モラルハラスメントとは?職場において企業・人事が取り組むべき4つの対策

 2021.11.03  AJS株式会社

本記事では、モラルハラスメントの概要と、職場で起こりやすいハラスメント行為の事例、モラルハラスメントが起こる理由について解説しています。また、モラルハラスメント対策の必要性や、実際に企業や人事部が取り組むべき対策を「相談窓口の設置」「被害者へのケア・カウンセリング」「当事者への措置」「周知・教育の実施」4つの項目に分けて紹介します。

モラルハラスメントとは

「モラルハラスメント(モラハラ)」は、モラル(道徳)に反するハラスメント(いやがらせ)行為により、相手に精神的な危害を加えることです。性的な言葉や行動による「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」や、上司や先輩など力関係が上の人間が行う「パワーハラスメント(パワハラ)」とは違い、上下関係や言動の方向性に定義はありません。

同僚や部下から行われることもあれば、性的なことに関する言動だけでなく、相手を傷つけたり、嫌な思いをさせたりする言動は、すべてモラルハラスメントの範疇です。

モラルハラスメントは、当事者が無自覚のままハラスメント行為に及んでいる場合も多くあります。そのため、いやがらせの実態が表面化しにくく、被害者が長期間に渡り苦しむケースが多いと言われています。

モラルハラスメントは、これまで主に家庭内や夫婦間で行われるハラスメント行為として認識されてきました。しかし、最近では、職場内でも起きる事案であると認識されるようになっています。職場内で起こるモラルハラスメントには「業務に必要な情報を教えない」「仕事を与えない」「会議に参加させない」など、コミュニケーションを断ち切るものが多く、被害者は強い精神的苦痛を感じます。そのような状態が長く続けば、最悪退職してしまうケースもあるため、企業にとって見過ごせない問題となっているのです。

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職場のモラルハラスメントの例

では、具体的にどのような言動が職場のモラルハラスメントにあたるのでしょうか。職場のモラルハラスメントの例を「言葉によるもの」「態度によるもの」2つの項目にまとめたので、見ていきましょう。

言葉によるもの

言葉によるモラルハラスメントの場合、「仕事上の注意(叱責)をしただけ」「事実を指摘しただけ」など、特に加害者にハラスメントをしている意識がないことが多いようです。以下は具体例です。

  • 本人に聞こえるように悪口を言う
  • 仕事のミスを他の社員の前でわざと指摘する
  • 仕事が遅れると「使えない」など暴言を吐く
  • 外見や身体的特徴をからかわれる
  • 「頭が悪い」「ダメなやつ」などの言葉で人格を否定する
  • プライベートな情報を暴露する

態度によるもの

言葉や態度で相手を追い詰める行動は、さまざまです。特に女性では、露骨な無視、お土産や差し入れのお菓子を特定の人にだけ渡さない「お菓子外し」がモラルハラスメントの例としてよく挙がります。

男性の場合は、仕事のミスへの過剰な叱責や、暴言が多く見られます。また、自分がいやがらせの標的にならないために、見て見ぬふりをしたり、モラルハラスメント当事者に同調したり、知らず知らずのうちにモラルハラスメントに加担しているケースも見られます。以下は具体例です。

  • 業務に必要な情報を教えない
  • 仕事を与えないまたは、押しつける
  • 会議に参加させない
  • 親睦会などに誘わず仲間外れにする
  • 社員全員に配る物をわざと渡さない
  • 挨拶や返事をしないなど無視をする

職場のモラルハラスメントが起こる理由・原因

モラハラは男女の性差に関わらず様々な状況で起こりますが、モラルハラスメントをしやすい人には「自己中心的」「勝ち負けにこだわる」「プライドが高い」「嫉妬深い」「ストレスを抱えている」「古い価値観を持っている」などの特徴があります。自己中心的な人は、他者の気持ちを推し量るのが苦手なため、無自覚のままに言葉で相手を傷つけているかもしれません。

勝ち負けにこだわる、プライドが高い人などは、自分より業績のいい同僚に嫉妬したり、不満を抱えたりして、それがモラルハラスメントの引き金になることもあります。また、日常のストレスを自分より立場の弱い者にぶつけたり、古い価値観で上司の言うことは、絶対と思い込んでいたりする人もいます。

さらに、職場の環境によってモラルハラスメントが起こりやすくなっている場合もあります。例えば「仕事がキャパオーバーしている」「ノルマの設定が適切でない」など、常に社員が追い込まれ、職場内がピリピリしている状態です。過度なプレッシャーやストレスは、職場の環境を悪化させ、モラルハラスメントを発生させる要因となります。

職場のモラルハラスメントに対策する必要性

モラルハラスメントの被害は、直接被害を受けた人だけでなく、まわりで働く従業員や企業にまで及びます。まず、直接被害を受けている人は、連日続くいやがらせ行為により、モチベーションが低下し、仕事に支障をきたす可能性があります。また、モラルハラスメントがエスカレートすれば、うつ病や心身症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、さまざまな病気にかかる恐れもあるでしょう。仮に被害を受けていた人がうつ病になった場合、そのまま退職してしまうことも考えられます。

さらに、モラルハラスメントが起きる職場は、直接被害を受けていない従業員にも悪影響を及ぼします。日常的に誰かがいじめられる光景を目にすることで、モチベーションの低下や「次は自分がやられるかもしれない」という不安を抱えながら仕事をしなければならないからです。

このような問題を放置しておくことは、企業イメージの低下に繋がると共に「安全配慮義務違反(※)」で訴えられる可能性もあるため、問題解決に向けて早期に取り組む必要があります。

※労働者が安心して働ける環境の提供に配慮する義務

企業・人事が取り組むべき4つのモラルハラスメント対策

モラルハラスメントは、直接被害を受けた人だけでなく、そこで働く従業員や、企業全体にとっても悪影響を及ぼします。そのため、人事部や企業をあげてモラルハラスメントへの対策を講じることが重要です。最後に、企業や人事部が取り組むべき4つのモラルハラスメント対策を紹介します。

相談窓口の設置

1つ目の対策は、相談窓口の設置です。相談窓口では、モラルハラスメントに限らず、セクハラ・パワハラ・人間関係・体調の悩みなど、従業員が抱えている問題に幅広く対応できるようにしておきましょう。

ハラスメント事案に特化した窓口の場合、いやがらせを受けている従業員が「相談しに行く姿を見られるのが怖い」と、感じてしまう可能性もあります。まずは、悩みを抱える従業員が、気軽に相談しやすい雰囲気づくりを心がけるのが大切です。

また、職場内の悩みは、非常にデリケートな問題のため、相談窓口には、衛生管理者(※)や産業医、企業内カウンセラーなど、専門知識を持った人材を配置するのが望ましいでしょう。さらに、相談員に対しては、プライバシー保護の研修を定期的に行い、相談者の情報や、相談内容が社内に漏洩しないよう徹底する必要があります。

※就労環境の管理や、労働者の健康保持に配慮する者

被害者へのケア・カウンセリング

上記で設置した相談窓口に従業員からモラルハラスメントの相談が寄せられた際には、まずはその従業員の心のケアを第一に考えて行動してください。専門知識を持つ相談員がカウンセリングを行い、被害者の状況に応じた必要なケアを考えるのが重要です。また、場合によっては、医療機関との連携が必要になるケースもあります。

被害者がすでに病院などを受診し、診断書が出ている場合は、安全配慮義務の観点から、速やかに休暇の手続きを取りましょう。その際に注意しなければならないのが、モラルハラスメントの行為者をすぐに呼び出さないということです。

被害者のなかには、加害者に直接話をしてほしくないという人もいます。また、被害を訴える従業員の話だけを鵜呑みにして、相手のことを一方的にモラルハラスメントの加害者と決めつけて話をするのも危険です。被害者に対するハラスメントが、さらにエスカレートする可能性もあります。

そのため、まずは被害を訴える従業員から話を聞き、双方の従業員と関係のある同僚や上司などからも普段の様子を聞き出しましょう。そして、モラルハラスメント行為が確認できた場合は、行為者を呼び出し、事実確認を行います。

加害者への措置

実際にモラルハラスメントが確認され、加害者と認定される従業員が出た場合には、然るべき措置を取る必要があります。まずは、加害者に口頭で注意し、反省や考え方の改善を促してください。加害者が反省し、被害者も何らかの処分を求めない場合は、一定期間の自宅待機や出勤停止、配置換えなどを行い、環境改善を試みるのもいいでしょう。

一方、モラルハラスメントの内容が悪質なものや、今後の改善が望めないものに対しては、懲戒処分など、厳しい措置を取るのが妥当です。その場合、処分を不服として加害者側から訴えを起こされないために、就業規則や社内規程にあらかじめモラルハラスメントへの罰則を明記しておきましょう。罰則を明記することで、ハラスメント行為に対する抑止にも繋がります。

周知・教育の実施

すでに起こってしまった問題のケアと同じくらい重要なのが、モラルハラスメントを予防するための対策です。それには、まずモラルハラスメントがどのようなものなのか、どのような場面で起こりやすいのか、ということを従業員に知ってもらう必要があります。

先述したように、モラルハラスメントは、無自覚でハラスメント行為をしている加害者が多いのが特徴です。また、被害者側もハラスメント行為が悪意のあるものなのか確信が持てずに長期間苦しむケースが多くあります。そのため、社内でモラルハラスメントについての研修を行い、実際の事例を挙げ、自分は、モラルハラスメントの加害者または、被害者になっていないか、自分のまわりに同じような状況の人がいないかなど、考えてもらう機会をつくりましょう。

さらに、社内報にモラルハラスメントに対する罰則を明記し、ただのいじめや、いやがらせでは済まないのだということを強く発信することが大切です。「モラルハラスメントは、犯罪である」「モラルハラスメントは、訴訟問題に繋がる」など、企業側がモラルハラスメントに対して厳しい態度を示すことが、ハラスメント行為への抑止力となります。

まとめ

モラルハラスメントは、外から見えにくい分、被害者の苦痛が長引きやすくなる厄介なものです。また、直接被害を受けた人だけでなく、まわりの従業員や企業全体に悪影響を及ぼすため、モラルハラスメントが発生した場合は、早期の解決が求められます。モラルハラスメントをなくすためには、相談窓口の設置や、カウンセラーの配置と共に、加害者への厳しい罰則も必要です。これらの対策を基に、大切な従業員が安心して働ける環境づくりを目指しましょう。

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