性、マナー、責任性などです。3段階、5段階などで良し悪しを判断し、先にメンバーが自己評価をします。その結果を元に上長が評価する流れが一般的です。メンバーの仕事に対するモチベーションは、勤務態度や勤怠に現れます。

評価・査定で気を付けたいポイント

人事考課は考課結果のフィードバックと来期の目標設定に加え、今後改善すべき点などを共有する貴重な育成の場です。

メンバーの自己評価と考課結果に隔たりがある場合、なぜそのような結果になったのか、根拠をきちんと話せるようしっかりと準備しておきましょう。上長は目標と実績の差異から課題を見つけ、具体的な道筋を提示します。

考課面談時に社員のモチベーションをアップできるよう、次の3つのポイントに気をつけてみてください。

ポイント1 :  被評価者がリラックスできる環境作りを

上長は「拡大質問」「肯定質問」「相槌」の3つを意識して面談にのぞみます。拡大質問とは、AとBのどちらか?というような限定的な質問ではなく「どのようにしていけばいいと思うか?(How)」「なぜそう思ったのか?(Why)」など選択肢に縛られない質問方法です。5W1Hに変換しながら進めていくと、詰まらずスムーズに質問ができます。

肯定質問とは、メンバーから前向きで創造的な解決策や改善点を導き出す質問方法です。目標が未達だった場合、「どうして失敗したのか?」と、否定に焦点を当てるとメンバーの思考は「言い訳、言い逃れ」に向かってしまいます。

あまり否定的な言葉を含まず「どうしたらうまくいくのか?」といった質問の仕方にするのがポイントです。相槌はメンバーが言葉を発するのを助けます。人事考課はメンバーの自己評価をヒアリングするのが優先なので、話しやすい空間をつくるのも大事です。

ポイント2 :  明確な評価基準を設定

評価には「相対評価」と「絶対評価」の2つがあります。相対評価は「集団内において、どの位置にいるかによって個々の能力を評価」であるのに対し、絶対評価は「個人が定めた目標の達成度など、あらかじめ決められた評価基準に基づいた評価」です。例えば、経済状況が上向きな中で、営業成績の考課結果が5段階のうちの最高ランクSになる社員が多発した場合、絶対評価なら全員がSランクになりますが、相対評価であれば順位や条件によりランクが変動します。

相対評価は企業、上長にとって判断しやすい方法ですが、メンバーにとってはどうしても理解しにくい面が出てきてしまいます。どちらにも一長一短はありますが、昨今の人事考課において、絶対評価を重視するのが主流です。理由はその透明性にあり、人事考課不可欠な要素です。メンバーが「正当な事実や理由に基づき評価されている」と認識してから人事考課制度が機能します。

ポイント3 : バイアスに注意

社会心理学に「ハロー考課」という専門用語があります。聖人の頭上にある光の環を指し、認知バイアス(偏り)のひとつで「ハローエラー」とも呼ばれます。ある対象を評価する際、目立つ特徴に引っ張られるように、他の特徴までゆがめられる現象です。ポジティブ、ネガティブの2通りがあります。

ポジティブハロー効果の代表的な例として、

  • 高価な装飾品を身に付けている→裕福な人だと思う
  • 過去に留学経験があり語学力がある→仕事ができる人だと思う
  • 有名大学を卒業している→人格が優れている人だと思う

といった事柄が挙げられます。

ネガティブハロー効果の代表的な例として、

  • 言葉遣いが洗練されていない→素行の悪い人だと思う
  • 衣類に清潔感が足りない→信用できない人だと思う
  • 太っている→自己管理できない人だと思う

といった事柄が挙げられます。

企業によっては、研修やトレーニングでハロー効果を防ぐ対策をとっています。先入観や思い込みを排除するため、日ごろからメモを残すなどして事実を積み重ねていきます。日々の訓練により、何度考課しても同じ結果が得られる「恒常性」と誰が考課しても同じ結果が得られる「客観性」が養われるのです。

まとめ

人は自分の働きが公平な評価で認められると、期待に応えようと努力します。人事考課は給与を決めるためのものではなく、人材育成やモチベーションアップのためのツールでもあります。

考課面談は、メンバーが上長に期待されている、自分を認めて育てようとしてくれていると認識できる重要なシーンです。目的を理解した上で人事考課を運用すれば、結果的に企業の利益拡大につながるでしょう。

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